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2109.感謝と再起

「ソフィ! お前、やっと姿を見せやがって……!」


『おやじ』は開口一番にそう言って、満面の笑みを浮かべながらソフィに近づいてくるのだった。


 六阿狐とブラストが止めようと前に出ようとするが、それをソフィが右手で制止する。


「すまぬな、我はヴェルマー大陸より更に遠い場所に向かっていて、先日ようやく戻ってこれたところだったのだ」


「そうかぁ……! お前さんは俺なんかには想像もつかないような事を次々とやり遂げる超大物だからな。今回も色々と大変な事情に巻き込まれていたんだろう? よく無事に戻ってきたぞ!」


 『おやじ』は誰の目にも分かる程に嬉しそうな表情をしながらソフィの頭を撫でて、我が子の無事を喜ぶかのようにそう告げるのだった。


「クックック! 我も旅先で常に『レグランの実』が食べたいと思ってな、そこで我慢が出来ずに『おやじ』に会おうと決意してここ『グラン』の町に戻ってきたのだが、露店市場に『おやじ』の姿がどこにもなかったから心配したのだぞ。市場でニーアと会わなければ、そのまま別の露店で『レグランの実』を買って帰ってしまうところであった」


 ソフィがそう告げると『おやじ』は、ニーアの方に視線を送るのだった。


「そうか、お前さんがソフィにここに居る事を伝えてくれたというわけか。ニーア殿、ソフィを連れてきて感謝するよ」


 そう言って『おやじ』は、ニーアに深々と頭を下げるのだった。


「い、いえいえ! 本当に偶然に会えただけでしたので……! そ、それにしても本当に()()()()()()()はソフィ君と仲が良いですね。まるで親子に見えますよ、は、はははっ……!」


 出来たばかりの商会とはいっても、その商会長の『カーネリー』に深々と頭を下げられながら感謝の言葉を告げられたニーアは、早く頭を上げさせようとそんな事を口にするのだった。


「そうか、アンタにはそんな風に見えるか……」


 実際には『おやじ』とは比較にもならない程にソフィの方が長く生きてはいるのだが、今のソフィは十歳頃の子供の姿にしか見えず、ソフィを可愛がるその姿は、傍から見れば確かに父親に見えてもおかしくはなかった。


「まぁ俺も実際ソフィの事を自分の子供のように思っているところがあるんだけどな。でもコイツはさっきも言ったがとんでもねぇ超大物で、何かしてやりたいと思っていても、結局何一つしてやれることがなくてなぁ……。だがよ……!」


 ソフィを撫でながらしみじみと語っていた『おやじ』は、突然に何かを思い出したかのように声を上げ始める。


「昔から俺が出来る事と言えば商売だけだ! 別に大した事が出来るとは考えちゃいねぇが、ソフィが望むものをいつでも取り揃えられるような商会を作り、陰ながらソフィの助けになりたいと考えたんだ! ま、まぁ……その商会を作るのに必要な資金も含めて自分一人で出来たってわけじゃないが、これからしっかりと地盤を固めていけばいい! 大事な事は受けた恩をしっかりと返していこうという気持ちの筈だ!」


 熱く語る『おやじ』の目がこれまで露店で商売をしていた時よりも真剣なモノになっていて、まさに決意に溢れているように感じられた。


「では……『おやじ』は()()()に商会を立ち上げたという事なのか?」


「まぁ、そういう事だ。もちろんまたいつかはと再起自体は考えていたんだがな、お前さんのおかげで思っていた以上に若い内に再起を図れたというわけだ」


 もちろんソフィは『ラルグ』魔国のビレッジを通して『ミールガルド』大陸の商人ギルドにも繋がりを作ろうと思えばいつでも作れる状況にあるが、それでも自由気ままに頼めるというわけでもなく、こうして個人的にやり取りが行える商会が身近に出来るというのであれば、とても嬉しい事でもあった。


 何より『おやじ』が自分の為だけではなく、ソフィの応援をしたいから商会を作ってくれたのだと口にしてくれたのを聞いて、その気持ちに心を動かされるソフィであった。

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