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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
第二の故郷の世界編

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2108.露店のおやじの過去

 ブラストが自分と同じようにソフィを守ろうと戦闘態勢に入ったのを見ていると、そこに先程屋敷の敷地内から出てきた二十歳前後に見える若い男たちが、ソフィ達に向けて口を開くのだった。


「し、失礼を承知でお尋ね致しますが、ニーア様の隣にいらっしゃるのは、()()()のソフィ様ではございませんか!?」


 身なりの良い服を着ているその男達は、本当に敵意などは一切持ち合わせていない様子で、じっとソフィの方を見つめて返事を待つのだった。


「うむ、その通りだが……」


「「やはり、そうでしたかっ!」」


 男達はソフィの返事に嬉しそうな表情を浮かべ始めるのだった。


「ソフィ様! も、もしこの後にお時間がございましたら、是非旦那様に会って頂けないでしょうか!」


「お主らの言う旦那様とは、露店の『おやじ』の事であろうか?」


「えっ!? ()()()()……?」


「い、いえ……、我々が会って頂きたいのは、我が『()()()()()()()』の商会長の『()()()()()』様なのですが……」


 ソフィは男たちが口にした聞きなれない名前に首を傾げたが、そのままニーアの方を見ると彼がソフィに頷きを見せた為に、どうやら『カーネリー』という名の商会長が、露店の『おやじ』で間違いないのだろうと判断するのだった。


「ふむ、実は元々この屋敷の主に我達は会いに来たのだ。お主らが良いのであれば、是非この屋敷の主に会わせて欲しい」


「そ、そうでございましたかっ! 直ぐに旦那様をお呼びしてきますので! ささ、ひとまずは中へ!」


「お連れの方々も、どうぞこちらへ!」


 男たちはソフィだけではなく、ブラストや六阿狐達の事も丁重に中に案内しようとする。


 ソフィがブラストや六阿狐を一瞥すると、二人も直ぐに警戒を解きながら手を下ろしてソフィに頷くのだった。


 …………


 ソフィ達は話し掛けてきた男たちに案内されて屋敷の中へ足を踏み入れると、直ぐに広い部屋へと通されるのだった。


「直ぐに旦那様をお呼び致しますので、もうしばらくこちらでお待ち下さい」


「うむ、分かった」


 ソフィが使用人らしき男たちに頷くと、直ぐに男の一人が部屋を出ていくのだった。


 残ったもう一人の男は椅子に座るでもなく、自分の主が来るのを立って待つ様子であった為、ソフィは気になっている事をその男に口にするのだった。


「少しお主達に訊ねたい事があるのだが、聞いても構わぬだろうか?」


「はい、私で良ければなんなりと!」


 ソフィに訊ねられた青年は、そう言って笑顔で頷くのだった。


「お主らは『おやじ』の……すまぬな、我はいつもあやつの事を『()()()』と呼んでいた為に本名は知らぬのだが……」


「成程、先程ソフィ様が旦那様の事を『露店のおやじ』と呼ばれていたのは、そういう理由があったのですね。旦那様の名前は『()()()()()()()()()()()』様で、商会名も『()()()()()()()』で始められました」


「ふむ……。おやじの名は『()()()()()』と言うのか」


 いつも露店でソフィにレグランの実を売ってくれていた『おやじ』の本名を知り、感慨深そうに数回おやじの名を呟くソフィであった。


 そして何度目かの呟きの後、自分を見続けている青年に気づいたソフィは軽く咳払いを行った後に、再び口を開き始める。


「……話を戻すが、お主らは『おやじ』が雇った使用人なのだろうか?」


 この屋敷で目の前の青年たちを見た時から、どうにもただの使用人にしては身なりも良く、それこそレルバノンの配下である『ビレッジ』が変装をしていた時の豪商人のような恰好をしているところからも、ソフィは目の前の青年たちが、単なる使用人には思えなかったのである。


「ああ……。話せば長くなるのですが、実は私と先程旦那様を呼びに行った者は、親から旦那様の元に徒弟にして頂く為に預けられたのです」


「徒弟……? あの露店の『おやじ』のか……?」


「はい。私共の親と旦那様はかれこれ十数年前に同じ商人ギルドで働かれていて、共に行商人仲間だったのですが、ある遠征中に魔物に襲われてしまい、リーダーであった旦那様は大きな怪我をなされて、何とかこの町に辿り着いた後の療養の末に行商人を辞めてしまわれたのですが、先日再び商人ギルドに顔を出された旦那様が『商会を開きたい』と唐突に申し出られて……、本当に新たに自分の商会を作られてしまわれたのです」


(前にこの町でおやじと会ってからまだそんなに経っていない筈だが、その間に何か心変わりするような出来事があったのだろうか……)


 知られざるおやじの過去を青年に聞かされたソフィは、一体この僅かな期間に何があったのだろうかと考え始めるのだった。


「私共の親も別の商会をやっているのですが、いい機会だから旦那様の元で修行をさせてもらいなさいと、私共をカーネリー様の元に預けられたので、ここで修行をさせて頂きながら働かせて頂いているというわけなのです」


「なるほど……」


(彼らは単なる使用人ではないのだろうとは思っていたが、おやじに預けられた子弟だったのか。道理で使用人とは思えぬ恰好をしておるわけだ。しかしあの『おやじ』がかつては行商人たちのリーダーをしていたとはな。レグランの実を売ってくれる気前のいい『おやじ』にしか見えなかったが、かつては相当にやり手の商売人だったのかもしれぬな)


 ソフィがそんな事を考えていると、凄い勢いで入り口の扉が開かれるのだった。


 そして先程呼びに行った若い青年と共に現れたのは、あの見慣れた顔をした『おやじ』であった――。


 ……

 ……

 ……

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