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2107.ソフィが連れ帰ってきた護衛の力量を知る大魔王

 冒険者ギルドでディラックに挨拶を交わし終えたソフィ達は、ニーアの案内で露店市場のある方向とは逆の道を進み始めるのだった。


 これから向かう先は、いつもソフィに『レグランの実』を売ってくれていた露店の店主が居る場所である。


「それにしてもあの『おやじ』が今では商会長とはな。我は『おやじ』がこの町の露店で『レグランの実』を売っていたところしか見たことがないのでな、今でも信じられぬよ」


 ソフィがしみじみと過去を思い返しながらそう告げると、ニーアは前を向いていた顔をソフィの方へと向けて口を開くのだった。


「その店主さんだけど、ソフィ君がヴェルマー大陸に向かう事が決まってからは、ほとんど露店にも顔を出さなくなっちゃったんだよ。他にも『レグランの実』を売っている露店はあるけれど、店主さんみたいに常に仕入れて売っている露店はないからね。それでソフィ君みたいに『レグランの実』が好きな客が、露店市場に出ていなくてガッカリしているところを何度か見た事があるよ」


 どうやらソフィの他にも『レグランの実』の()()()と呼ぶべき客がこの町には居るようである。


「店主さんが露店に顔を出さなくってそれなりに日が経ってから、この先にある空き家だった大きな屋敷に人が住むようになったかと思えば、その屋敷の主人が露店の店主さんだったんだよ。僕は何度かソフィ君と店主三と顔を合わせていたし、ある時に外でばったりと会った店主さんと話して見た事があってね。その時に店主さんが別の町で商いをやっているって教えてくれたんだ」


「ふむ……。しかし別の町で商会を開いておるというのに、ここにその商会の長たる『おやじ』がグランに住み続けているのには何か理由があるのだろうか。商会そのものを部下達に任せているとはいっても、ずっとそのまま任せっぱなしというわけにもいくまい? 移動を考えれば不便なだけだとは思うがな……」


『おやじ』がソフィのように『高等移動呪文(アポイント)』が使える筈もなく、移動の際にはかつてソフィがこの世界で実際に経験したような『盗賊』や『魔物』達に注意を払いながら動かなくてはならないだろう。そんな面倒な事をするくらいなら、最初から自分の商会のある町に屋敷を構えた方が効率もいいだろうと考えるソフィであった。


「どういう理由があるのかは僕にも分からないけど、会えたら直接訊いてみるといいかもね?」


(店主さんが屋敷を用意してまで一人この町に残ったのは、きっとソフィ君がいつこの町に来てもいいようにって考えてるからじゃないかな……?)


 ニーアは内心ではそう考えたが、憶測でモノを語るわけにもいかないとばかりに、胸中で呟くに留める事にするのだった。


 そしてその後もソフィ達はグランの町並みを眺めながら歩いて行き、やがて目的であった屋敷の前に到着するのだった。


「ここだよ、ソフィ君」


「ほう……。こちら側にはあんまり来る事がなかったように思うが、確かに何度か見た屋敷だな。今は『おやじ』が住んでいると言っていたが、その前はずっと空き家だったのだろうか?」


「ソフィ君がこの町に来るずっと前に一度、ケビン王国の貴族が別荘として使っていたみたいだけど、詳しくは僕も分からないな。ディラックギルド長からならもっと詳しく話は聞けるだろうけどね……」


「ふむ……『おやじ』の前に住んでいたのは、ケビン王国の貴族だったのか。それは中々に色々と『おやじ』も思い切った事をしたものだな。この町に残るのに余程の理由があるという事だろうが、これは本当に一度は訊いておかねばならぬな」


 そう言ってソフィが屋敷を見上げていると、門が開いて中から数人の男が出て来る。その突然に現れた男達をソフィ達が見ていると、その男達は小走りでこちらに向かってくるのだった。


「ソフィさん!」


「ソフィ様!」


 明らかに大したことがない戦力値をしている人間達だが、それでも自分の主であるソフィの元によく分からない者達を近づけさせるわけには行かないと考えているブラストは、特に『魔力』などを高めるわけでもなく戦闘態勢に入る。


 同じく六阿狐もまたソフィの護衛を行う為に構えたが、こちらは戦力値コントロールを行いながら戦闘態勢に入り始めるのだった。


 どうやらここに来るまでに六阿狐は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、一見して大した事のなさそうな人間であっても、絶対に侮るような真似はしないとばかりに気合を入れたようである。


 六阿狐の戦力値コントロール技術は非常に滑らかなものであり、()()()()()()()()()()()()六阿狐の戦力値が飛躍的に上昇し終えるまで、何をやったのか気づけない程であった。


「!?」


 六阿狐の圧力に気づいたブラストは、こちらに近づいてくる人間達に注意を払いながらも、視線そのものは六阿狐の方に向いていた。


()()()()殿()()()()()()()()()()()()()()()()()……! 成程、ソフィ様が六阿狐殿に護衛を任せられたワケだ。徒者ではないだろうなと感じてはいたが、今の六阿狐殿は『漏出(サーチ)』など使わなくても凄まじく強い事が理解出来る。これは……明らかに『()()()』で間違いないな)


 大魔王ブラストはこの一瞬で横に居る六阿狐が、自身よりも単純な戦力値では遥か上を行っているという事を理解するのだった。

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