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2105.懐かしい話

「それにしてもディラックよ、前回来た時もギルドの盛況ぶりに驚いたが、今はギルドというより、町全体が賑わっているようだな。色々と短期間の内に変わり過ぎて、とても同じ町だとは思えぬと感じたぞ」


 ソフィはまだここに来てそんなに時間は経っていないが、露店市場の盛況ぶりや、ギルドの建物の中に居た冒険者の多さを思い出してそう口にするのだった。


「それもこれも全てソフィ君の齎した功績のおかげだよ。冒険者ギルドに関しては確実に君のおかげで人が増えたのは間違いない。最近ではこのグランの冒険者ギルドは、ケビン王国領のギルドの中でも五指に入る程の大手ギルドだと言われておるくらいだしな」


「ほう……。それは大したものだな」


「もちろんいつまでも君の名に頼ってばかりいるわけにもいかないからな。この町に勲章ランクの高い冒険者に定着してもらえるように、色々と尽力をして動いているところだ」


 そう言ってディラックはソフィの隣に座っているニーアの方を一瞥する。


「彼も凄まじい成長ぶりを見せてくれていてな、今では()()()()()()()()()()となったんだ。次回の対抗戦でも大いに活躍してくれると考えているよ」


 そう言ってディラックは、いつもの豪快な笑いを見せるのだった。


()()()()……。もうかなり昔の事のように感じるな」


 ディラックの口にした『()()()』という言葉に、静かに反応を示すソフィだった。


「今にして思えば、あれが全ての始まりだった。今では君に『指名依頼』を出した過去の自分を褒めてやりたいぐらいだよ」


「クックック、そう言えばお主に依頼されて我は対抗戦に参加する事を決めたのだったな。本当に懐かしい話だ」


「あの時の対抗戦に参加してくれたソフィ君が『ラルグ』魔国の王様となり、ニーア君が冒険者ランクAのリーダーを務めているのだからな。いやはや本当に凄い話だよ」


 そう言って嬉しそうに話すディラックだが、今の話を聞いていたニーアの方は浮かない表情を見せ始めるのだった。


「そうそう、そのニーア君がリーダーを務める『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』のパーティの事なのだがな? 少し前にこの町でギルドA指定魔物の『キングゾンビー』の討伐依頼を出したところ、短期間であっさりと任務を達成してくれたのだよ! この『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』にはニーア君の他に、かつてはあの魔法使いの町『()()()()』の冒険者ギルドに居たという有名なAランク冒険者の『リルド』君や『エレナ』君も居てね。何と勲章ランクAが三人も居るんだ。その他にも勲章ランクBの者達も居るし、この町のギルドで期待の大型パーティなんだ! はははっ、ニーア君、しっかり頼むよ?」


 余程に『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』には期待しているのだろう。満面の笑みを浮かべて説明を行い、最後にはパーティリーダーのニーアによろしく頼むとばかりに声を掛けるのだった。


「は、はい、頑張ります……」


 ニーアもギルド長にこうまで期待されては何も言えず、ディラックの期待に応じるように返事をするのだった。


 その様子を見ていたソフィは思うところがあったが、今はまだ何も分かっていない状況でもあるが故に、何も口にはしなかった。


 代わりに話題を変えようとソフィは頭を巡らすと、ふと露店の『おやじ』の事が頭に思い浮かぶのだった。


「そう言えばディラックよ、前回ここで『レグランの実』の話をした時に、我が露店の『おやじ』の話をしたのを覚えておるか?」


「露店の『おやじ』……? ああ! ソフィ君にこの町で初めて『レグランの実』を売ったという露店商だった男の事だな? もちろん覚えているとも。今では自分の商会を持っている程の大商人になっているぞ。確か別の町で本業の商売を行ってはいるが、当人はまだこのグランの町に住んでいる筈だ」


「うむ、そうらしいな。我も帰る前に『おやじ』に会っておきたくてな。元々はレグランの実を『おやじ』から買おうと露店市場に顔を出したのだが、結局見当たらなかったものでな。この後ニーアに案内してもらって『おやじ』が居る屋敷に行こうと思っていたのだ」


「そうだったのか。ではこれ以上ソフィ君達を引き留めるわけにもいかぬな」


 そう言ってディラックは会話を打ち切って立ち上がるのだった。


 どうやらソフィが『おやじ』の話題を出した事が、別れの切り出しだとディラックは考えて空気を呼んだのだろう。


 ディラックが立ち上がると同時に、ソフィ達も立ち上がるのだった。


「久しぶりに会えて嬉しかったぞ、ディラックよ。この町のギルドの更なる発展を願っておる」


 そう言ってソフィは近づいてくるディラックに手を差し出すのだった。


「ありがとう。いつでも気軽にここに立ち寄ってくれよ? ソフィ君ならいつでも大歓迎だからな」


 そう言ってソフィの手を握り、笑みを浮かべながらディラックはソフィと握手を交わすのだった。


 ……

 ……

 ……

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