2104.久しぶりの再会
「すまぬな、先程は助けてくれて感謝するぞ」
奥の部屋に入ったタイミングでソフィは、ここまで連れ出してくれた女性職員に感謝の言葉を告げるのだった。
「ふふっ、あのままだと我々ギルド側としても業務に差し支える状況でしたからね。それにしても本当にソフィさんはいつきても凄い人気ぶりですね」
「ふむ……。別に我自身は何か特別な事をしたつもりはないのだがな」
そう言うソフィだが、ギルド側にしてみればソフィが居たからこそ、今のグランのギルド状況があるわけである。
当然にその事をディラックだけではなく、いち職員である彼女も理解している為、感謝の気持ちを抱きながらソフィを見つめていた。
…………
やがて奥の部屋から再び廊下に出た後、少し奥に進んだ先に二階へ上がる階段の前に到着するのだった。
「ここから階段を上がって二階の西口にある職員用の出口から出られますと、大した騒ぎにならずに外に出られると思いますが、このまま本当にギルド長に会って行かれるのでしたら部屋まで案内しますよ。会って行かれますか?」
「久しぶりにここまで来たのだから、ディラックにも会っておきたいと思っていたところだ。良ければ案内を頼みたい」
その女性職員の言葉に直ぐにソフィ達は頷くのだった。
「畏まりました。それではこのままご案内をさせて頂きますね」
そう言って先に階段を上がりながら、ソフィ達を先導してくれる職員であった。
そしてディラックの部屋のまでソフィ達を案内すると、職員は部屋の扉をノックし始める。
「ギルド長、少しお時間よろしいでしょうか?」
「ああ、部屋は開いているから、そのまま入ってきてくれて構わん」
職員が声を掛けると、直ぐに部屋の中からディラックの返事する声が聞こえてくるのだった。
「それでは、失礼致します」
職員はそう言った後、ソフィ達を一瞥する。
ソフィは軽く頷いて先に部屋の中へと入るのだった。
「クックック、久しぶりだな、ディラックよ」
自分のギルド室の中で仕事をしていたディラックは、その声に動かしていた手を止めて驚いた表情を浮かべるのだった。
「こ、これは驚いた! ソフィく……、ソフィ前魔国王に……ニーア君も一緒か!?」
直ぐに立ち上がり、ソフィ達の前まで歩いてくるとその頭を下げるのだった。
かつてのソフィとディラックは『ギルド長』と『いち冒険者』の間柄ではあったが、今ではもうその立場も大きく変わっている。
前に会った時にソフィは、ディラックに関係を違えるような真似はしないで欲しいと告げてはいたが、それでも礼儀はしっかりと取るディラックギルド長であった。
「クックック。ディラックよ、我の事を魔国王と呼ぶのは止めてくれと前に言ったではないか。それに昔のように接してくれとも言ったであろう?」
「あ、ああ……。し、しかしいきなり変えろと言われてもな……。キャリー君、案内ご苦労だった」
「はい、それでは失礼致しますね」
どうやら女性職員の名は『キャリー』というらしい。彼女は去り際にソフィにウインクをしてそのまま戻って行くのだった。
「いや、本当に驚いたよ。ソフィ君は本当にいつも何の前触れもなく現れるから心臓が持たぬよ。それに先程任務の達成報告を終えたばかりのニーア君も一緒だとはな」
ディラックはそう言ってソフィ達を椅子に座らせると、自分も座っていた椅子に腰を下ろすのだった。
「クックック、実は最近まで長旅で遠くの方へと行っていたのだが、ようやく戻ってこれたのでな。そこで直ぐに『レグランの実』を食べたいと思い至ってここに来たわけだ。そこでついでにお主の顔も見ておこうと思ったところにニーアとばったり会ったのでな」
露店市場での騒ぎの一件などはあえて話す必要はないと考えて、端的に説明を行うソフィであった。
「はぁ……。レグランの実を食べるついでにワシに会いに来たというわけか。全くソフィ君はあの時と変わらぬままだな。それでソフィ君の隣に居る方々は一体?」
先程椅子に座るように促しても首を横に振り、今もソフィの後ろに立って護衛を続けるブラストと六阿狐の方を一瞥するディラックだった。
「ああ。背の高いこの男は『ブラスト』と言ってな。昔からの我の仲間なのだ。それとこちらの者は、さっき言った長旅の途中で知り合ってな、縁が有って当分は我の元で暮らす事になった『六阿狐』という」
「よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
六阿狐の方は素直に挨拶を行ったが、ブラストはソフィに紹介されて渋々と言った様子でディラックに挨拶をするのだった。
ディラックに対するブラストの態度は、初めて六阿狐やニーアと接した時とは明らかに異なっていた。
どうやら本気でソフィを護衛する覚悟を持っている様子を窺わせた六阿狐や、ソフィに本気で感謝の念を持っている様子を見せていたニーアとは異なり、あくまでディラックに関しては、ブラストの中で『どうでもいい部類の人種』と捉えたようであった。
「ぶ、ブラスト君と六阿狐君か……。よ、よろしく頼む」
ブラストの隠そうともしないディラックへの態度に、布で汗を拭いながら愛想笑いを浮かべるディラックだった。
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