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2099.和解とニーア達の事情

 ブラストとグランの町の冒険者ギルドに所属する『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』が一触即発の空気となった後、どうやらこの『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』のパーティの一員であろう男が、騒ぎを聞きつけて慌てて露店広場に顔を見せたのだが、その男はソフィがよく知る男であり、かつては共に対抗戦で戦った『ニーア』なのであった。


「えっ……!? ()()()()!? い、いや、()()()()()()!?」


 自分のパーティの仲間が戦闘態勢に入ろうとしているのを見て、慌てて止めに入ろうとしていたニーアだが、そこで突如として自分の名を呼ばれた事で、ようやくここにソフィが居る事に気づいたニーアであった。


「え……? リーダー、()()()()()()()()……」


「は、()()()()()()』!? 嘘っ! ほ、本当に!?」


 ブラストと争っていた『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』のリルドとエレナの両者は、ニーアが口にした『ソフィ』という名を聞いて、直ぐに視線をソフィの方に向けながら驚きの声を上げたのだった。


 ……

 ……

 ……


 ニーアと再会した後、直ぐにソフィはニーアに事情を説明を行った。


 そしてそのままソフィは露店主に商売の邪魔をしてしまった事に対しての謝罪を行った後、串焼きの代金とは別に手持ちの白金貨を数枚露店主に手渡すのだった。


 ボアの串焼きを売っていた店主は、ソフィから白金貨を受け取った事で直ぐに怯えていた表情を綻ばせて、ソフィの謝罪を受け入れるどころか、逆に感謝の言葉を告げながら喜ぶのだった。


 もちろんブラストに対しての恐怖心を拭え切れないようではあったが、それでもボアの串焼きの日銭の稼ぎとは比較にもならない収入を得た事で店主は、喜色満面と言った様子で露店を閉めて去って行くのだった。


 そして残されたソフィ達に『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』のリルドとエレナ、それに他のパーティの仲間達もニーアに諭されて渋々と言った様子でソフィとブラストに頭を下げて謝罪を行うのだった。


「そ、ソフィく……じゃなかった、ソフィ魔国王! ほ、本当に申し訳ありませんでした。彼らを代表として改めて私が謝罪しますので、どうかお許しください」


「そのように何度も謝らなくて良いぞ、ニーア。それに我はもうラルグの魔国王の座を退いておるし、何よりお主と我はかつて同じチームで戦った仲間ではないか。むしろそのようにまるで他人であるかのように敬語で謝られる方が我には辛い。かつてのように接してもらえぬだろうか?」


 冗談抜きで本当にそう考えている様子のソフィの表情を見たニーアは、小さく溜息を吐くとそこでようやく首を縦に振って見せるのだった。


「分かったよ、でも本当にうちの連中がやったことに関しては謝っておきたいんだ。リルドもエレナも悪気があったわけじゃなくて、本当に思い込みが激しいだけなんだ。それでそこの……、えっとソフィ君の知り合いの方が露店の店主に何かしていたんじゃないかって思って行動したんだと思う。だから本当に申し訳なかった!」


 ニーアはソフィ達に何とかして誤解だったのだと伝えたいのだろう。リルドやエレナの代わりに再び頭を下げながら謝罪を行うのだった。


 そしてパーティリーダーのニーアが自分達の代わりに謝っているのを見て居た堪れなくなった様子で、再び彼らもブラストに頭を下げたのだった。


「ソフィ様、俺はもう気にしてないんでいいです。彼はソフィ様のお知り合いの方なのでしょう? でしたらこれ以上謝罪をさせるわけにもいきません」


 どうやら先程ソフィが口にした言葉をしっかりと耳に入れていたのだろう。ブラストはもうこの件に関しては終いにしたいと考えたようで、ソフィにそう告げるのだった。


「ではニーアよ、当人達も無事に和解出来たようであるし、この件はここまでにしておこうではないか。それに我はもっとお主とこれまでにあった事について話がしたいのだ。時間が許すのであれば、少しだけ場所を変えて話をせぬか?」


「もちろん僕は構わないよ! リルド達もついてくるだろ?」


「えぇ……? いやぁ、俺はこの後にデートの約束があるから遠慮しとくよ」


「私も遠征で疲れているからパスかな、甘い物食べたいし」


「じゃ、俺も」


 ニーアの誘いにリルドとエレナが断ると、他のパーティの人間達も次々と断るのだった。


「そ、そうかい……? でも用事があるなら仕方ないな……」


 ニーアは残念そうにそう告げるが、もうリルドもエレナもニーアを無視して歩き始めていく。他のパーティ仲間も反対方向に歩き出していき、結局この場にニーア一人だけが残されるのだった。


 そんな去って行く仲間達の背中をニーアは見つめていたが、やがて仲間達が見えなくなると、寂しそうに俯き始めるのだった。


 ……

 ……

 ……


「ニーア、すまぬ……。もしかすると我は余計な事をしてしまったか?」


 ソフィはそんなニーアの俯いている姿を見て、胸が締め付けられるような思いを抱きながら、自分が声を掛けたせいでこうなったのではないかと心配そうに声を掛けるのだった。

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