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2097.トラブルを呼ぶブラスト

「ではこのままミールガルドに向かうが、本当にお主らは良いのだな?」


「も、もちろんです。ソフィ様がいつも食べたいと仰られていた()()ですからね。じ、実は俺も非常に興味があったので、今から食べるのが楽しみですよ!」


 ソフィはそんな事を口にするブラストの目が泳いでいる事に気づいたが、何も言わずに頷くのだった。


「もちろん私も構いません! 私もその果実がどのようなものなのか興味が湧いてきました」


 ブラストに対して六阿狐の方は本当に興味があるらしく、目を輝かせながら『()()()()()()()()()()』と呟いていた。


「ふむ、では少なくとも全員が一皿分は食べられるように、少し多めに買いに行くとしようか。そうなるとやはり我がよく知る馴染みの店に行くのが良いだろうな。よし、それでは我が『高等移動呪文(アポイント)』を使うとしよう。お主ら、我の身体の何処かを掴んでいるのだ」


「はっ!」


「は、はい!」


 二人が返事を返すと、ソフィは周りの邪魔にならぬように誰も居なくなるのを見計らってから『高等移動呪文(アポイント)』を発動させるのだった。


 すると一瞬の内にソフィ達はその場から、ミールガルド大陸の方角へと飛び去るのだった。


 ……

 ……

 ……


 そしてソフィの『高等移動呪文(アポイント)』によって、一瞬の内にミールガルド大陸にある『グラン』の町にある外れの空き地へと一行は到着するのだった。


 懐かしい『グラン』の町の景色を眺めていたソフィは、やがて町の門の外側の方角に視線を向け始める。


 この空き地の直ぐ近くの門の外にはベア達が居た森があり、今もそこにはベアの仲間の魔物達が暮らしている事だろう。


 ソフィがこの『グラン』の町に訪れた頃はまだ、この世界に居る魔物達を生み出した魔王の存在が誰なのかを把握していなかったが、レキというこの世界の原初の魔族が居る事を知った今では、あのレキこそが今を生きる魔物達の祖先を生み出したのだろうかと門の外を見ながら思案するのだった。


「ほう……。ここがソフィ様の仰られていた『グラン』という町ですか」


「ここはとても空気が美味しくて、まるで私の居た世界の山に帰ってきたみたいです!」


 ソフィが思案の海に潜っている横で『ブラスト』と『六阿狐(むあこ)』は、初めて足を踏み入れた『グラン』の町の感想を思い思いに口にするのだった。


「うむ。我がこの世界で初めて辿り着いた町がここだった。確かに近くに山も森もある自然豊かな町であるからな。妖魔山で暮らしていた六阿狐であれば、セグンスよりもこのグランの方が好みかもしれぬな」


「はい! あ、でももちろんソフィさんの屋敷のある街も賑やかで珍しいお店が並んでいて、非常にワクワク出来ましたし、その前のお城に高い建物がある場所もドキドキ出来ました!」


「クックック、ラルグの塔の事だな? また他の者達とも合流する時にあそこに行く事になるだろう。その時はラルグ魔国や城の中も改めて案内しよう」


「ありがとうございます!」


 そう言って六阿狐は満面の笑みを浮かべながら、大きな声で感謝の言葉を告げるのだった。


「では早速、我の知り合いの露店の方に向かうとするか。まだ商いを続けておれば良いのだがな」


 そう言って久方ぶりに『()()()』に会う為、かつての露店の場所へと歩き始めるソフィであった。


 外に出る門の近くの空き地から移動を行うソフィ達は、やがて見慣れた露店が立ち並ぶ場所に辿り着く。


 もちろんその立ち並ぶ露店の先には、かつてソフィが世話になった冒険者ギルドの建物も見え始め、ソフィは懐かしさと感慨を覚えるのだった。


 立ち並ぶ露店の中を歩いて行くソフィ達だが、最初は全く興味を示していない様子だったブラストも、物珍しい商品が並んでいる雑貨露店に興味深そうに目を向けていて、六阿狐の方も美味しい匂いのするボア肉の串焼きを物欲しそうに眺めているのだった。


「六阿狐、何か食べたい物があるのなら言うがよいぞ?」


「はわっ! い、いえいえ! 見たことがない食べ物だなって見ていただけですので、そんなそんな!」


 慌てて首を横に振りながらそう告げる六阿狐だが、串焼きの香ばしい匂いに釣られるように、チラチラと彼女の視線はそちらを向いていた。


「クックック、すまぬがそこの串を二本ばかし売ってくれぬか?」


「毎度! いやー仲が良さそうな兄妹だな。親子でこの町に観光かい?」


 そう言ってソフィから代金を受け取った店主は、ボアの串焼きをソフィ達に手渡した後、ブラストの方を見ながらそう告げるのだった。


 どうやら露店の店主は、ブラストをソフィと六阿狐の親だと思い込んだのだろう。


()()?」


「あ……い、いえ!! すんません!!」


 ブラストは怒っているわけではなく、一体何を勘違いしているんだとばかりに返事をしただけなのだが、店主は背が高いブラストに睨まれたと勘違いしたようで、慌てて頭を下げるのだった。


「オイ、何を謝っているんだ?」


「ひぃぃ!! か、勘弁して下さい!」 


「てめぇ! そんな風に頭を下げられたら周りが勘違いするだろうがっ! ソフィ様に迷惑をかけるんじゃねぇよ!!」


「ヒィィッ!! す、すんません! お金も食べ物も全て差し上げますから、い、命だけはお助けを!!」


「お、オイッ!! だから何を言って……っ!」


 店主が見上げる程の大男であるブラストは、立っているだけでも威圧的に映る程だというのに、その強面で大きな声で怒鳴った事で、店主は腰を抜かしてそのまま地面に倒れ込んでしまうのだった。


 そして周囲も何があったのかとばかりに騒ぎ始めていき、やがて冒険者ギルドから出てきた数人の冒険者達が騒ぎを聞きつけてこちらに向かって走ってくるのが見えてしまい、大きく溜息を吐くソフィであった。


 ……

 ……

 ……

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