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2096.破壊の大魔王が抱く、リーネへの恐怖心

 屋敷でリーネとヒノエが本音で語り合い始めた頃、ソフィはブラストに『ノックス』の世界であった出来事を話していた。内容としては他の九大魔王に告げたものと同じであったが、やはりブラストもその出来事の濃さに驚かされていた。


「そうですか……。しかしエヴィの奴もとんでもない世界に跳躍ばされたものですね。まず間違いなく、ソフィ様が戦った『王琳(おうりん)』という六阿狐殿の主殿と戦う事になっていたらやられていた事でしょうね」


 古参の九大魔王である『ブラスト』は、同じ九大魔王であってもエヴィとは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 エヴィも数千年という年月を生きてきてはいるが、それでもブラストからしてみれば、大魔王エヴィは自分の世代より遥か後の魔族であり、まるで()()()()()()と呼べるくらいの印象を抱いていたのだった。


「それは間違いないであろうな。エヴィも大魔王としてはとても強い部類に入るのだろうが、王琳が相手では流石にどうにもならんだろう。何せあやつは我であっても『力』を開放せねばやられると思わされたぐらいだからな。あの『天雷一閃(ルフト・ブリッツ)』に似たあやつの『魔』の技法の威力は、とてもではないがエヴィの耐魔力では耐えられぬだろう」


 ソフィは何度か受けた王琳の『遠放速雷(エニア・エクレル)』の威力と速度を思い出し、エヴィでは耐えられないと明言するのだった。


「ソフィ様。一つ俺からお願い事があるのですが、申しても構いませんか?」


「うむ、構わぬよ」


 わざわざ立ち止まりながら真剣な表情でそう告げたブラストに、何を言うつもりなのかとソフィは興味を抱く。


「先程ソフィ様に教えて頂いた『煌聖の教団(こうせいきょうだん)』の幹部が言っていたという世界に()()()()()を迎えに向かわれる時、今度は俺も連れて行ってもらえませんか?」


「ふむ……。もちろん構わぬが、その世界へ向かうにはヌーの力を借りねばならぬのだぞ? 道中、またヌーと共に行動する事になると思うが、あやつにお主は強い敵対心を抱いていたと思うが……、良いのか?」


「……構いません。それに先程のソフィ様が仰られた言葉通りであれば、アイツも今すぐに俺たちをどうこうするつもりもなさそうですし、今のところは俺の方からも奴に手を出すつもりもありませんからね」


 ブラストが自分から手を出すつもりがないと口にする時、眉間に強く皺が出来たのを見たソフィであった。


 どうやらブラストにとって、元々少しだけ実力が上なだけだと感じていたヌーが、ノックスの世界で更なる成長を遂げたと聞かされて、今のままでは到底勝ち目がないと理解したようであり、このまま手を拱ていてはいずれ完全に置いて行かれると、焦りが生じて苛立ちを募らせているのだろうと察したのだった。


「分かった。ではイバルディ救出の為に『()()()()()()』という世界に向かう際には、お主について来てもらう事にしよう」


「ありがとうございます。六阿狐殿もよろしく頼みます」


「は、はい!」


 じっとソフィ達の話に耳を傾けていた六阿狐は、突然にブラストに声を掛けられて慌てて返事をするのだった。


(び、びっくりした! でも私が何も言っていないのにもうブラストさんの中では、私がソフィさんと一緒に行くと思ってくれているのね。ちょっとだけ説明しただけなのに、もう私がソフィさんの護衛をする事を()()()()()()()()みたいで、ちょっと嬉しいな……!)


 まだブラストと完全に打ち解けているとは思っていない六阿狐だが、それでも自分の事をちょっとでも分かってくれたように感じられて、嬉しそうにするのだった。


「それでは、そろそろ屋敷に戻るとするか。もうリーネ達も話を終えている頃だろう」


「えっ!? い、いや、せっかくこうして、この世界にお戻りになられたのですから、も、もう少しだけこの町を見て行かれませんか? そ、それにまだ全然六阿狐殿にこの町の事を説明出来てはおりませんし、この町の案内がてらに何か美味しいものでも食べて行かれませんか?」


 どうやらブラストはまだソフィを屋敷には戻したくないようであり、さっきの同行を許可されて嬉しそうにしていた表情を変えたかと思えば、慌ててそう告げるのだった。


「ふむ……。しかしせっかく久しぶりにリーネの元に帰ってきたのだから、我はあやつの手料理を食べたいのだがな……」


「そ、それでしたら! リーネ様のお料理を食べた後に皆で食べるデザートなどを買って帰りませんか!? きっとリーネ様もお喜びになられるかと!」


「おお、確かにそれは有りかもしれぬな。しかしデザートか……。それならばレグランの実が食べたいところではあるが、あれはミールガルド発祥の食べ物のようであるし、この町にはないだろうな……」


 レグランの実を最後に食べたのは、この大陸ではなく『ミールガルド』のほうであり、それもケビン王国領であった為に、このセグンスの町にはないだろうなと残念そうに告げるソフィであった。


「そ、それでしたら、今から少しの間だけ『ミールガルド』大陸に向かわれませんか!? なに、我々でしたら『高等移動呪文(アポイント)』であっという間ですし、食べたいと思った時が食べ頃です! ささ、そうしましょう! 六阿狐殿も構わんでしょう!?」


「えっ!? は、はい、私はそれで構いません!」


「それは良かった、よし決まりだ! ささ、ソフィ様、行きましょう!」


「う、うむ……」


(こやつ、()()()()()()()()()()()()()? まるで我が屋敷に戻るのを少しでも長引かそうとしておるようだが、リーネ達の話の事ならば、もう十分に済んでいる頃合いだと思うのだがな……)


 リーネが本気で怒っている時の怖さをまだ知らないソフィは、何をそんなにブラストが慌てているのだろうかと呑気に見当違いの事を考え始めるのだった。


 そして逆にブラストは、あれ程に激昂している様子を見せていた彼女が落ち着くには、まだ当分時間が掛かるだろうと考えており、少しでもリーネが沈静する時間を稼ごうと必死に立ち回るのであった。


 ――どうやらベア達だけではなく、九大魔王のブラストでさえも、怒っているリーネが恐ろしいと心の底から考えているようであった。


 ……

 ……

 ……

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