2091.リーネの印象
リーネはソフィと再会出来た事に喜んでいたが、六阿狐の後に紹介が行われた『ヒノエ』の衝撃の言葉に驚かされる事となった。
やがて実感が湧いてきたリーネは、今度は目の前の女性が一体どういうつもりがあって、自分に会いに来たのだろうかという疑問を抱き始める。
その事を問い質そうと口を開きかけたが、リーネが言葉を発する前にヒノエが先に続けるのだった。
「だけど、ここでソフィ殿との再会を果たした時の先程のリーネ殿の目を見て確信しました。貴方は本気でソフィ殿を想い、そして愛しているんだなと。それにその後も私らが居る前で、あんな情熱的に抱擁されちまえば、否が応にも理解出来ちまう。ソフィ殿もリーネ殿も本気で愛し合っているんだな……って。他の人間が入り込む余地がない程に仲が良いと、それが分かっただけでもう十分です……ソフィ殿、連れてきてもらって改めて感謝する。私はちょっとの間、頭を冷やしてくるから、またアンタの魔王軍に入れて貰えるかの話は後で聞かせて欲し……」
「待って! あなたちょっと待ちなさい! 好き勝手に私に話すだけ話して、こっちが何も口にする前に勝手に結論を出さないで! あなたは言いたい事を言って、自分の気持ちにスッキリできたかもしれないけど、こっちはいきなり一方的に告げられて、モヤモヤで気持ちがとんでもない事になっちゃったじゃないっ! せっかくソフィと会えて心底嬉しいと思えていたのに、どうしてくれるのよっ! あなたこのまま去ったら地の果てまで追いかけるわよっ!? 何も言わずに私とこのまま家の中に入りなさい! ソフィ! 悪いけど、私ちょっとこの人と二人で話す事があるから、六阿狐ちゃんにセグンスの町を案内してあげなさい!」
「むっ、そ、そうか……、分かった。六阿狐、良いか?」
「はぇっ!? は、はい!」
激昂して捲し立てるように告げるリーネに、ソフィは仕方ないとばかりにそう告げて、六阿狐はまるで豹変したかのようなリーネの様相に驚き、何も考えられずのままで反射的にソフィに返事をするのだった。
そしてその直後、門の前に大きな買い物袋を持った大男が、何事かとばかりに現れ始める。
その男の名は『ブラスト』――。
ソフィの『九大魔王』の一体にして『破壊』の異名を持つ魔族である。
「リーネ様、そのように大声を出されてどうなされたというのです? 声が表の方にまで……え? そ、ソフィ様!?」
「ブラストさん! いいから貴方もソフィと一緒に外へ出ていて下さい! これからこの御方と大事な話をしますので! それと荷物だけは受け取っておきます! 頼んでいたお買い物、ありがとうございました! ベアちゃん!」
「は、ははっ!!」
「!? は、はい! わ、分かりました!」
何が何だか分からぬまま、ブラストは市場で買ってきた荷物をベアに渡して、そのままソフィ達と共に門の外へと追い出されるのだった。
ブラストから荷物を受け取ったベアは、リーネの指示で買い物袋を玄関まで運ぶと、そのまま慌てて庭に戻って行くのだった。
その庭では『ロード』のハウンドや『ベイル・タイガー』の『ベイル』達が震え上がり、身を寄せ合いながら縮こまっているのだった。
『魔王階級』領域に居る『ベア』でさえ、リーネ達と玄関先に向かう途中に手が震えていたくらいなのだから、ハウンドたちがこんな状態になっているのも理解が出来るというものであった。
(は、ははっ……! リーネ殿の第一印象は、慎みがあって奥ゆかしく、それはそれは男性を包み込むような優しい女性なのかと思ったが、どうやらそれだけじゃないみてぇだ。こうして一緒に歩いていると、何やらあの副総長と共に戦場に居るみてぇに胸が熱くなってくる。この私が戦場でもないのに、こんな気持ちを抱く事になるなんてな。すげぇぞ、この人……!)
そしてそのご機嫌ナナメとなったリーネと共に歩いているヒノエは、最初に抱いたリーネの印象とはガラリと変わり、今では自分が所属していた『妖魔退魔師』組織の副総長である『ミスズ』と似ているなという意識を持つに至るのであった。
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