2090.再会と、驚きの言葉
普段は大人しいハウンドやベイル達が門に向かって吠えている様子や、それを制止しないベアに誰か知り合いでもきたのかしらとばかりに、晩御飯の準備を行っていたリーネはその手を止めて玄関へと向かい、そのまま扉を開けて外に出てみると、そこには待ち焦がれていた者が立っていたのだった。
「ソフィッ……!」
「おお、リーネ。ようやく帰ってき……っ」
ソフィは最後まで言い終わる前に、駆けてきたリーネに抱きしめられたのだった。
そして二人はそれなりの時間を抱き合っていたが、やがては互いの顔を見ながら離れるのだった。
「ただいま、リーネ」
「おかえりなさい、ソフィ」
そう言って二人は笑みを浮かべて、再会を喜び合うのだった。
ソフィとリーネが抱き合う様を見ていたヒノエと六阿狐だったが、六阿狐は手を組みながら目を輝かせて、ヒノエの方は真剣な面持ちでリーネの方に視線を送っていた。
そんな視線に気づいたリーネもまた、門近くに立っていたヒノエ達の方に視線を向け始める。
「それでソフィ、お連れの方々は一体……?」
「うむ、エヴィの捜索を行いに向かった『ノックス』の世界で知り合った者達なのだがな、縁があって一緒にこの世界に連れて帰ってくる事となったのだ。当面の間はここで一緒に暮らしてもらおうと考えておる」
「まぁ……!」
ソフィから事情を聞いたリーネは、六阿狐とヒノエの方を交互に見つめるのだった。
「も、申し遅れました、ソフィさんの奥方様! 私は『妖狐』の『六阿狐』と言います。我が主である王琳様から拝命を賜り、この世界でソフィさんの護衛を務めさせて頂く事となりました。ご迷惑をお掛け致しますが、どうかお傍に置いて頂けると助かります。よろしくお願いします!」
まるでリーネを主人とするかのように、六阿狐は誠意を込めた挨拶を行うのだった。
「こ、これはご丁寧にありがとうございます……」
「クックック、六阿狐は本当に真面目だな。リーネよ、この六阿狐は我が『ノックス』の世界で新しく出来た『友』から預かってくれと頼まれた子でな、本人が言うように我の護衛を務めるようにとあやつに言われているのだが、我としては六阿狐にはこの家でゆっくりと寛いでもらい、少しだけ毎日の家事を手伝ってもらえればと考えておるのだ。リーネもそのつもりで色々と見てやってくれ」
「ええ、そういう事なら分かったわ。六阿狐さん、よろしくお願いしますね?」
「は、はい! なんなりとお申し付けください! それとリーネ様、どうか私の事は『六阿狐』とお呼び下さい!」
「ええと、わ、分かったわ。よろしくね、六阿狐ちゃん」
「はいっ!」
少しだけ困った様子を見せてソフィと顔を見合わせていたリーネだが、やがては本人の希望通りに『六阿狐』ちゃんと呼ぶ事にしたリーネであった。
そして六阿狐の紹介が終わった事で、全員の視線がヒノエの方に移るのであった。
「貴方がソフィ殿の奥方のリーネ殿ですね?」
「は、はい、そうです……」
リーネに対して威圧をしたつもりではないのだが、覚悟を決めた目をして勇みながら張り切る様子を見せるヒノエに、その視線を向けられた彼女はたじろぐ様子を見せながら言葉を返すのだった。
「私はソフィ殿に無理を言って、貴方に会わせて頂く為にこの世界にやってきた『ヒノエ』と申す者です」
「え!? わ、私に会いに……? そ、それはどういう……」
リーネはどうして目の前の勝気な女性が自分に会いに来ようと思ったのか、全くヒノエのその意図が分からずに困った表情を浮かべ始める。
「私はノックスの世界でこのソフィ殿に惚れちまい、気持ちを偽る事が出来ずに告白を行いましたが、ソフィ殿に見事にフラれちまって、そこでソフィ殿に貴方という奥方が居るという事を教えてもらったんです。だから私は、ソフィ殿の愛した奥方をこの目で見たいと考えて、こうしてソフィ殿に無理を言ってこの場に連れて来てもらったんです」
「!?」
突然の言葉にリーネは心底驚いた様子で固まっていたが、やがてその視線をソフィの方に向けるのだった。
そして視線の先に居るソフィもまた、ヒノエの口にした事は冗談でも何でもなく、全て本当の事なのだと告げるように首を縦に振るのだった。
そこでようやく本当なのだと理解し、最愛の旦那に別の女性から告白を受けたのだという実感が、徐々に湧いてくるリーネであった。
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