2088.感服する二人
「なるほど、そういう事でしたか……」
ソフィからしっかりと事情を説明されたユファは、ようやく理解したとばかりに頷いて見せたのだった。
「改めて挨拶をさせて頂きます。私はソフィ様の『九大魔王』で名を『ユファ・フィクス』と申します」
そう言ってユファが自己紹介を行うと、事の成り行きを見守っていたヒノエと六阿狐も互いに顔を見合わせた後に、ユファの方に視線を向け直して口を開くのだった。
「これはご丁寧にありがとうございます。私は主の命により、ノックスの世界からソフィさんをお守りする為にこの世界にやってきました『妖狐』の『六阿狐』と申します。よろしくお願いします」
六阿狐の挨拶に笑みを浮かべたままユファも頷き、そのまま視線をヒノエの方に向けるのだった。
「私は名を『ヒノエ』と申す者。このソフィ殿に惚れ……いや、ソフィ殿を支えたいと強く願い、無理を言ってここまで連れて来てもらいました。まだ決まったわけじゃありませんが、貴方と同じ『魔王軍』で死ぬまで働きたいと思っています。もし置いてもらえる事になったら、そん時はよろしく頼んます!」
そう言ってヒノエは、ユファに頭を下げるのだった。
「え、えっと……。そ、ソフィ様?」
「うむ……。さっきも少しだけ事情は話したが、その辺も踏まえてリーネと色々と話をしようと思っていてな。もしかするとこのヒノエ殿も我の魔王軍に入る事になるやもしれぬ。すでにイリーガルやエイネ達にも伝えているが、決まった時はお主も色々とよろしく頼む」
「ソフィ様がそう言うのでしたら分かりました。それではヒノエさん、その時は改めて宜しくお願いしますね」
「ああ! それと私の事は呼び捨てでいいですし、敬語も要りませんよ」
「だったら、貴方も私に敬語は要らないわ。それに何だか分からないけど、貴方とは気が合いそう。何かあったら遠慮なく私に言って頂戴ね」
「恩に着る! エヴィ殿に対しても思った事だが、九大魔王の方々ってのは皆、気持ちが良くていい連中ばっかりだな! 最高の環境で働けそうで気合も入るってもんだぜ!」
そう言って豪快に笑い始めたヒノエだが、ユファはヒノエの口からエヴィの名が出てきた事に驚くのだった。
(これは驚いたわ……。もしかしてあの子と仲が良いのかしら……? 私たち『九大魔王』くらい付き合いが長ければ別だけど、会って直ぐであの子と親しくなれるなんて、ちょっと信じられないわね……)
エヴィの性格を深く知り、エヴィの自決を止めた事があるユファとしては、知り合ってすぐにエヴィが他者に心を許しているという事に驚いた様子であった。
そしてこの後、更にユファは耶王美という存在を知り、エヴィが耶王美に対して寄せる感情を知って、卒倒する程に驚く事になるのだが、それはまた別の話であった。
「ふむ。お主らが仲良くなれそうで我も嬉しく思うぞ。それでユファよ、お主もこのまま我らと共に来るか?」
「あ、いえ、申し訳ありません。実はあんまり長くは抜けられないんです。この後も直ぐに『レイズ』に戻って色々とやらなければいけない事がありますので……」
ソフィからの誘いに、心底申し訳なさそうにして謝るユファであった。
「そうか……。それでは仕方あるまい。そんな忙しい時だというのに、わざわざ我の為にすまなかったな」
ソフィがそう言うと、ユファは驚く程に慌て始める。
「な、何を仰いますか! こちらこそ本当に申し訳ありません。本来であればソフィ様を優先するべきなのですが、わ、私はシスの事だけは何とかしてあげたいんです。どうかお許しください、ソフィ様!!」
ソフィに謝罪をさせてしまった事に、ユファは相当に心苦しく感じたのだろう。
この場で地面に頭を擦りつけそうな勢いで頭を下げて、心からの謝罪を行うのだった。
そのユファの様子に、ヒノエと六阿狐も驚いて互いに顔を見合わせる始める。
どうやらこの両者もまた、ユファの中にソフィに対する覚悟が垣間見えたのだろう。二人もまた、感服したかのような表情を浮かべていた。
「そのような真似をせずとも良い。お主の事は良く分かっておる。また互いに落ち着いたらゆっくりと話をしようではないか。その時はシスも一緒にな」
「は、はい! 是非! それでは、私はこれで失礼します」
そう言ってユファはソフィに再度頭を下げた後、六阿狐とヒノエにも会釈をして、この場に来た時のように空を飛んで去って行くのだった。
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