2087.ユファとの再会
ラルグ魔国からソフィの『高等移動呪文』によって、一行は僅か数秒でセグンスの町近くに辿り着くのだった。
いきなり町の中の屋敷の前へ飛べば、道行く者達を驚かせてしまうと考えたソフィの配慮であった。
「い、今の一瞬でもう全くの別の場所ですか。分かってはいましたが、何度経験しても私は慣れそうにありませんね……」
そう言ったのは妖狐の六阿狐であったが、内心では隣に立つヒノエも同意だと考えていた。
「クックック、安心するがよい。今はそうでもいずれ慣れる。むしろお主程の『魔力』があれば、我達の世界の『理』さえ学べば、六阿狐自身も使えるようになっておるやもしれぬな」
「そ、そういうモノでしょうか……?」
「何に対しても言える事だが、最初から無理だと決めつけていては、出来る事も出来なくなる。やらなければ出来る筈がないのだから、試しにやってみようと考える気持ちを持つことこそが重要なのだ」
「な、なるほど……!」
「そ、ソフィ殿! わ、私にも出来ると思うか!?」
ソフィと六阿狐の話を聞いていたヒノエが、我慢出来ないとばかりにそう訊ねるのだった。
「うむ……。ヒノエ殿の場合は先に『魔力値』を高めるところから始めなければならぬがな。まぁそれでもこの世界や、我達の『アレルバレル』の世界には、お主らの世界にはない『精霊』の『理』がある。その『精霊』の『理』から生み出される魔法の中には、ヒノエ殿でも十分に使える魔法の数々が存在しておるからな。まずは簡単な『魔法』を覚えて毎日研鑽を続ける事で、少しずつ『魔力値』を伸ばせる筈だ。後はヒノエ殿の根気次第だな」
「そ、そうか……! 私もこの世界で頑張れば、いずれは使えるかもしれないのか……! 私は頑張るぜ、ソフィ殿!」
「うむ、何でも興味を持つ事は大事だ。お主にそのつもりがあるのなら、我も協力を……ん?」
ヒノエの頑張ろうとする気持ちに満足したようで、ソフィが研鑽に協力すると言いかけたが、そこで見知った魔力が遠くから感じられた事で、視線を空へと向け始めるのだった。
「気を付けて下さい! 何かがここに来ます……!」
「ああ! ソフィ殿、早く私の後ろにっ!」
ソフィが気付いた直後、直ぐに六阿狐やヒノエもここにやってくる気配を感じ取ったのだろう。
六阿狐はオーラを纏い始めて、ヒノエも刀に手をやり始めるのだった。
しかしヒノエがそう言った矢先、逆にソフィは前に出始めるのだった。
「ソフィ殿!?」
「ソフィさん!?」
まさか下がるどころか前へ向かいだしたソフィに、ヒノエ達は驚きの声を上げるのだった。
「心配せずともこの『魔力』の持ち主は、我がよく知る者のモノだ」
ソフィがそう言った直後、セグンスの町の前に居るソフィ達の元に、察知した『魔力』の持ち主が到着するのだった。
「ふむ、やはりお主だったか……!」
そう言ってソフィが笑みを浮かべながら視線を向けた先には、九大魔王である『ユファ』が姿を見せるのであった。
「お帰りなさい、ソフィ様! レイズ魔国の王事の諸事情に中々抜け出す事が出来ず、レルバノンからソフィ様の帰還の連絡を受けていたにも拘らず、ここまで姿を見せるのが遅くなってしまった事をどうかお許しください!」
突然に現れてソフィに謝罪する女性を見て、戦闘態勢に入っていた六阿狐とヒノエは、呆然とその姿を眺め続けるのだった。
「何を言うか、ユファよ。今のお主の立場の事を我もよく理解しておる。忙しい中だというのに『念話』ではなく、こうして合間を縫ってわざわざ会いに来てくれただけで我は非常に嬉しく思っている。だからそんな風に謝らなくて良いから頭を上げるのだ」
ここに飛んできてからずっと地面に跪いて謝罪を行う姿を見せていたユファは、そのソフィの言葉にようやく顔を上げてソフィを見るのだった。
「ありがとうございます。本当は私だけではなく、シス……の中に居る彼も一緒に来たがっていたのですが、何分今の時期はシスも立場的にも忙しく、直ぐには抜けられそうになさそうでしたので、一足早く私だけ来させて頂きました」
「そうであったか。うむ、確かに今の時期は『ラルグ』でも例年忙しい時期だったからな。特にこの時期はミールガルド大陸の王族達との懇親会などもあったように記憶しておる」
「はい、その通りです。確かうちより先にラルグ魔国の方でも、ケビン王国から色々と重要な話が有ったように思いますので、今回はいつも以上に王事に関して忙しくなりそうなんですよね……」
いつもは元気いっぱいといった表情を浮かべている彼女だが、今は幾分やつれた様子で目の下に隈も作っている程であった。
(そう言えばレルバノンからも、色々と我に話があると言っていたな。どうやらレイズも絡んでいるとなると、相当に今回は大きな話なのかもしれぬな……)
「ところでソフィ様、そちらの方々は一体……?」
ユファの視線がようやくソフィの後ろの二人に向けられた事で、ソフィはこれまでの事情と、これからの事情を彼女にも説明し始めるのだった。
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