2083.温かい目
ソフィがレルバノンとの『念話』を切ると、直ぐに対話が終わったのだろうと察した面々がソフィと顔を合わせ始めるのだった。
「待たせたな。無事に話はついた。それでこれからお主らを城へ案内しようと思うが構わぬだろうか?」
ソフィの『念話』が終わるのを待っていた面々は、その言葉に一人を除いた全員が頷きを見せたのだった。
「そ、ソフィ殿! で、出来れば私はアンタの屋敷の方に行きたいんだが……!」
そう言葉にしたのは、事前にリーネと会わせて欲しいと口にしていた『ヒノエ』であった。
「ソフィさん! 私も主から片時もソフィさんと離れるなと命令されております故、私もこの人間と一緒にソフィさんの屋敷に連れて行って頂いて宜しいでしょうか!」
ヒノエがソフィの屋敷に行きたいと口にすると、直ぐに六阿狐もそう口にするのだった。
六阿狐もこの世界に来る前に『リーネ』と『ソフィ』の味方だと口にしていた為、ヒノエが屋敷に向かうと聞いて、彼女も行動を共にしようと考えた様子であった。
「お待ち下さい、それでは私もお供させて頂きます。私はソフィ様の配下ですので」
「それなら俺もだ。親分を守るために俺もこの世界にきたんだ。他の連中がソフィの親分の元へ行くというのであれば、俺もついて行く」
「だ、だったらあたしも! それに六阿狐ちゃんともっと話がしたいし!」
「ぼ、僕もエイネさんと一緒に居たいのですが……」
いつの間にかこの場に居る大半の者達が、ソフィと一緒に行きたいと口にし始めるのだった。
「はぁ……。君達は本当に空気が読めないんだな? ソフィ様は久しぶりに奥方様に会うんだよ? それを邪魔して悪いとは思わないの?」
そう口にしたのは、これまで成り行きを静かに見守っていた九大魔王の『エヴィ』であった。
そしてエヴィの発言について行きたいと口にしていた面々が、ハッとした表情を浮かべるのだった。
「クックック……! すまぬな、もうレルバノンに話を通してしまった手前、全員を屋敷に連れて行くわけにもいかぬな。ではそうだな……、元々リーネと会わせる約束があったヒノエ殿と、王琳から命令を受けている六阿狐の二人だけは我と共に来てくれるか?」
「あ、ああ! 恩に着る!」
「は、はい! ありがとうございます」
ヒノエと六阿狐は同時に嬉しそうに感謝の言葉を口にして、ソフィと共に行きたいと口にしていた他の面々は、渋々と納得した様子を見せるのだった。
…………
「貴方の言葉で話が綺麗に纏まったわ。本当にお手柄だったわね」
そう言って耶王美は自分の大事な同志にして、愛するエヴィの頭を撫で始める。
「まぁ……、本音では僕もソフィ様と一緒に行きたかったけどね。でもソフィ様が本当に会いたいのは奥方様なんだと思うしさ」
「それは確かにそうでしょうね。でも私は一度ヒノエと本気で話し合った事があるから、あの子にも少し感情移入してしまっているのよね。あの子は相当の覚悟を持ってソフィ殿の事を想っているわよ」
「それは僕も理解してる。君には言ってなかったけど、僕も一度ソフィ様の部屋に行こうとした時に、あの子が部屋でソフィ様と話をしている声が聞こえちゃってね。内容に関しては流石に君が相手でも勝手には言えない事だけど、ちょっとだけ僕も後になって問い詰めてしまったんだ。でもあの子は僕の辛辣な言葉にも少しもめげずに、ソフィ様の事を想っていると分かるような言葉を口にして見せたんだ。あれは相当な覚悟を持っていると僕も思ったね」
「そうだったのね……。でもエヴィ? もうあの子にイジワルはしないであげてね。さっきも言ったけど、あの子は報われるかどうかも分からないのに、本気でソフィ殿の事を想って全てを捨ててこの世界に来ている。その覚悟は本当に大したものだと思うから」
エヴィの頭を撫でていた耶王美だが、今だけはその目が真剣なものに変わっていた。
「うん、分かっているさ。だから僕も最後はあの子に、君の仲間でいてあげるよって伝えておいたよ」
「……そう。じゃあ、あの子が戻ってきたとき、どんな結果だったとしても、一緒に優しく出迎えて上げましょうね」
「そうだね」
イリーガルやリーシャ達が、ソフィと一緒に行けない事に残念そうにしながら言葉を交わしている横で、耶王美とエヴィの両者は、ヒノエの事をいつまでも温かい目で見つめていたのだった。
……
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