表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2100/2213

2082.空気の読めるレルバノン

『次元の狭間』に現れた新たな魔神から子供の姿に変えられて、更には力を制限される『魔』の技法を受けているというのに、張本人であるソフィは自ら力を抑えている状態であった為に、これまでの『リラリオ』の世界で制限されている事にすら気づいていなかったのだった。


 その事に気づかせてくれた『神斗』や『シギン』という『魔』の概念理解者に、半ば呆れられる結果となったソフィだったが、結果としてイリーガルやリーシャといった配下の意欲を高める事に繋がるのであった。


「それでは我らも発つとするか。ひとまずお主らもゆっくりとしたいところであろう。我の屋敷に案内しても良いのだが、さてどうしたものかな」


 この世界にはすでに前回の『概念跳躍(アルム・ノーティア)』によって、この場に居る『九大魔王』以外の面々も『リラリオ』の世界に辿り着いている。


 しかし全員が一緒に居るというわけではなく、ブラストはセグンスにあるソフィの屋敷に住んでおり、ディアトロスはラルグ魔国王であるレルバノンの相談役として現在は、ラルグ魔国に席を置いている。


 そしてユファはソフィの屋敷に居る時もあるが、大半はシスの居るレイズ魔国で生活をしているのだった。


 更に九大魔王ではないが、ソフィの配下である『ラルフ』もまた、現在はソフィの屋敷を離れていて、サイヨウの元でリディアと共に修行に明け暮れている筈であった。


 もちろんこのままここに居る全員をソフィの屋敷に住まわせる事は可能なのだが、急にこれだけ大人数を連れて行ってしまえば、リーネを困らせてしまうとソフィは考えたのだった。


「ふむ、当面の生活を考えれば、やはりラルグ魔国の方が何かと都合が良いだろうな。やはりもう少しだけ待ってくれるか? 今から『念話(テレパシー)』を用いてお主らの面倒を見てくれそうな人物と話をしたいのでな」


「もちろん構わない。本当に面倒を掛けてすまぬな、ソフィ殿……」


 無理を言ってこの世界へと連れて来てもらったという事を気にしているようで、シギンはソフィに改めて謝罪を行うのだった。


 元々『アレルバレル』の世界に居た者達はヌーの都合というのが前提にあるが、シギンや神斗といった元々ノックスの世界に居た者達の多くが、自分達の都合でこの場所に足を運んでいる。


 結果的にソフィに負担を掛けてしまっているという事を考えて、ヒノエ達もシギンの謝罪を聞いて申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「いやいや、全く構わぬよ。少し説明が必要だと言うだけの話だ。我もお主らの事を非常に気に入っているのでな、この世界で我の知り合いとも仲良くしてもらえると何よりと考えておるのだ」


 申し訳なさそうに顔を伏せていたヒノエ達は、そのソフィの言葉に温かいモノを感じて、改めて嬉しそうな笑みを浮かべるのだった。


「では少し『念話』に意識を向けるのでな、しばらく待っていてくれ」


「分かりました!」


「分かった。ソフィ殿がその『念話』に意識を向けている間、私らがソフィ殿をしっかりと守ってみせるから安心してくれよ!」


 ソフィの言葉に、そう言って直ぐに返事をした六阿狐とヒノエであった。


 …………


(聞こえるか、レルバノンよ)


 ソフィは過去に『レルバノン』と『念話(テレパシー)』を介して話をした事もある為、波長の問題はないと分かっているが、それでも久しぶりの『念話(テレパシー)』での対話である為に、確かめる様子を見せながら『念話』を飛ばすのだった。


(! この声は……! お戻りになられたのですか! い、今何処にっ!?)


 どうやらソフィの考えていた通り、レルバノンはソフィと『念話(テレパシー)』が直ぐに行えるように波長を合わせていたようであり、ほとんど間を置かずに返事が来るのだった。


(今戻って来たばかりだ。無事にエヴィと合流が出来たのだが、出発時よりも少し多くの者達を連れて帰ってきてしまってな、無理を言ってすまぬのだが、出来ればお主の城で面倒を見てもらえぬだろうか……)


(なるほど、そういう事でしたか。分かりました、人数を先に教えて頂ければ直ぐに部屋の手配をしておきます)


(急に無理を言ってしまって、本当にすまぬな)


(何を仰いますやら。貴方はこの国の前王なのですよ? 直接ここに連れて来て頂いても何も問題はありませんでしたのに、本当に貴方のお気遣いには、感謝の言葉もありませんね)


(クックック、流石にそのような失礼な真似が出来る筈もなかろう。お主も元気そうな声で安心したぞ)


(ありがとうございます。それと貴方の耳に入れておきたい事が二、三あるのですが、こちらへ来て頂いた時に少しお時間を頂けますでしょうか?)


(ふむ……? 分かった。では部屋の準備が出来たらまた我に『念話』を貰えるか? 準備が整うまで少し、我も屋敷に戻って家族に挨拶をしておきたいのだが……)


(……では、先にお連れの方々を城に連れてきて頂けませんか? 私も部屋を手配する前にお連れの方々と会ってご挨拶をさせて頂きたく思いますので)


 最後のレルバノンの返事は、まるで行間を読んだかの如く、少しだけ間を置いたものだった。


 どうやらレルバノンは、ソフィが久方ぶりにこの世界に戻ってきたのだから、当然に愛する者との時間が欲しいのだろうと察した様子でそう提案してくれたのだろう。


(そうか……、それではこれから城へ向かうとしよう、しかし本当に構わぬのか?)


 当然にソフィもレルバノンが空気を読んで、ソフィを慮って告げてくれたのだと気づいていた為、王として忙しい身だというのに、急な予定を入れても構わないのかと暗に尋ねたのであった。


(ふふっ、もちろん構いませんよ。それに貴方に紹介して頂いたディアトロス殿のおかげで、正直言って私もやる事が少なくなり、有り体に言えば暇で困っていたところなのですよ)


 そう言って笑い始めたレルバノンに、それ以上はソフィも何も言わずに提案を受け入れるのだった。


(すまぬな、それでは言葉に甘えるとしよう。では直ぐに『高等移動呪文(アポイント)』で移動を行うが、構わぬか?)


(ええ、それではお待ちしておりますよ)


(うむ、ではよろしく頼む)


 最後に城へ向かう者達の人数を伝え終えた後、ソフィは満足そうに『念話(テレパシー)』を切るのだった。

『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ