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2081.力の制限

※加筆修正を行いました。

「そ、その……! ソフィさんは今の子供の姿に変えられていても、普段通りに『()』を出せるのですか?」


 意を決した様子で質問を行った六阿狐に、ソフィは直ぐに頷きを返した。


「それは問題ない。これまでもこの世界ではこの姿にされていたが、あのヌーと戦った時もこの姿のままであったし、他の多くの者達との戦いでも子供の姿のまま問題なく『力』を使えていたからな」


「そ、そうですか……! よ、良かった……!」


 心底ホッとした様子を見せる六阿狐に、ソフィは王琳の命令を考えて慮ってくれたのだろうと解釈する。


 しかし実際には六阿狐は主の命令に関係なく、ソフィの身を第一に考えて安堵していたのではあるが、正しくソフィには伝わらなかった様子であった。


「いや、それはどうだろうな」


「む?」


 安堵する六阿狐やヒノエを尻目に、疑問を抱いている様子のシギンが口を開くと、直ぐにソフィは反応を見せるのだった。


「完全に『力』を抑えられているというわけではなさそうだが、こうして見ていてもソフィ殿の内包する『魔力』が、いつもより小さいように感じられるのだ」


「そうだね、()()()()()殿()の『力』を抑えている状態であっても()()()()()()()()()()()()()。その姿に変えられた事で、実は相当の影響を受けているだろうね」


「ああ。これまでソフィ殿がその事に気づかなかったのは、開放した時の『力』が大きくなりすぎて、制限されている事に気づかなかっただけなのではないだろうか」


 つまりシギンと神斗は実際にソフィが子供の姿にされた事で、普段通りの『力』が出せない程の制限を受ける事となったが、これまでこの世界でその制限された『力』だけで圧倒出来てしまい、本人には何も影響がないと判断してしまったのではないかと言いたかったようである。


「ま、待ってくれよ! それじゃ何か? コイツは今の弱らされた状態であのヌーの野郎を相手にして、ボコボコにしちまったって事かよ!?」


 シギンやソフィ達の話を近くで聞かされていたイツキは、自分ではまだ勝てないと考えている大魔王ヌーが、力を抑えられて弱体化状態にあるソフィにさえ、勝てずに敗北を喫したのだと理解してしまい、驚きの声をつい抑えられずに口にしてしまうのだった。


「まぁ、そういう事だろう。だが、イツキ殿? お主も我々の生きてきた世界で『ソフィ』殿が力を開放した時の姿を見てきた筈だ。そうであれば、ソフィ殿が普段どれ程までに力を抑えて戦っているかぐらいは容易に想像がつくのではないか? いくらソフィ殿が他者から『力』を制限されていたのだとしても、元々半分くらいしか『力』を出していないソフィ殿にとっては、制限されようがされていまいが、何の影響もないと考えてしまう事は、至極当然な事なのだと私には考えられるのだが」


「そうだね。きっと黒羽殿は我々が思っている以上に、普段から力を抑えて生きてきたのだろう。それは王琳との戦いを通しても簡単に想像がつくよね。何度も言うようだけどさ、きっと僕達が思う想像より、遥かに黒羽殿は『力』を持て余して生きてきたんじゃないかな? それはとても残酷に思える程の年月をね……」


 妖魔神として長く生きてきた神斗だからこそ、戦いたくとも本気で戦う事が出来ずに数千年、もしくはそれ以上の年月を生きてきたソフィの苦しさが伝わり、残酷という言葉を用いてソフィの気持ちを代弁するようにそう告げたのだった。


 大魔王エヴィはそんな神斗の言葉を耳にしながら、改めて自分の主の抱く苦悩を考えて、辛い表情を浮かべたのだった。


 もちろんそんなエヴィの隣に居た耶王美もまた、彼と同じ気持ちを抱いていた同志であり、誰よりも早くエヴィが今考えている事を悟り、彼の頭を静かに撫で始めるのだった。


 そしてこれまで黙って話を聞いていたソフィが、静かに口を開き始める。


「まぁ……、確かに神斗殿達の言葉に対して否定は出来ぬ。シギン殿の言う通り、少し前に戦った王琳との一戦でさえ、我はまだ全力を出せたわけではなかったからな。この世界でも数々の猛者たちと戦ってはきたが、制限された力の上限まで開放したわけではないから、一体どれくらいの『力』の制限を受けているかの見当すらつかぬ」


 そう口にするソフィだが、これまで実際に制限されているのかどうかすら曖昧だったのだ。確かに要所要所で少しだけ普段通りではないような違和感は感じていたソフィだったが、戦闘に関しては何も影響がないと言える程であった為に気にもしていなかったのである。


 ここにきてようやく、シギンや神斗といった『次元の狭間』の中でも、平然と意識を保っていられる程の『魔』の概念理解度が深い者達に指摘された事で、確かにその通りかもしれないと結論に至るソフィなのだった。


「はぁ……。全くとんでもない話だぜ。アンタと戦った時に殺されなくて良かった」


 そう言って苦笑いを浮かべるイツキであった。


「うむ、流石は親分だ! 俺も改めて強くならねぇとって意欲が増しましたよ!」


「ええ、その通りね。流石はソフィ様」


「当然よねっ! あたしらを束ねられるのはソフィ様だけなんだもの!」


 そして九大魔王の面々達も、今の話に鼻高々と言った様子で口々にソフィを称え始めるのだった。

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