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2050.魔王城の玉座の間にて

 明日一番の朝に『リラリオ』の世界へ向かう事に決まったソフィ達だが、今日一日はアレルバレルの『魔界』の中央大陸にあるソフィの魔王城で過ごす事となった。


 久しぶりの自分の城の自室で寛ぐソフィだったが、ふいに『マリス』達が攻め込んで来た日の事を思い出し、彼は気が付けば玉座の間に足を踏み入れているのだった。


「ここはあの時のままなのだな……」


 ここで大魔王ソフィは勇者マリスとその一行達と戦い、彼らの持つ『転置宝玉』によって、ソフィは『リラリオ』の世界へと跳躍()ばされたのである。


 この場所で勇者たちと戦いが行われたのだが、部屋の中はとても一戦があったとは思えない程の綺麗さを保っていた。


 別にソフィ達が居なくなった後に、魔王軍の者達がこの部屋を掃除したというわけではなく、勇者との戦いの中でソフィは部屋を汚させる事もなく勝利を収めたという意味であった。


 あの一戦の中でソフィは『勇者パーティ』の勇者マリス以外にも、戦士や賢者達とも戦ったわけだが、その全員を一挙に相手をしたソフィは、片腕で近接戦闘者である勇者マリスや戦士達の攻撃を防ぎ、賢者『リルトマーカ』の魔法攻撃を見事に完全相殺して完封しきってみせて、長時間戦いに付き合った挙句、この部屋に傷跡一つ残す真似をしなかったのである。


 当然ソフィは王琳やシゲンと戦った時のような『力』の開放は行っておらず、それどころかエルシス戦や魔神戦の時のような戦力値コントロールすら行わずに、ただの通常状態で戦った上にむしろ『力』をギリギリと呼べる最小限にまで落として、マリス達一行を殺さないようにと立ち回ったぐらいであった。


 あの時のソフィの強さは、リラリオの世界で戦ったキーリやレアはおろか、リディアやラルフと戦った時よりも遥かに弱い状態であっただろう。ソフィが第二形態にすらなっていないのだから、当然と言えば当然ではあるのだが、それでもこの『アレルバレル』の世界で戦った勇者たちの中では、マリスが随一と呼べる程であったことはまた覆しようのない事実でもあった。


 ――しかしそれも仕方のない事ではある。


 勇者マリスは自前の勇者の剣技の他に、精霊族の『(ことわり)』を用いた四大元素の『魔』の概念技法を自在に扱う事を可能としていた為に、研鑽を続けていれば魔法の分野でも『超越魔法』までを会得可能であった。


 しかしたとえマリスが『精霊族』の『(ことわり)』から四大元素の『超越魔法』全てを会得していたとしても、この『魔界』に居る魔族達。更にその中でもソフィは『精霊族』の『(ことわり)』よりも更に性能が優れている『エルシス』の『(ことわり)』を用いる事で、マリスの『超越魔法』を上回る『神域魔法』、更にはその更に上の『魔神域魔法(まじんいきまほう)』までもを扱う事を可能としているのである。


『魔力』そのモノの桁が違う上に、扱う『(ことわり)』にも差がある以上は、勇者『マリス』が大魔王『ソフィ』に勝てる道理はないという話であった。


 もし、古の時代に大賢者『エルシス』が、当時の『人間界』の国を治めていた王に命令されず、そのまま『人間界』で後続の為に尽力して『(ことわり)』を人間達だけに教え継いでいっていたならば、もしかすると現代では、魔力そのものが遥かに高まっている人間達に、精霊族の叡智が授けられた『勇者』が存在し始めて、今頃はもう少し『魔界』と『人間界』の均衡が崩れていた可能性があったかもしれない。


 大魔王ソフィは無理でも、過去に存在を示した『ロンダギルア』ぐらいの大魔王達であれば、十分に渡り合えたかもしれなかった。


 そんな『もしも』の話をしたところで今更どうしようもないが、現実的に『勇者』という役が退廃的になっている以上は、どこかで『人間界』にも変革を齎さなければいけない局面にきているのかもしれない。


『ミューテリア』が『人間界』に渡り、今の状況を全て説明したいと話していた事を思い出したソフィは、今後『勇者』という役割を担う人間の若者たちが出なくなってしまう事を慮り、その時に『人間界』に与える影響を考えて玉座の上で一人悩むのだった。


(たとえ実際に『勇者』が大したことがないのだとしても、その『勇者』という概念に希望を持つ人間達が大勢居る事は確かなのだ。今『人間界』は煌聖の教団の総帥であった大賢者『ミラ』を失っている状態にある。その上で『勇者』すらも今後現れなくなったと知った時、人間の民達は更なる絶望に打ちひしがれてしまうだろう……)


 当然ソフィも『ミューテリア』の心情は理解が出来るが、今ここで『勇者』という概念を葬り去るわけにもいかないのだと考えを続けるソフィであった。


「また何か一人で悩んでいるようだが、この世界にはアンタの相談に乗ってくれる参謀みたいな連中は居ないのか?」


 ――ソフィしか居ない筈の広い玉座の間に、突如として別の誰かの声が響くのであった。

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