2048.多種多様の反応
「ソフィ様……。いったいあちらの世界で何があったのですか? 私の知る『最恐』とは全く異なる魔王に思えたのですが……」
ヌーが部屋を去って直ぐにソフィの元に駆け寄ってきたエイネは、驚きを隠しきれないといった様子でソフィに訊ねるのだった。
「クックックッ! 色々とあったのだ。色々とな……!」
ソフィはそう言って、少し前まで居た『ノックス』でのヌーとのやり取りの数々を思い耽るのだった。
奴と行動を共にした過去を思い返せば、ケイノトの町でテアに食事をさせた事から始まり、色々と想像にあったヌーの暴君っぷりとあまりに掛け離れたその姿。そして認めた者に対しては相当に情に厚くなり、強くなる為には努力を惜しまぬその姿勢。
特にソフィにとって『最恐』の大魔王が完全に成長を遂げたのだと理解したのは、王琳戦の最後の最後、ソフィが七割の力を開放した後に放った『絶殲』を消そうとした際、他の者達であれば迫りくる殺傷能力の塊といえる『殲滅魔法』に竦み上がるであろうところをヌーは難なく『時魔法』を用いて次元の彼方へと追いやってみせた時であった。
大魔王ヌーは粗暴っぷりが目立つ魔族だが、根は真面目でこれ以上なく『正直者』なのだ。
その『正直』さがこれまで自分中心に向けられてきた結果が、アレルバレルの魔界で多くの者達が持つ印象なのだが、実際に今回のように彼と共に行動をして、大魔王ヌーという魔族をしっかりと知ろうとすれば、少しはその印象は変えられる事は間違いないだろう。
ただ、それが簡単な事ではないのも確かであり、別にソフィは万人に彼の本当の姿を知って欲しいとは考えてはいない。
当然ヌーの自身もそんな事は望んでいないであろうし、ソフィとヌーが今後これまでとは違った付き合い方を行えば、ここに居る者達も自ずと知っていく事になるだろう。
だからソフィは『色々あった』と、簡潔に一言でエイネに説明するのみであった。
「そ、そうですか……」
満足そうな顔をするソフィにエイネは、もう少し深堀りして頂きたいのですがと胸中で呟きながらも、渋々と納得するのであった。
「それより親分、もう少しだけこの者達の紹介をしてもらえませんか? 会議の中での簡素な説明だけでは分からない点も多かったモノで……」
「あ、私も色々と聞きたかったんです! 人間達は別にいいんですけどぉ、この方……、耳が長いし、ど、動物っぽい、この子が凄い気になっているんです……!」
エイネと話をしていたソフィは、イリーガルとリーシャに『六阿狐』や『ヒノエ』達の紹介を求められるのだった。
「ふむ、本当ならばここでは軽い紹介を行い、改めて『リラリオ』の世界についてから、全員が揃ってから紹介を行おうと思っていたのだが、お主らに先に話しておくとしようか」
そう言ってソフィは『六阿狐』達の紹介から、妖魔召士や妖魔退魔師、そして煌鴟梟の事や『代替身体』となっている男の正体が『煌聖の教団』の『セルバス』であった事や、間違いがあってはならないとばかりにこの今の『セルバス』がもう『煌聖の教団』ではなく、ソフィの配下となった事をしっかりと伝える。そして最後に妖魔山での激闘の末にようやくエヴィと再会を果たした事など、ノックスの世界であった出来事を懇切丁寧に説明したのであった。
…………
流石にソフィから説明される話を聞いていた全員が、ノックスの世界での出来事のあまりの濃さ故に絶句していた。
「ソフィ様……、聞いておいて申し訳ないのですが、ハッキリと言って色々あったの一言では、絶対に済ませられないと思うのですが……」
ソフィの言葉を聞いて最初に口を開いたのは『九大魔王』のエイネであった。
「ソフィの親分がかつてない力を開放されて、魔神殿の『結界』を粉々に出来る程の『絶殲』を放っただと……!」
「あ、アンタ、あたしが跡形もなく消滅させちゃった、煌聖の教団の幹部だった奴だったのねぇ……?」
常識的な驚き方をしているエイネとは異なり、彼女と同じ『九大魔王』のイリーガルは、ソフィが別世界で自分ですらまだ見た事がない『七割』の力をソフィが開放して、見た事のない相手と真っ向から戦い決着を付けたという事を聞いて悔しそうにして、そしてリーシャはリーシャで、筋肉隆々な姿なのは変わらないが、顔が全く違う代替身体の『セルバス』に話し掛ける始末だった。
ソフィから同じ話を聞いていた筈だというのに、まさに多種多様の反応を見せる『九大魔王』達であった。
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