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2041.発想の転換と、これからへの期待

今回で長かった11章も完結となります。ここまでご覧頂きありがとうございました! 12章もよろしくお願いします。

 ソフィがヌー達と話をしていると、エヴィが『高等移動呪文(アポイント)』を用いて耶王美と共に戻って来るのだった。


「お待たせしました、ソフィ様!」


「遅くなってしまい、申し訳ありませんわ」


 戻って来るなり、開口一番にソフィに謝罪を行うエヴィ達であった。


「何も謝る事はないぞ。それより王琳としっかりと別れの挨拶は出来たのだろうか」


 視線を向けられた耶王美は、直ぐに首を縦に振る。


「ええ、実を言うと少し前に私は王琳様と別れの挨拶は済ませていたのですが、今回改めて王琳様には送り出して頂きました。それと王琳様からソフィ殿に伝言がありまして『今度会う時は本気にさせてやるから、楽しみにしておいてくれ』……だそうですわ」


「クックックッ! 直接言えばいいものを……。あやつめ」


 そう告げるソフィだが、王琳の事をよく知る今の彼にとっては、王琳の言葉は相当に嬉しいものであったらしく、隠し切れない笑みを浮かべていたのだった。


 実際にソフィは王琳との決着の時、死の寸前だった王琳から謝罪を受けた事を覚えている。


 その王琳が行った謝罪の意味とは、ソフィの力を最後まで開放させられなかった事にあるが、死が迫る極限の状態で自分ではなく、他人を慮る事が如何に難しいか。


 当然にソフィの抱く願望の根深さというものを知っている王琳だからこそ、あの場面で咄嗟ではなく本心から言葉を伝えられたわけなのだが、伝えられたソフィはその事を踏まえた上で、王琳の事を相当に気に入っているのであった。


「楽しみにしておいてくれ……か」


 今回王琳はソフィに明確な強さの『差』というモノを分からされた。これまでソフィと戦ってきた大半の者達は、直にソフィの強さを理解すれば、それ以降は関わらないようにと考えて離れて行ったり、逆にソフィの軍門に下ろうと魔王軍に入ろうとする者達が多かった。


 一度圧倒的な衝撃というモノを受けた者は、どのような事であろうとその印象を払拭する事は容易ではなく、さらに今回に限って言えば、王琳は痛い思いどころか、転生すら行えずにそのまま命すらも失いかけたのである。


 そうだというのに、今後もソフィと関わるどころか『楽しみにしておいてくれ』と告げたというのだから、これがソフィにとってどれだけ嬉しい事なのかは一目瞭然であった。


(我は世界を渡るたびに、その世界に居る者達に期待と興味を抱かされておる。決して煌聖の教団の者達のおかげとは口が裂けても言えぬが、それでも知見を広めるという観点から省みれば、アレルバレルの世界に居た頃よりは良い経験をしているのだろうな……)


 煌聖の教団の大賢者に唆された勇者マリス達によって、ソフィ自身が『リラリオ』の世界へ送られて、そして彼の配下の『九大魔王』は煌聖の教団の幹部達に別世界に送られてしまった。その所為で今も大事な仲間達と離れる事となってしまったが、ただ悲観しているだけではなく、これまでならば決して経験が出来ないでいた事を新たに知る事が出来る機会に恵まれたのだと、今回発想を少しだけ切り替えるに至ったソフィであった。


「クックックッ。それでは再びこの世界に戻って来る時を楽しみに、今は次の向かうべき場所へと新たに足を踏み出しに行くとしようか」


 リラリオの世界に居た頃よりも背が高くなった事で、見える視界が少しだけ変わったソフィは、嬉しそうに笑みを浮かべながら、いつもの笑い声を上げてそう告げるのだった。


 そしてそのソフィの笑い声を聞いていたヌーは、一度この場に居る者達を見渡した後、ソフィに声を掛けるのだった。


「じゃあ、そろそろいいな? まずはお前とエヴィ達を一度アレルバレルの世界へ送り、フルーフの野郎に無事に上手く行った事を伝えた後、再びお前らをリラリオの世界へ送る。別にアイツと話をするのは構わねぇが、決着を付ける時には離れてもらう。それでいいな?」


「うむ。その辺の事も含めて、我もあやつとは一度話をしておきたいと考えていた。お主の言う通りにしよう」


「分かった。それじゃ俺達は元の世界へ戻る。てめぇらの協力があったからこそ、俺達は今回上手く行ったのは認めてやる。世話になったな」


 何とヌーはソフィ達を元の世界へ戻す寸前に、そんな言葉をこの場に集まった者達に告げるのだった。


 一言くらいは何かあるかもしれないと考えていたソフィだったが、まさかヌーが感謝の言葉を最後にこの場に居る者達に対して口にするとは思わなかった。


「それはこちらも同じです。貴方がたが来てくれたからこそ、我々の未来は良い方向に向かう事が出来ました。感謝致します」


「ミスズの言う通りだ。ソフィ殿、ヌー殿。お主らが来てくれた事を非常に有難く思うと共に感謝をする」


 妖魔退魔師の総長、副総長はそう言ってソフィとヌー達に頭を下げて感謝の言葉を口にするのだった。


「今度もし来る事が出来た暁には、良い方向へと歩んだ我々の結果を是非ソフィ殿達には見届けてもらいたく思う。本当にありがとう。ソフィ殿。最後に師に小生は元気にしていると伝えて欲しい」


 そう言ってエイジもまた、ソフィに頭を下げて別れの挨拶を口にすると、隣に居たゲンロクも声を掛けてくる。


「次にソフィ殿達が来る頃には、ワシはもう完全に引退しておるじゃろうが、是非その時にはワシの畑を見せたいものじゃ。来る時は忘れずにワシの里にも足を運んでくれよ?」


 ゲンロクは冗談交じりにソフィにそう告げるのだった。


「うむ。もちろんだ。お主らと出会えて本当に良かった。それでは我達は元の世界へ帰るが、達者でな」


 ソフィの最後の言葉にスオウは涙ぐみ、他の者達も感謝を示すかの如く頭を下げるのだった。


「それじゃ、行くぞ」


「ああ」


 ――神域『時』魔法、『概念跳躍(アルム・ノーティア)』。 


 ソフィは最後に『ノックス』の世界の者達の姿を目に焼き付けるように見渡した後、ヌーの魔法の光に包まれながら一行はその場から姿を消すのだった――。


 無事にエヴィと再会を果たし、この世界の妖魔と人間達の争いに終止符を打ったソフィ達は、再び『アレルバレル』の世界へと戻るのであった。


 第11章 完。

ノックスの世界の親しき者達との別れ。そして再び舞台は故郷の世界へと変わります。

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