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2022.待っていた言葉

 この世界から一時的に離れるという神斗の衝撃的な言葉に、相当に驚いた様子を見せた妖魔退魔師の面々だったが、あくまで神斗は王琳との約定のオマケのようなものであった為、懸念に思うところはあれど、渋々ながらも最後は各々が納得をしたようだった。


 そんな中、この場に居たイツキは少しだけ動揺した様子を見せながら、神斗とヌーに視線を送り始めるのだった。


「何だよ? てめぇは何をそんなに慌てていやがる?」


 ヌーは自分に向けられたイツキ視線に気づくと、片眉を上げながら直ぐに声を掛けるのだった。


「お前、ソイツを一緒に連れて行くつもりなのかよ?」


 イツキは神斗を一瞥しながらヌーに訊ねるのだった。


「あ? ああ、まぁな……。仕方なくっつーか、成り行きって奴だ」


 何処か釈然としない素振りを見せながらも、否定をしないところを見ると、本当に神斗を連れて行くつもりのようであった。


 ここに来る少し前に、同じように自分も連れて行って欲しいという旨をソフィに伝えたばかりであり、イツキはこのままここで何も言わなければ、自分だけ置いて行かれてしまうとばかりに焦る素振りを見せ始めるのだった。


「た、頼みがあるんだがよ、俺もお前らの世界に一緒に連れて行ってくれないか……?」


「……ふんっ、ようやく切り出しやがったか。別に構わねぇ、連れて行ってやる。だがよ、本当に行きたいと考えていやがったんなら、もっと早く言いやがれ。そいつがソフィ相手に腕試しをすると言い出さなかったなら、もうとっくの昔にこの世界から俺たちは居なくなっていたところだぞ」


「え……!? あ、ああ……、そ、そりゃすまねぇ、し、しかし本当にいいのかよ?」


 イツキはヌーがあまりにも呆気なく自分を連れて行ってくれると口にしてくれた事で、どう反応していいのか分からなくなってしまったようである。


「クックック! だから言ったであろう? こやつはお主が言い出すのをずっと待っておったのだ。何度か妖魔山でお主にちょっかいを掛けておっただろう? あれはこやつなりにお主の事を気にかけておった証拠だろう。本当に興味のない者に対しては、こやつは信じらぬ程に冷やかな態度を取るのだ。最初から居ない者として扱ったりしてな」


 横で聞いていたソフィは、特務の訓練場でイツキに告げた事を少しだけ言葉を変えて、この場で諭すように口にするのであった。


「お前も勝手な妄想膨らませて馬鹿な事言ってんじゃねぇよ。こいつはまだどこかで俺を侮るような発言を繰り返しやがるから、そろそろ身近なところで身の程を思い知らせてやろうと思っただけだ。本来はてめぇ如きが俺様に口を利く事すら烏滸(おこ)がましいんだ。これからそういった事も含めて色々とてめぇに理解させてやるからよ、覚悟しておけや!」


 いつものような喧嘩腰と態度でイツキに接しているヌーだが、本当に気に入らなければ、わざわざ連れて行くとはこの大魔王が言う筈がないのである。


 ようやくソフィがあの時に言っていた言葉を理解出来たイツキは、どういう表情を作ればいいかの判断が頭で追いつかず、いつものような演技をする事すら忘れて、困ったようにヌーに苦笑いを浮かべたのだった。


「――」(おい、ヌー。今のお前、口元が緩んでるぞ?)


「あ? うるせぇな、どうやってフルーフの野郎を料理してやろうかと考えていたんだよ」


 ヌーは照れを隠すようにそうテアに言い訳を行い、もうこの場での用は済んだとばかりに勝手に去って行こうとするのだった。


「――」(おい、待てよ! 私を置いて行くなよっ!)


 そして慌ててそのヌーの背中を追いかけ始めるテアであった。


 イツキは去って行くヌー達を目で追っていたが、やがて振り返ってソフィの方を見るのだった。


「なぁ? 俺がアイツを倒せるようになったら、また俺の相手をしてくれるか?」


 何処か覚悟が決まったような真剣な表情を浮かべながら、イツキはソフィにそう言い放つのだった。


「クックック……! 少し前に我が居た世界でも、今のお主と全く同じ言葉を言った者が居てな、そやつは会う度に我を驚かせる程の成長ぶりを見せてくれていた。こうしてまた離れている間にもそやつはまた相当に強くなっておる筈だ。我は本気で強くなろうと成長する者を非常に好む。お主が本気で強くなりたいと願い、その願いに対して真摯に努力と研鑽を続けると約束するのであれば……。いいだろう、我はまたお主の相手になると約束しよう」


 そう言ってソフィは、イツキの再戦を快く受け入れるのであった。


 ……

 ……

 ……

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