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2019.決意の中にある覚悟

「そうか……。それだったら遠慮しておいた方が良さそうだね」


 そのヌーの決意の目を見た神斗は、あっさりと引いて見せたのだった。


 そしてシギンは、その神斗のあまりの物分かりの良さに少しだけ違和感を感じた。


 いつもの彼であれば相手に邪魔されたくないと告げられても情報を得ようとする性分から来ているのか、些細な事であってもギリギリまで食い下がろうとするからである。


 長い期間を共にしてきたわけではないが、それなりに神斗と接していてある程度の性格は理解したつもりであったシギンだが、ここにきて少しだけではあるが、想像通りなだけではないのだと改めてそう思い至るのだった。


 ――この時のシギンの考えは神斗の性格を表すという面では、確かに正しいモノではあった。


 しかし自分の中でケジメをつけたいと告げたヌーに対して、神斗は過去の経験からここからは踏み込んではいけないラインなのだと、今度こそ選択を誤るわけにはいかないという判断から直ぐに引いたのであった。


 当然に神斗の過去の出来事など知る由もないシギンには、神斗の態度に違和感を感じるのも無理はないと言えるのだった。


(どんなに取るに足らない相手であろうと、他人の報復といった恨み事や、死をも厭わぬ覚悟で決意を秘めた目をする者には関わらない方が良い。踏み込んだ結果がどんな結末になろうと、当事者じゃない僕には何一つ得をする事なんてないからね)


 神斗はヌーの顔を見ながらも、その真剣な目の意図するモノは、過去の自分に向いていたのだった。


 そしてヌーもまた、神斗に視線を合わせながらも考えている事は、大魔王フルーフと契約を交わしている『死神皇』の事であった。


(前回ミラの野郎はフルーフを追いかけて、直接『死神皇』と戦いやがった。途中からは俺もテアと戦う事に必死で、奴らの戦いを最後まで追いきれなかったが、あの場でフルーフを逃しやがった以上は、ミラであっても『死神皇』を倒す事は出来なかったってわけだ。当然テアを見ていれば、死神共は不死の存在で間違いないだろう。こいつも俺や、この世界の連中に何度か殺されていたが、都度何事もなかったかのように戻ってきていた。つまり『死神皇』も物理的に倒す事はまず不可能と見ていいだろう。そうなるとシギンや煌阿の奴のような『結界』を用いて奴自身か、奴が現世に留まれぬように『魔力』そのものを封じ込める手立てを考える必要があるか。いや、俺ではまずそんな芸当は不可能だろう。それならフルーフの方を狙った方がまだ勝機はあるか……)


 この世界にきてからの大魔王ヌーは、あらゆる面で成長を遂げており、まず間違いなく強さという面では、リラリオの世界でソフィと戦った頃とは、比べ物にもならない程に強くなったであろう。


 しかしこれだけ強くなった事で、更なる上位の存在の強さの在り様を分からされてしまった。


 真に強い者達は、破壊力といった攻撃面だけではなく、防御面に於いても非常に優れている。


 彼もまた、今以上の強さを得る為に必要な事は、如何に相手からの攻撃に対して、被害を最小限に押し留められるかを第一優先で考えなければならないだろう。


()()()()()()()()』とはよく言われる言葉ではあるが、当然に『()()()()()()()()()()』でもあるのだ。


 前回の王琳戦を見ていれば、如何に大魔王ソフィが防御面でも優れていたか理解が出来る。


死の結界アブソ・マギア・フィールド』に『金色の体現者』としての『特異(とくい)』。更には手や足を失おうが、一瞬の内に何事もなく全回復を果たす『救済(ヒルフェ)』の魔法に、その『救済(ヒルフェ)』を使うまでの猶予を作る事が可能な、そもそものソフィの『耐魔力』に『防御力』。


 この防衛面があるからこそ、あれだけの自信を持って攻撃面へと移る事を可能としているのだ。


 万全な態勢に満ち溢れる絶対的な自信――。


()()』の名に相応しい大魔王をこの世界で誰よりも近くで見てきた大魔王ヌーは、イツキ同様に大魔王ソフィの強さを理解しようとしている。


 ――この決意に秘めた思いが実を結ぶのか。


 それはこれからの大魔王ヌーの行う努力次第と言えるだろう――。


 ……

 ……

 ……

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