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2014.追い続けるモノは、果たして夢か現か

「そうか……。お主が満足したのなら構わぬ」


 ソフィは少し憂いだ表情を見せていたが、直ぐにその表情を戻すと魔神に『結界』を解除するように目配せを行うのだった。


 直ぐに魔神はソフィに頷くと、魔神は指を鳴らして展開していた『結界』を元に戻すのだった。


「やれやれ、やっと終わったか……。全く、お前らが行う腕試しで大陸が沈んじまいそうだぜ」


 ようやく命の危険がなくなったと感じ取ったイツキは、再び無残な姿となった訓練場を見ながら、そう冗談交じりにソフィ達の元に近づいてくるのだった。


「すまぬな。本来シゲン殿の腕試しだけであったならば、ここまで凄惨な状況を生むこともなかったのだが。つい、あれ程のシゲン殿の力を前にして気持ち抑えきれなかった……。魔神よ、お主の力でこの場所を元に戻せぬか?」


「――」(被害が出て直ぐに『固有結界』を施していればまだ何とかなったでしょうけど、流石にここまで時間が経ってしまったらもう無理ね。あくまで私の『結界』は被害を最小限に抑える事と、場面の再現構築を『時魔法(タイム・マジック)』で行っているに過ぎないのよ。壊れた物を直したりといった『修復』は私には出来ないわ)


 申し訳なさそうに出来ないと告げる魔神の言葉に、やはりフルーフが編み出したレパートの『(ことわり)』から生み出された『時魔法(タイム・マジック)』は、特別なモノだったのだなと改めて理解するソフィであった。


「気にせずとも構わない。我々は前回の『妖魔山』の調査の一件の功績がある。この程度であれば、サカダイの……いや、旗本や御上も笑って許してくれる事だろう。それに王琳との約定の件に関して言えば、俺やミスズが居なければ成り立たないというのも充分に理解してくれている筈だ。当面は何をしてもある程度は許されるだろう」


 ソフィは『旗本』や『御上』というのが誰の事を指しているのか分からなかったが、自分達やリラリオの世界の国のトップの事を指しているのだろうと考えるのだった。


 それに何よりこれ程の力を持つ妖魔退魔師組織や、先程直接実力を確かめた総長『シゲン』が居れば、たとえ国であろうとどうにもならないだろうと納得するソフィであった。


 そもそも妖魔召士組織や妖魔退魔師組織がその気になれば、国家転覆など容易に行えてしまうだろう。道理を弁えている彼らがそんな事をするわけはないだろうが、大義名分が出来た時に行おうとすれば、直ぐにでも行えるという意味では、彼らは何も恐れる事もなく今後も立ち回れるだろう。


 そう考えたソフィは、最後まで有り得る事がなかった出来事が頭を過るのだった。


(我らの世界の『魔界』がこの世界の『妖魔山』と考えた時、妖魔退魔師組織や、妖魔召士組織が『人間界』の『煌聖の教団(こうせいきょうだん)』の立場と考えれば、境遇が似ているとも言えるか? そして何かのきっかけでもしも我がミラと約定を結べていた場合、アレルバレルの世界は『魔界』と『人間界』も彼らのように手を取り合う事が出来ていたのだろうか? いや、我達の世界に隔たりが生まれてからすでに数千年は経っている。この世界の歴史がどれ程に長いかまでは存ぜぬが、アレルバレルの軋轢の歴史よりは長くはないと感じる。それにやはりあのミラが我と手を結ぶとは思えぬし、こんな思想は何の意味も為さない……か)


 もしもという仮定の話が頭を過ったソフィだったが、結局その考えを直ぐに頭から追い出すのだった。


「今回は俺の勝手な願いに付き合ってもらって申し訳なかった。そして色々と俺に道を示してもらえたことを改めて感謝する」


 そう言ってシゲンは、最後にまた頭を下げてソフィに感謝の言葉を口にするのだった。


「こちらこそ、当初の取り決めと異なり、手を出してしまってすまなかった。だが、お主と王琳が手を結べばこの世界は安泰だという事が、両者と手を合わせた者として改めて我は感じた。末永く王琳と仲良くする事だ」


「ふふっ、それは奴次第といったところだろうな。残念だが、まだ俺では王琳には勝てない。今回ソフィ殿を通してその事がよく理解が出来た」


 傍から見ればシゲンも王琳も同じ規格外の化け物であるが、それでも両者の間には彼が口にする通りに、まだ大きな開きがある。


 確かにシゲンに対しても大魔王ソフィは、王琳を相手にした時と同様に、自身が出せるだろうと判断する『六割』の『力』を開放して見せた。


 だが、その『六割』の開放を見せた後の展開は、そこまで同じだった両者とは大きくかけ離れた結果が生じてしまったのだった。


 ――そしてその差というのが、覆す事の出来ない程の『攻撃力』の差であった。


 今回、それは大魔王ソフィの『防衛力』が分かりやすい物差しとなった。


 王琳はソフィとの戦いの中で、シゲンが抱いた悩みと同じものを抱くに至っていた。


 シゲンは今のままではソフィの『耐久性能』を突破する事が不可能だと考えて戦いの継続を諦めたが、王琳はここから更に『遠放速雷(エニア・エクレル)』を用いて、ソフィの『六割』の『力』の防衛力を突破し、一歩先へと進んで見せていたのである。


 『シゲン』と『王琳』――。


 互いに妖魔ランク『10』に至る者同士であり、この場に居る『力の魔神』から『()()()』と認められた者同士ではあるが、そんな彼らの間にも現段階では覆す事の出来ない差というモノが存在しているのだ。


 その事をソフィが口にするまでもなく、この場でシゲン自身が認めて口に出した。


 彼曰く、このままの方針ではいくら研鑽を続けても辿り着けない――と。


 ――もちろん彼はこのまま強くなる事を諦めるつもりはないだろう。


 それはシギンや、この世界の人間達のように、いつか来る『寿命』のその時まで、抗い続けて道を切り開こうと努力を続ける事だろう。


 惜しむらくは、結果がどうなるかを別世界の存在であるソフィでは、知る事が叶わない事である。


(寿命……か。この問題がなければ、確かに人間達の中からもうすでに、我を超える者が複数出ていてもおかしくはなかったかもしれぬ。だが、寿命に阻まれたからといってそこで人間の可能性が途絶えるとは、どうにも不思議と我には思えぬのだ。きっとこの先、魔族だけではなく、人間の中からも我を脅かしてくれる者が出て来るだろう。何故かは分からぬが、そんな気がしてならぬ。何故そう思えるのかも今は分からぬが……な)


 ソフィは確信があるわけでもないが、何故か有り得ないと口にする事が出来ないのだった。


 ――だが、この大魔王ソフィを倒す人間が現れた時、本当の意味で『勇者』と呼ばれる存在となるのは間違いないだろう。


 ……

 ……

 ……

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