表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2029/2211

2012.絶体絶命の窮地

 ソフィはシゲンを地面に叩きつけた後、勢いそのままに地面をグングンと掘り進んでいく。


 思わぬ反撃を受けたシゲンだが、今も意識を失わぬようにと必死に堪えながら、ソフィの手から抜け出す為に模索を始めていた。


 どうやら単純な力では『ヒノエ』の方が上なのは間違いないが、現在の金色の光を腕に纏わせているソフィの『力』は、その『ヒノエ』の怪力と握力と比べても凡そ数倍はあるだろう。


 シゲンも『青』と『金色』の『二色の併用』を行っている事で、間違いなく戦力値だけで考えれば、このソフィの拘束から逃れる事はそこまで難しくはない。


 だが問題はそこではなく、足場となる地面が次から次へと崩れていく為に空を飛べないシゲンにとって、体勢を崩されたまま、宙に浮かされているような状態でソフィに引きずられてしまい、上手く身動きが取れないのであった。


(このままでは俺の『魔力』が枯渇して『オーラ』を維持出来なくなる。そうなれば俺はあっさりとソフィ殿に殺されてしまうだろう……。一刻も早く俺を掴んでいるソフィ殿の手を外したいところだが、どうにかしっかりとした足場を作れぬものか……っ!)


 シゲンは足場となるものがないかと必死に視線を這わせ始めたが、そこでソフィの頭上を見上げた時に、自分達が掘り進んできた地面であった場所が、真っ白な膜のようなモノに覆われていっている事に気づく。


(あの白い光は……? そ、そうか、あれは魔神殿の『結界』によって、崩落を起こさぬようにと破壊されていっている箇所を恐ろしい速度で修復を果たしていっているのか……!)


 どうやらソフィやシゲン達が生き埋めにならぬように、魔神は『結界』を施して掘り進んでいくソフィ達の周囲の破壊された場所の土やら壁となるモノに再生を施していっているのだろう。


 どういう原理なのかまでは、シギンやエイジのような『魔』の理解者ではない為に、シゲンには到底理解が出来ないが、そういう再生方法なのだろうという事だけは理解に至るのだった。


 その事を念頭にシゲンは愛刀を握る手に力を込めると、ソフィが地面を掘り進んだ時に生じる僅かな隙間を見計らい、思いきり刀に『オーラ』を込めて真下に放った。


 本当に僅かな『隙間』を利用したシゲンの剣技によって、見事に自分達の居る場所よりさらに下へ向けて衝撃波を放つ事が出来たのだった。


「!?」


 突然のシゲンの行いにソフィは、シゲンの首を掴む手を緩める事はしなかったが、僅かに驚きの表情を見せたのだった。


 やがてシゲンの衝撃波によって掘り進む地面がなくなり、大きな空洞を落下していく両者だが、迫ってくる床部分が真っ白な『結界』に覆われていくのを感じ取ったシゲンは、この後に再生されるであろう地面の感覚を逃さぬように、自分の足に全集中するのだった。


 ――そして遂にその時が訪れた。


 大きく伸ばした右足の先に、足場が出来た事を確認したシゲンは、ソフィに掴まれて斜めになっている自分の身体の態勢を少しだけ戻す事に成功すると、次の瞬間に右手に握る愛刀に思いきり力を込めてソフィの肩口を思いきり斬り上げた。


 ――『華動椎頭(かどうついとう)』。


 万全ではない態勢ではあるが、シゲンは僅かな足場が出来た事でそれを利用し、見事に剣技を用いてシゲンの首を掴んでいる右腕を肩口から斬り飛ばした。


 その瞬間にソフィの拘束がなくなり、自分の身体が自由になるのを感じ取ったシゲンは、崖となっている周囲の壁を今度は足場にしながら、勢いよく地上を目指して駆け上っていく。


 それを見たソフィは笑みを浮かべると、静かに詠唱を呟いて切断された腕を『救済』の『魔法』で完治させる。


 そしてそのまま、空を飛べる彼は真っすぐにシゲンの背中を追尾し始める。


「クックック、素晴らしい機転だ。あの状態から見事に抜け出すか。だが、逃さぬがな?」


 漆黒の四翼を羽搏かせながらソフィは、まるでシゲンの命を狩り取ろうとするかの如く、シゲンを下から猛追するのだった。


「見えた……!」


 空を飛べない筈のシゲンだが、魔神によって修復された左右の壁を交互に蹴り上げながら崖を登っていき、何度目かの跳躍の末に、遂に『結界』の維持に『魔力』を注ぎ込みながら、心配そうに穴を覗き込んでいた魔神の姿を捉えた。


 ――それはつまり、先程までいた地上が近いという事に他ならない。


 背後から恐ろしい速度で迫ってくる大魔王を肌で感じながらも、決して振り返る余裕すらないシゲンは、ゴールを目指してこれまで以上に脚に『力』を込めて飛び上がるのだった。


「ふはははっ!!! これでも追いつけぬか? そうか、では仕方あるまいなぁ……!」


 背後から聞こえてくる大魔王ソフィの声が、シゲンの耳に届いた瞬間――。


 何と、まだまだ下に居た筈だったソフィが、地上を目指すシゲンの眼前に突如として姿を現すのだった。


「逃さぬよ――!」


「!?」


 完全に修復をし終えた右腕でオーラを纏い『紅刀』を作り上げたソフィは、下から跳躍を行いながら地上を目指すシゲンに向けて振り切った。


 ――『流動頸尾(るどうけいび)』。


 地上へ跳躍を果たす直前の最後の崖を蹴り上げたシゲンは、狙いすましたソフィの攻撃を見事に避け切ってみせた。


 ――『華動椎頭(かどうついとう)』。


 そしてシゲンは返す刀で再びソフィの両腕を斬り飛ばしながら、見事に絶体絶命の窮地を乗り越えて、地上へと生還を果たすのだった。


 ……

 ……

 ……

『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ