2004.再びソフィに呼び出される力の魔神
『特務』の施設内に入ると、直ぐにシゲン達に気づいた特務の組員達が、足早に駆け寄ってくるのだった。
シゲンが事情を説明して訓練場を使う旨を伝えると、直ぐに特務の者達はシゲンの言葉に頷いた後、その場に一人残して訓練場へと駆けて行った。
どうやら訓練場を使っている組員達に立ち退くように、特務の人間が伝えに行ったというところだろう。少しだけ待つように言われた為、ソフィは今の内に『魔神』を呼び出す事にしたのだった。
ソフィが魔神の召喚を行う為の詠唱を済ませると、直ぐに嬉しそうな表情を浮かべた魔神が出現を始める。
そしてそんな魔神に対して、ソフィが再び『結界』を張って欲しいと頼むと、魔神はシゲンを見定めるような視線を向けるのだった。
「――」(この者は確か、あの山で世界の崩壊を防ぐ協力を行ってくれた人間だったわね?)
「うむ。我が意識を失ってやらかしてしまった時に、ヌーや王琳達と共に攻撃を止めてくれた者なのだ。少しだけ我を相手に試してみたい事があるというので、念のためにまたお主に『結界』を頼みたいと思ってこの場に呼んだというわけだ」
「――」(ちょっとソフィ……。まさかとは思うけど、またあの『超越者』の時と同じように、戦うわけではないでしょうね?)
「クックック……、安心するがよい。今回ばかりは流石に我もそのつもりはないぞ。あくまでシゲン殿の頼みを聞くだけのつもりだ」
魔神はソフィの言葉に半信半疑といった様子で頷くと、再び視線をシゲンに向けるのだった。
当然にシゲンは神格を有しているわけでも契約を行っているわけでもない為、魔神の話す言葉を理解出来なかったが、ソフィの言葉からある程度会話の内容を把握する事は出来ていた。
そして値踏みを行うような魔神の視線に晒されながらも、シゲンは何も言わずにただじっと魔神を見つめ返すのだった。
「――」(こうして改めて見てみると、この者も『超越者』に限りなく近い力量を感じるわ。実際に戦ってみなければ詳しい事は分からないけれど、単なる下界の人間という扱いはすでに出来ないわね。良いでしょう、ソフィの言う通りに協力させてもらう事にするわ。私にとっても万が一があっても困る内容だしね)
どうやら魔神の中でシゲンをある程度認めた様子であり、ソフィの提案に乗ってくれたようであった。
「おお、そうか。ではすまぬが、よろしく頼む」
ソフィが嬉しそうにそう告げると、魔神も笑みを浮かべて頷くのだった。
どうやら相談が上手く行った様子なのを感じ取ったシゲンは、ソフィに向けて口を開きかけたが、そこへ先程訓練場へと走っていった数人の特務の人間が走って戻ってくる足音を聞いて、ソフィと共にそちらに視線を向け直すのだった。
「お、お待たせしました! いつでも訓練場の方はお使い頂けます!」
息を切らしながら戻ってきた組員がそう告げると、シゲンは首を縦に振って頷いた。
「急にすまなかったな。それではソフィ殿、行くとしようか」
「うむ、分かった」
シゲンは組員の肩に手を置いて労いの言葉を掛けた後、ソフィに訓練場へ行くのを促すのだった。
普段であれば『特務』以外の人間がこの訓練場を使う時は、必ず『特務』の人間が案内を行い、そして部屋を離れるまで監視を行うのが通例なのだが、今回は『特務』どころか妖魔退魔師組織全体のトップに立つ総長のシゲンが居る為、ここにはソフィとシゲン、そして魔神だけしか居ない。
すでに『特務』の者達もソフィという存在が組織にとって、どういう人物に当たるのかという事を総長や副総長から説明を受けていた為、彼がエントランスから離れる時には、特務の人間達から幹部達に行うような最敬礼で見送られたのだった。
そしてソフィにとっては、二度目の特務の訓練場に足を踏み入れた。
一度目は『特務』所属の隊士である『ナギリ』と実戦練習を行った時であり、その時にはソフィは副総長のミスズとも一戦交えている。
あの時はソフィが『魔法』を用いた事でこの場所に大穴を作ってしまい、戦闘の継続が不可能という状況を生み出してしまったが故に、第三形態の四翼の姿まで見せたソフィだったが、結局勝負の決着を付けるというところまでは行かなかった。
ソフィは現在の修復を終えている訓練場の床を見つめながら、あの時の出来事を思い出していた。
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