2000.大魔王ソフィVS大妖狐王琳24
追撃を仕掛けようとした王琳だが、突然に視界が閉ざされた挙句に呼吸が上手く出来なくなる。
「!?」
何が起きたか分からぬままの王琳だったが、何とかその場から逃げなければと本能が働いたが、それを阻止するかの如く激痛が全身を襲う。
「ぐっ……!?」
何が起きたか分からぬまま、激痛が身体中を襲い、更にそれだけで異変は止まらずに、根こそぎ自分の『魔力』が失われていく感覚を覚えたかと思うと、先程受けた激痛とはまた異なった痛みが新たに与えられる。
「づぁっ……!!」
次に王琳は右腕と左脚の感覚が失くなり、ようやく今の自分の行動が『あべこべ』に動くのだと頭で理解したのだが、そのせいで閉じていた目が開かれて、自分の目の前にいつの間にか迫って来ていたソフィの愉悦に歪んだ表情を視界に捉えてしまう。
「!」
嬉しそうに無我夢中で殴り続けてくるソフィの攻撃を目の当たりにした王琳は、本能が何とかして生き延びようと身体に働きかけるが、すでに四肢はソフィの手によって引き千切られてしまっていた。
『魔力』はとうの昔に全てソフィに奪われて残っておらず、四肢を失って動けずに居る王琳は、ここでようやく自分の死を悟るのだった。
「これ……っが、俺と……、ぉ、前の、差、な……のだっ……なっ……」
王琳に対して攻撃を行い続けているソフィの身体を緑色の光が包み込み始めると、これまで王琳が与えてきたダメージが全て回復されていく。
――そしてソフィは無情にも王琳がつけた傷を一つも残さずに、一瞬の内に完全回復を果たすのだった。
どうやらこの『救済』もソフィが使おうと思って使ったわけではなく、単に無意識の内に発動させたのだろう。
それを見ながら王琳は、大魔王ソフィは自分程度では手に負える相手ではないという事を改めて分からされるのだった。
しかしこの圧倒的な存在は、これでもまだ本気ではないのだろう。それはこれまで今のソフィの立場で妖魔山に君臨し続けてきた王琳だからこそ、正確に理解が出来るのだった。
王琳は何とか『転覆』の効力に晒されながらも、必死に意識を失う前に伝えようとソフィに言葉を掛け続ける。
その王琳の言葉を聞き取れているかどうかは分からないが、別に王琳は聞こえていなかったとしても構わなかった。ただ、自分が死んでしまう前にソフィに伝えたいと考えたのだ。
「す……まな……いっ……な、ソ、ふぃ……、俺……っでは、お……まえ、の力を……、ひき……だっ……し、やれ……なっ……っ!」
王琳は必死にソフィに語り掛けていたが、最後まで言い切る前にソフィに殴り飛ばされて、地面へそのまま激突してしまうのだった。
「「王琳様ぁっ!!」」
耶王美達を含めたこの場に居る全妖狐が、一斉に空から落ちてきた王琳の元へ駆け寄っていく。
――しかし、空から無情にも次々と『真っ白な光の束』が展開されたかと思えば、待機時間を伴わずに凡そ数百という数の『絶殲』が地上へ向かって降り注いでくる。
このままでは確実にこの隔絶された空間ごと『全て』が、消し去られてしまうだろう。
「――もういいだろうが、ソフィ!! 勝負はついた!」
「!?」
いつの間に近くに居たのか大声で静止を呼びかけるヌーの声に、ようやく高揚感に包まれて興奮していたソフィは我に返ったが、すでに数百を上回る殺傷能力を誇る『絶殲』は地上へと降り注いでいる。
地上に居る『シギン』や『エイジ』、更には『シゲン』や『イツキ』もどうしようもないとばかりに見上げていた。
この空間はこのまま間違いなく崩壊すると『力の魔神』が悟った瞬間、視界に居る『ソフィ』は瞬く間に動き始める。
「……」
大魔王ソフィの『魔力』がこれまでより更に上昇していく。それは間違いなく、この今のソフィの形態で出せる最大限の『力』だろう。
――次の瞬間、遥か空の上に居た筈のソフィの姿が忽然と消え去り、いつの間にか地上へと出現を果たしたかと思えば、先程溜めた『魔力』を両腕に纏い、迫りくる自分の放った『絶殲』に手を翳し始めた。
「『絶殲』……」
大魔王ソフィが一言そう告げると同時、今度は地上からこれまでより一際大きな『真っ白な光の束』が出現して、向かってくる『絶殲』と真っ向からぶつかり合い始める……までもなく、最後に地上から放たれたソフィの『絶殲』によって、地上へ迫って来ていた全ての『絶殲』が一瞬の内に呑み込まれて、一つも残らずに全て消え去った。
更にそのままソフィは転移を果たして、先程の空の上に辿り着くが、新たに『次元防壁』を展開しようとした矢先に、すでにヌーの手によって展開された『次元防壁』をその目で見据えると、ソフィは小さく笑みを浮かべながら、上げかけた手を下ろすのだった。
――神域『時』魔法、『次元防壁』。
大魔王ソフィの『絶殲』は、大魔王ヌーの『時魔法』によって、次元の彼方へと消え去るのであった。
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