1999.大魔王ソフィVS大妖狐王琳23
そして遂に、その時が来るのであった――。
大魔王ソフィが展開した『魔力吸収の地』の領域内の一歩外側から、王琳は魔力干渉領域の『透過』を用い始める。
その狙いは当然、ソフィの『魔力吸収の地』の無効化である。
そしてその王琳の思惑を読んでいたソフィもまた、新たな対策に出る。
――大魔王ソフィの持つ『金色の体現者』としての『特異』。
相手が発動する『魔力』そのものを対象に、王琳は巻き直される……筈だった――。
「そう来るだろうと考えていたぞ、ソフィ!」
――『妖憑転変』。
何と妖狐本来の姿でソフィに向かっていた王琳の姿が、唐突に変貌を遂げていく。
それはこれまでのように人型となるのではなく、そこに本人が『存在』しているというのに、姿だけがそこに残ったまま、王琳の顔から生気だけが抜けていき、ソフィの『特異』によって王琳の『透過』を用いようとした『魔力』が巻き直される瞬間には、完全に骸のように動かなくなるのであった。
「何……?」
『魔力吸収の地』の領域内に突入した王琳が、立ち止まったまま動かなくなるのを見たソフィは、訝しむような声を上げた。
そしてそんな声を上げた直ぐ後、何とソフィの『魔力吸収の地』の効力が強制的に消し去られた。
「むっ――!?」
異変に気付いたソフィが、慌てて次の対策となる行動を取ろうとした瞬間だった。
「残念だったな――」
ソフィの視界に映っている王琳の場所からではなく、全く異なる場所から王琳の声が聞こえて来たかと思うと、そちらに顔を向ける前に、ソフィの身体に何本もの『雷の矢』があらゆる角度から突き刺さるのだった。
「まだまだ行くぞ、ソフィ!」
――『燐火』。
力を開放する前の状態であった時のソフィが、死の危険を感じ取った程の『遠放速雷』がまともに直撃し、更にその上から畳みかけるように王琳は攻撃を繰り広げていく。
すでに相手が放つ『魔』の概念技法からソフィを守る筈の『魔力吸収の地』は、王琳の『透過』によって完全に消え去られている。
つまり、今のソフィは王琳が繰り出す妖狐の技の数々から逃れられず、全てが直撃している最中にあった。
――そして、それはまだ終わらない。
「これで終わりだ……!」
王琳はソフィに『救済』すらも使わせないつもりなのだろう。一切手を緩めることなく、そして確実に死を齎そうと連続で妖狐王琳が持ち得る最大の攻撃を連続で積み重ねていく。
――『九尾通力』。
王琳が自身最大の妖狐の技法である『九尾通力』を用いた瞬間、これまでにすでにソフィの身体に突き刺さり、何とかオーラを用いていた事で皮膚で止まっていた『雷の矢』だが、まるで『矢』の鋭利さが強引に促進させられたかの如くに切れ味が増していき、完全にソフィの身体を貫いていった。そして更にそれだけに留まらず、ソフィの身体を焼いていた蒼い炎が火柱を作り出して、まさにその場で大炎上を起こし始めるのだった。
この光景を見た者は、誰もが王琳の勝利を確信した事だろう――。
――だが、それはソフィという存在を知らぬ者にのみ限定される話であった。
「……見事だ、王琳よ」
大炎上を起こしている火柱の中心から、ソフィの低い声が王琳の耳に届いた。
「!?」
「まさか『魔力吸収の地』を囮に使った我の本命の『特異』すらも、見破られるとは思わなかったぞ……」
――そのソフィの言葉は、驚いているというよりも、興奮を抑えきれないといった高揚感に満ち溢れた声をしていた。
王琳はソフィのその声を聴いた時、驚きの最中であったが、直ぐに回復されると頭を過ったようで追撃を起こそうと更に『魔力』を高めようとした。
流石は耶王美や七耶咫達を従える『九尾』の妖狐だけはあり、自分の想定を超える出来事を前にしても、決してやるべき事を疎かにせずに動こうとして見せた――。
油断せずに相手を仕留めるという意味では、先にソフィと戦った『煌阿』よりも『王琳』は見事だったと言えるだろう。
だが、王琳を最高の相手と認めたソフィを相手にするには、これでも行動が遅すぎると言わざるを得なかった。
――いや、その表現すら間違っている。
この今の状態のソフィが相手では、もう先程の攻撃で仕留めきれなかった時点で、王琳に勝ち目はなかったのだから。
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