1989.大魔王ソフィVS大妖狐王琳13
「――」(下界に『超越者』が現れ始めてから一体、どれくらいの時が経っただろうか。最初は天上界に存在する神格を有する神々が『天上神』の命を受けて、下界の破壊影響を及ぼす元凶を消滅させる為に動いた際に、執行者たちが下界の存在に返り討ちに遭った事から、神々の執行者を退ける者達を総称して『超越者』と呼ぶようになった。昔に出現を果たした『超越者』の中にも非常に厄介極まりない者達は居たが、今回のようにこれ程までの力を有した『超越者』達が、同じ時代に生きるだけではなく、戦いを行った事は私の知る限りの過去には、存在していない……)
力の魔神がこの世界の『妖魔山』で最初に王琳の存在を認識した時、自身の張った『結界』を王琳にあっさりと破壊された過去を持つ。
――あの時に力の魔神は、直ぐに王琳を『超越者』だと見抜いた。
しかしまだあの時はまだ、ソフィとそれなりに戦うに値はするだろうが、ここまで互角に渡り合うまではないだろうと判断するに留まっていた。
それがこうして実際に戦いが行われた事で、力の魔神は考えを改めさせられてしまうのだった。
今のソフィはかつてない程までの『力』の開放を果たしている。
勿論、少し前にこの『妖魔山』で煌阿という鵺の妖魔を相手に今以上の力を示してはいたが、それはあくまでソフィの『自己』ではなく『自我』の部分であり、意識を失っている状態の彼である為、ここで魔神が考えている話には該当はしない。
単なる『自我』の部分の話をするのであれば、すでにリラリオの世界で『スフィア』という塵芥と呼ぶに相応しい『魔族』相手にも体現を果たしていたし、この世界でも数回程『自我』の大魔王が出現を果たしている。つまり力の魔神はあくまでソフィが、自分の意志で『力』を開放している時の話をしているのである。
先程、すでに『六割』の力を開放していたソフィだが、当人にとっては『六割』という認識に過ぎず、彼はまだまだ充分に余力を残している状態にあるだろう。
しかし魔神を含めた世界の側に立つ者達にとっては、当然ソフィが単に『六割』の力を解放しているだけという認識で済ませられるものではない。数多の下界で共通認識の一つで指標でとなっている『戦力値』という数字で表すのであれば、このソフィの状態は軽く『10兆』を超えているのは間違いないと魔神は結論付けている。
そしてそんなソフィを相手に先程この世界の『超越者』は、あっさりと戦力値が『10兆』を超えているソフィの強さを上回り、ソフィに死を予感させる程の攻撃を行ってみせた。
あの『超越者』が放った『遠放速雷』という雷光の攻撃は、この天上界の元執行者である力の魔神の目から見て尚、過去に一、二を争う程の破壊力を誇っていた。
そして同時に力の魔神は、あの『遠放速雷』がソフィに直撃した時に、ソフィがやられてしまうという有り得ない幻想をたとえ一瞬とは言っても抱いてしまったのである。
先程も述べた通り、ソフィはまだまだ余力を残している状態にはあるのだ。だが、それでも開放を行わなければソフィは『六割』の力が現状な事には変わりがないのである。そして王琳の『遠放速雷』は、そのソフィの『六割』の力で耐えられる規模の攻撃ではなかったという話なのであった。
もしソフィが『次元防壁』で一度目の『超越者』の『遠放速雷』を次元の彼方へと飛ばして猶予を作る事が出来ていなければ、今の力までを開放出来る状況にはなかっただろう。
――今の大魔王ソフィは、すでに『七割』の力を開放している状態にある。
魔神はもしかしたらソフィは、今の形態を保ったまま『七割』まで開放するかもしれないと、あくまで可能性としての予想は行っていた。行っていたのだが、実際にはそこで勝負が決まるだろうとまで確信していたのである。
だからこそ今のソフィを前にして『超越者』が、新たにソフィに追従するように『戦力値』を高めた事に、力の魔神は愕然としている状態なのであった。
「――」(このままでは確実にこの隔絶した空間が崩壊する。この空間を元々生み出した者もそれなりの力を有する者であったのだろうし、それに加えて神々の手によってこの場に変化を加えていたであろう事は私には分かっているが、そんな場所であっても決して、これから行われる戦闘には到底耐えられない……。全くもう! ソフィは何度私をやきもきさせれば気が済むのでしょうね!)
ソフィ達が戦っている空の上より、遥かに高度がある空の上で『力の魔神』は、毒づくような言葉を契約者である大魔王に対して口にしていたが、本音ではそれ以上にソフィの願望の為に自分は全力を出す事が出来る。そしてそれはソフィの助けに大いに繋がっていると考えており、非常に満足そうであった。
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