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2005/2213

1988.大魔王ソフィVS大妖狐王琳12

「……」


 王琳の放った『遠放速雷(エニア・エクレル)』が直撃した事で眩い閃光がソフィを包み込んでいたが、その光が弱まってソフィの姿をその目で捉えられるようになった時、王琳は愕然とする事となった。


 何と大魔王ソフィは何事もなかったかのように、笑みを浮かべて立っていたのである。


 王琳は放った『遠放速雷(エニア・エクレル)』の威力を自身が一番よく分かっている。


 この技法は神斗から教わったわけではなく、王琳が転生を繰り返す前から独自に編み出したモノであった。


 恐ろしい程までの殺傷能力を誇る『遠放速雷(エニア・エクレル)』は、王琳であってもここぞという場面しか使わず、これまでこの技法の使用を決断した時は、この『妖魔山』で妖狐族に敵対の意志を示した種族の長を仕留める時などに限られる程であった。


 この戦闘の開幕で一度使った時は、この技法に圧倒される形でソフィは力の開放を余儀なくされた程であったが、あの時よりも威力が高まっている王琳の妖狐形態からの『遠放速雷(エニア・エクレル)』を連続で直撃したにも拘らず、今回は全くの無傷であった事が王琳には腑に落ちなかったようである。


(流石にこれには俺も驚かざるを得ない……。確かに一番最初に放ったものは奴が用いた何らかの『魔』の技法で防がれたように思えたが、その後に俺があらゆる場所に仕掛けた『スタック』から用いた、奴の居る場所に届く全方位からの『遠放速雷(エニア・エクレル)』の数発は、間違いなく的中した筈だ。あの一瞬では『透過』で打ち消す事はおろか、軽減を目的とした『魔』の技法すらも間に合わなかった筈だ)


 確かにソフィであれば『遠放速雷(エニア・エクレル)』を直撃させても耐えられるかもしれないと、頭の片隅で可能性を考えられる事は出来ていた。


 だが、それでも彼は多少なりともソフィにダメージを負わせるられるだろうと思っていた。そして確実に先程までのような局面を変えられると確信を抱いていたのだ。


 ――しかし、それがまさか何事もなく、無傷で居られているとまでは王琳にも予想が出来なかった。


「クックック……。どうやらお主は何が起きたのか分からないといった顔をしておるようだな。確かに先程の一撃は見事なものであった。これまでの我であれば、間違いなく耐えられぬ程の威力であった……!」


 笑いながら説明を行い始めたソフィだが、彼のその言葉を聞いた王琳は直ぐに一つの可能性に思い当たるのだった。


 ――これまで幾度となくソフィが行ってきた『力』の開放である。


煌阿(こうあ)と戦っていた時のお前であっても、今のを無傷で済ませられるとまでは思えぬが、こうして目の前で証明されては何も言えなくなってしまうな。どうやらお前は煌阿を相手にしていたあの時でさえ、まだ本気ではなかったという事か?」


 王琳はソフィに質問を行いながらも内心では、非常に馬鹿げた事を訊いているなと自分で感じていた。


「その時の事をよく覚えてはいないが、間違いなく本気ではなかっただろうな」


 覚えていないというのに、本気ではなかったと断言をしてみせるソフィに、何処か違和感を感じながらもすんなりと信じさせられるに至る王琳であった。


「だが、本気ではないのはお主も同じだろう? 戦いながら薄々感じていた事だが、お主も相当に余力を残しているのではないか?」


 ソフィはまるで確信をしている様子で笑みを浮かべながら、王琳にそう告げるのだった。


「まぁ、な……。しかしここから先は俺も上手く力をコントロール出来ぬ。今までは使いどころがなかった為に、コントロールする訓練のしようがなかったものでな」


 ソフィは王琳のその言葉を聞いて嬉しそうに笑った。


「クックック……ッ! よく分かるぞ王琳よ。我もこれまで魔神の奴に何度も『力』を開放すれば、世界が崩壊すると告げられてきたのだ。そんな事を幾度となく口にされては、おいそれと力を出す事は出来ぬものよな。まぁ、その前に出す必要がある相手すらこれまで現れなかった事を否定も出来ぬが……」


 ――先程までのソフィの状態でさえ、既に戦力値は()()()を超えていたのである。


 この世界に来る前の世界では、先程までのその『()()()』という戦力値の凡そ十分の一もあれば、十分過ぎる程なのであった。


 それが目の前の王琳という妖狐と対峙した事でソフィは、かつてない力の開放を必要とさせられたのだ。


「先に言っておくぞ王琳よ、この状態の我はまだ本気ではない。しかしこれ以上の力を出せば、まず間違いなく世界に良くない影響を及ぼしてしまう事になると判断が出来る。実際に今の力を体現した事で理解が出来てしまったのだ」


「ふむ……」


 いきなりの宣言だが、王琳はそのソフィの言葉を大言壮語とは思わなかった。むしろ淡々と本音を口にしているだけなのだという事は、これまでソフィを見てきた王琳にはよく理解が出来るのだった。


「だが、それでも我は今回、お主を相手に今より力を出す必要性があると感じ始めている。そしてそれを不思議と止めようとも思わないのだ……。この気持ちがお主にも分かるだろうか? お主とこれ以上戦えば、世界が崩壊してしまうかもしれないと頭の何処かでは分かっているのだが、不思議と止めようと思えぬのだ……」


 それはつまりこの戦いにソフィは、自身の抱く願望を強く意識し始めたという事なのだろう。


「少し前に俺は耶王美の奴に、この一戦こそが俺の求めている戦いだと告げられてな? 俺自身もずっとそうだと感じてはいたのだが、アイツから言われた事でハッキリと、この思考が現実的に定まった感覚を覚えたのだ。そしてここまでお前と戦ってきて、やはりそれは間違っていなかったと確信が持てた」


 その言葉を言い切ったと同時、王琳の周囲に『金色』が纏われ始めると、元々覆っていた『青』と綺麗に交ざり合っていく。


 ――それは王琳の『()()』と『()』の『()()()()()』であった。


「お前が後どれくらいの余力を残しているかは分からぬが、それはこの戦いを続けていけば自ずと分かる事だろう。さぁソフィよ、ここからは本当に俺も未知なる力の開放となる――」


 ――最後まで後悔なく、良い勝負をしよう。


 王琳がそう告げた瞬間――。


 ソフィはこれまでに感じた事のない力を持つ『存在』を目の当たりにする事となるのであった。

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