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1995/2214

1978.大魔王ソフィVS大妖狐王琳2

 王琳は間違いなく『()()()』として相応しい強さと実力を持っている。


 それは単に彼が持つ技法の破壊力が秀でているという事だけではなく、僅かな違和感であっても鋭敏に感じ取り、苦難に陥ったとしても焦ることなく、機転を利かせて対抗策を直ぐに用意が出来るという点が『超越者』としての証明を果たしている。


 本来の十全な状態の王琳であれば、ソフィが彼の全ての『魔』の概念技法を完璧に封じる事が出来る『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』を設置する前に、もっと早く気づく事が出来て対策を取る事を可能としていただろう。


 しかしソフィはそんな鋭敏な感覚を持つ王琳に、最後の瞬間にまで気づかせる事なく、こうして『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』の中へ誘導させて閉じ込める事が出来た。


 それは偶然に王琳がその場所に行ってしまったのではなく、全てが緻密に計算されたソフィの手腕によるものである。


 彼は最初から王琳の『魔』の技法を封じる為に、残酷な程までに殺傷能力の高い『魔法』を幾重にも王琳の気を逸らす為に放ち続けた。


 数百という数のソフィが放った『()()()()』は、その中の一つであっても上位の『魔神級』の存在が放つ『極大魔法』に比肩するものであり、この世界ではランク『9』以下の種族の持つ耐魔力、そしてアレルバレルやリラリオといった別世界では、戦力値が1兆未満の魔族が持つ耐魔力程度であれば、一瞬で葬り去る事が可能な領域の破壊力を持っていた。


 王琳の持つ『耐魔力』は間違いなくランク『9』程度の枠組みに留まる程度のモノではないが、それでもあれだけの数を瞬時に裁く事を考えれば、他の事に意識を向ける余裕がなくなるのも無理はない。


 そしてソフィによってあの連続して放たれた『極大魔法』が実は単なる囮の扱いで、実は本命は別にあるのだと馬鹿げた考えに気づける者は居ないだろう。


 大魔王ソフィは王琳を『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』に封じ込める為に、目を背けたくなる程の数の殺傷能力に優れた『殲滅魔法』を準備し、計画通りにこの状況を作り出して見せたのだった。


 もう王琳はこの場に居る限り、先程までのような『魔』による対抗策は取れない。


 先に展開していた『オーラ』は問題なく使えているようだが、当然にそれだけで受けきれる程に今の状態の大魔王ソフィの『殲滅魔法』は()()()()()


「さて、この状況をどう切り抜ける?」


 いつの間に現れていたのか、王琳の前に姿を見せた大魔王ソフィはそう告げると右手を僅かに上げた。


 するとあっさりと数百の瞬時に発動が可能な魔法陣と、その数より更に膨大な数の『スタック』が王琳の周囲に展開されるのだった。


 ソフィの合図一つで、この膨大に設置された『殲滅魔法』の魔法陣は、回転を始めて発動を可能とするだろう。


「ふふっ、この俺の読みを上回る程の策をあっさりと用意するか。そして『透過』もこの場所では使えないときたか。まさに八方塞がりだな?」


 その王琳の口振りから省みて、ソフィが目の前に現れてからも『透過』で『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』を解除しようと試みたのだろう。しかしこの場所では全ての『魔』の概念技法が封じられている為に上手く解除が行えなかったようである。


「安心するがよい。お主は十分に我を楽しませてくれた。我がこれ程の力を出せたのもお主が居たからこそなのだからな」


 それは本心からの言葉なのかどうかは、ソフィの表情を見れば一目瞭然であり、王琳は浮かべていた笑みを消した。


「おいソフィ……。まさかとは思うが、こんな程度で俺が終わると本気で思っているのか? そうだとしたら流石に気分が悪いぞ?」


「ほう? こんな状態に陥って尚、お主はまだ諦めておらぬと言うのか?」


 王琳の言う通り、ソフィはもう勝負がついたと考えていた。


 あっさりと命を奪える程の『殲滅魔法』を数百と用意しており、その中心に居る王琳は『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』によって全ての『魔』を封じられている。()()()()()をあっさりと打破出来る程、自分の『魔法』は甘くはない筈だとソフィは確信している。


 そうだというのに王琳は、機嫌を害した様子で()()()()()()と言わんばかりにソフィを睨みつけていた。


「いいだろう……。お前らは『魔』の概念技法が()()()()()だと考えているようだが、その考えを正してやる。オーラや魔の概念技法など、所詮そんなものは()()()()()()()()()()()()()()()()に過ぎぬ! 勝負を決める程の大事なモノとは、最初から()()()()()()()()()()()()


「むっ――!?」


 人型であった王琳は『()()()()()姿()に戻ると、その場で大きな咆哮を上げた。


 次の瞬間、ソフィの身に悪寒が走り、咄嗟に魔法陣の発動を行ってしまう。


 ――それは無抵抗となった相手に対して、あまりにも残酷と言える過剰な殺戮行為。


 だが、ソフィが咄嗟に下した判断は何も間違っていなかった。


 何と本来の妖狐の姿に戻った王琳は、次々と放たれたソフィの『殲滅魔法』をその身に全て受け続けて尚、その目には光が宿り続けており、消える事なくソフィに視線を向け続けていた。


 そして爆発で生じた煙が暗幕の代わりとなって王琳の姿を隠してしまうと同時、まさに刹那と呼べる時の間に、その場から王琳の気配が消え失せてしまい、次の瞬間にはソフィの肩に鋭い痛みが走った。


「ぐぬっ……!?」


 痛みを堪えるようにソフィは、片目を閉じながら自身の右肩に視線を送ると、右肩から腕の先までが全て消失していた。


 どうやらあの一瞬の間に『魔力吸収の地』から抜け出した王琳が、そのままの勢いでソフィに襲い掛かり、右腕を食いちぎってしまったという事だろう。


 しかしすでにソフィの周りに王琳の『魔力』は感じられず、この場から完全に姿を消したのだと彼は理解する。


 今もまだ先程のソフィの合図で高速回転を続けて発動を続けている魔法陣が、次々とこの世界を殲滅しようとばかりに大爆発を生じさせているが、もうこの場所に王琳が居ない以上は何も意味がないだろう。単にこの隔絶された空間に対して破壊行動を行っているに過ぎない。


 ソフィは改めて付近に王琳が居ない事を確認すると、左手で新たに合図を出して残っている魔法陣を消し始めた。


 ――その時だった。


「えらく余裕を見せているが、相手がこの俺だという事を忘れるなよ?」


「!?」


 しっかりと確認を行い、この周辺に王琳の姿が居ないという事を確かめた筈だというのに、いつの間にかソフィの真後ろに人型に戻った王琳が立っていた。


「さて、次は俺の番だな。この程度で死ぬなよ……?」


 ――『狐火』


 最後に聴こえた王琳の言葉の後、背に温かいモノを感じ取ったソフィだった。


 そしてその温かかったモノがいつの間にか熱さに変わっていき、やがてソフィを炎柱が包み込んで大炎上を果たすのだった。


 ……

 ……

 ……

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