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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
停滞からの脱却編

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193.力を求めて

※加筆修正を行いました。

 リーネとスイレンがソフィ達に修行をつけてもらっている頃、ラルフはベア達の元を訪れていた。


 現在ベアや他の配下達は、シティアスの入り口付近にあった拠点を使って寝泊まりしている。


 四百を越える配下達であったが、ソフィやシス達が逐一様子を見に来てくれており、食料や水といった物も届けてくれるので何も不自由はしていなかった。


 そしてベアは今日もまた『シティアス』を守るように辺りを警戒していると、見知った魔力を持つ存在が近づいてくるのに気づいた。


「ラルフ殿……?」


 いつものように微笑を浮かべているラルフだったが、少し違う気がするベアであった。


「ベア……。すみませんが少し、私の修行に付き合ってもらえませんか?」


 その言葉を聞いた『ベア』は直ぐに彼の心境を悟った。


 彼はリディアという目標だけではなく、ソフィ様の直属の配下の中でそのソフィ様の一番の配下を目指している。


 つまり人間の身でありながら、最上位魔族に匹敵する程の力を求めてここに来たのだろう。


 ――すでに現在の時点でラルフの戦力値は()()()()を越えている。


 人間として()()()()()()()()限界点に達しているのかもしれない。


 目標の達成を果たしたり、その者の目指す場所の限界地点と言うべき天井が見えてくると、自らの研鑽よりも後継者を作ろうとするものが多いが、ラルフの目標はどちらも険しい道のりであり、天井が見えてきている現状で到底達成できる目標ではなかった。


 分相応という言葉があるが、あまりにもラルフの目標は人間の身では少々荷が重すぎる。


 相当悩んでいるのだろうとベアは察するが、それを彼の前では決して口にはしない。


「私達に出来る事ならば協力しますよ。我らは同じ主を持つ者同士ですからね」


 ベアの言葉はラルフには有難かった。


 何より『同じ主を持つ者同士』というベアの言葉は、彼の意欲を一層高めてくれた。


 ラルフにとってソフィという存在は出会った時とは比べ物にならない程大きくなっており、この者の為ならば命を投げ出しても構わないと思える程になっていた。


 更に彼はそんな主に命を救われている。あの瞬間からラルフにとって、ソフィを生涯の主と決めていた。


 そしてそんな主の為の刃となるには、このままでは力不足であると判断した。


 人間である以上限界はあるのかもしれないが、それでも同じ人間の()()()()には負けられない。


 最低でもリディアを越えていなければ、ソフィ様の一番の配下などと口には出来ないと思っているのであった。


 ベアは視線で他の配下達を見る。ただそれだけで『ロード』の五体が集まって何かを話し始めた。


 そしてソフィから直接『名付け(ネームド)』をされた『ロード』の一体であるハウンド・ドッグの『ハウンド』が、自分の同胞達数匹を指名してラルフの前に出させた。そこでベアが口を開いた。


「ラルフ殿、まずはハウンドの配下達三体を相手に戦い、無傷で勝てるようになって下さい」


 ハウンド・ドッグ一体の戦力値は約500万程であり、今のラルフの戦力値とあまり変わらない。


 そのハウンド・ドッグ三体を相手にしろとベアは言う。


 無謀とも思えるベアの提案だが、何もラルフを嫌って無理難題を言っているわけではなく、ベアはラルフに強くなってもらうために言ったのだった。


「分かりました。ご協力感謝します」


 そう言ってラルフが殺気を放ち始めると、ハウンド・ドッグ達もまた唸り声をあげながらラルフを取り囲んでいく。


 最初の一回目は一匹を倒した末に、二匹目と相討ちとなり、三体目に足を噛みつかれて動けなくなったところを首元に襲い掛かられてラルフの負けとなった。


 治癒魔法を使える者がこの場に居ない為に手持ちの薬草を使い、少しずつ傷を癒しながらラルフは連戦を挑んでいく。


 戦場で待ったなど出来ない為に傷を治しやすいように、ダメージを受けるのも技術であり、勝っても負けても満身創痍になるような戦い方をしてはいけない。


 ――この訓練はまさに実戦の演習になるとばかりに、ラルフは満足気に頷くのだった。


 …………


 何度目になるだろうか。既に日が暮れた後も死闘演習は続く。


 そして夜が明けようと空が明るみ出した頃、その場にラルフは倒れこんだ。


 ここまでハウンド・ドッグは、入れ代わり立ち代わりとラルフの相手を務めており、既に何度も無傷で三体を相手に倒せるようにもなった。


 ベアやハウンドは、その様子に驚いていた。


 一回でも成功すれば合格ラインのつもりでこの課題を出したのだが、ラルフは一度成功しても二度成功してもやめる気配などがなく、休みなく延々と三対一の状況で連闘し続けて、遂に先程70体を越えるハウンド・ドッグを相手に無傷で倒しきったのだった。


「な、何という戦闘センスだろうか……。ラルフ殿が既に人間の成長出来る限界点に近づいているのだろうと勝手な事を考えていたがとんでもない。むしろラルフ殿はこれからが本当の成長期だったのだ……! 戦えば戦う程、強い者と死闘をすればする程、彼は際限なく強くなることが出来るようだ」


 ベアは驚きからそう言葉を漏らしてしまう。


 ハウンド・ドッグの戦力値は、一体一体が500万を越える。


 対してラルフの戦力値も600万程であった筈であり、単純に三対一では相手にすらならない筈であった。


 ベアはあくまで回避の技術を向上させる事から始めていくつもりだったのである。


 しかし実際にやってみればラルフはたった一日にして、無理難題をクリアするばかりか、それ以上の事をやり遂げて見せたのだった。


「いいか……? ハウンド。次はお前がやれ」


 【種族:ロード・ハウンド・ドッグ 名前:ハウンド(ソフィの名付け(ネームド)

 魔力値:1221 戦力値:3220万 所属:大魔王ソフィの直属の配下】。


 ――次からは直接ソフィから名前を頂戴した、五体の『ロード』の一体となる。


 戦力値だけで言えば『最上位魔族の最上位』という階級(クラス)になり、あの『レルバノン』や『シーマ』前魔国王と肩を並べる程の『魔物』である。


 一日前のラルフであれば『ハウンド』には全く相手にならずに負けていただろう。


 もちろん本気で殺し合う訳ではないが、実戦に近い演習をするために手を抜くわけではない。


「グルルル……」


 ベアの言葉に頷いて見せる『ハウンド』であった。


(しかし流石にこの状態で『ハウンド』とやらせても逆効果ではないだろうか)


 ベアは初めて自分から『念話(テレパシー)』で自分の主を呼び出すのだった。


(ソフィ様、夜分遅くに失礼します)


 …………


 そしてベアが『念話(テレパシー)』を終えた後、満足気に主の言葉を守り、治癒魔法を使えるユファが来るまでの間は、ラルフを守るように隣へ移動しながら周囲の警戒を行い、その場に寝そべるベアであった。

※ラルフもまた、潜在能力は並外れていたようです。


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