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1986/2213

1969.本格的に動き始めた者

「皆様、到着しました」


 ここまで案内を行ってくれていた五立楡は山の洞窟の前で足を止めると、頭を下げながらそう告げた。


 広大な妖魔山を移動するソフィ達は、出発してからもう何度目か分からない橋を渡り、森や高原を歩かされながらようやく目的地となる場所へと辿り着いたようである。


 そこは会合の場が行われた場所ともまた異なり森の中というわけでもなく、煌阿が封印されていた洞穴に近い印象がある山の洞窟だった。


 しかしここに来るまでにも何度か似たような場所を通ってきた為、ここだと告げられなければ絶対に分からなかっただろう。


「ふむ。見事な『結界』の使い方だ。ここに来るまで私でも意識していなければ気づかぬ程のごく僅かな認識阻害させる『結界』を道に用いていたようだが、それに続いてこの洞窟の中に起点となる『結界』で隔絶された空間を生み出しているというわけか。これでは流石に気づける者は限られてくるだろう」


 シギンは感心するように洞窟の中に視線を向けながら説明を行う。どうやらその口振りからここに来るまで通ってきた道にも無意識にここに辿り着かないように阻害の役割を担う『結界』が用いられていたようである。


 かつて『リラリオ』の世界で規模そのものは違うが、()()()()()が森の中に張っていた『結界』と似たようなモノのようである。


 レルバノンの方は、迷路のように同じ所をぐるぐると歩かせて迷わせる事を目的としているようだが、こちらの方は規模そのものが違っていて、そもそもが入る事すら難しい。そんな意識阻害を受けた先の場所に、更に会合が行われた場所のように、目に見えるモノと異なる隔絶された空間に跳躍(とば)されるというのだから、何も知らずに偶然入るという事は有り得ない。


 つまりは案内なしでここに辿り着ける者は、それだけで『魔』の概念理解度がそれなりに有るものだという事の証左となるであろう。


 シギンやイダラマ、それにエイジといった最上位の妖魔召士の資格を有する者達は当然に気づけていたが、もしこれがシゲンやミスズであれば違和感を感じる事くらいは出来るかもしれないが、明確に正しい道を選択してここに辿り着くのは至難であっただろう。


 そんな中でソフィは直感、ヌーはそのソフィの直感で何度か視線を向けていた場所から理論的に阻害の区分を割り出して気づく事を可能としていた。


 そしてイツキやエヴィは双方共に『結界』の事などどうでもいいと言う風に、分かっていながらもそちらに意識を向けなかった。


 しかしこの両者は互いに似た結論を抱いたが、その過程は全く異なっていて、エヴィはソフィと一緒であれば何処へ向かおうがどうでもいいという理由だったが、イツキはどちらかと言えばヌーの行った事に近しい事を行っていた。


 ――それは、ソフィが反応を見せた時の行動の模倣である。


 ソフィが直感で動かす視線の先を見据えたり、普段の無意識に動かしている手や足の動かし方、つまり警戒的な事に対する普段の受動的な身体の動かし方など、まるでソフィという魔族そのものを根本から人間である自分に当てはめて、物事を考えようとするかの如くにイツキはソフィを意識し続けていた。


 当然エイジはこのイツキのソフィに向ける視線に気づいていたが、先程のやり取りを経た事でわざわざ何かを物申したりはせず、むしろイツキがこの後にどう変わるのかを見届けようとするのだった。


 このようなイツキが見せている形から入る真似事など、普通の妖魔召士たちからすれば、如何に無意味な事を行っているのかと失笑を行うようなものであったが、そこに『金色の体現者』が持つ『特異』が絡む事であれば話は変わってくる。


『金色の体現者』は、その存在が生まれた時に天が才能を与える贈り物のようなものであり、与えられなかった者には決して計り知れない『力』が宿る。


 単に『魔力値』や『戦力値』が変貌するといった単純なものではなく、これが戦争時の話であれば、体現者が現れた時点で局面が一方的になる事もある程なのだ。


 どうやらイツキは妖魔山にある『鬼人族』の集落から意識の改革が行われたようで、本格的に強くなる為に、イツキが化け物と呼んでいた『大魔王ソフィ』の強さの源を模倣しようと動き出したようであった。


 ――このイツキの行いが単なる道化で終わるのかどうかは、この時点では誰にも分からなかった。


 ……

 ……

 ……

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