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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖狐の王編

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1983/2216

1966.喜びも一入

 先にソフィと戦う場所へと向かった王琳は、ソフィ達が居る森からは反対の方角にある山の裏側にある洞窟の前に来ていた。


 当然この洞窟の中で戦うというわけではなく、ここも会合が行われた森の中と同様に『結界』を用いており、その隔絶された空間の内側が、此度の決戦の場に選ばれたようであった。


 王琳がその洞窟の入り口に赴くと、王琳の眷属にして六尾の『六阿狐(むあこ)』が彼の前に姿を見せるのだった。


「お待ちしておりました」


 六阿狐は主の王琳の前で跪きながらそう告げた。


「ああ。邪魔を入らせぬように、準備は終えているな?」


「はい! 王琳様とソフィ殿の決戦の場を山の者達に悟られぬように、すでに()の眷属共を山の至る場所に派遣させております」


「そうか。まぁ三目妖族の『十戒(じっかい)』殿や、かつての翼族共と他種族の間で中継役を担っていた『黄雀』の連中共には遅かれ早かれ場所が割れるだろうが、俺とソフィの戦闘が終わるまでの今日一日を持たせられたならば、それで十分だからな」


「お任せください。王琳様はソフィ殿との戦闘だけに意識を向けられますように。妾達が王琳様の『力』の一切を外に漏らさぬように尽くします故」


 王琳はその六阿狐の言葉に、感心する様子を見せた。


「どうやらお前や五立楡もソフィ達と関わってから、随分と良い方向に成長しているようだ」


「え?」


 突然に敬愛する主から褒められた六阿狐は、その理由が分からずにおもわず主に疑問の眼差しを向けてしまうのであった。


 そしてその六阿狐の反応を見た王琳は、更に満足したようだった。


「ふふ、お前達が俺の側近になる日は近いと思っただけだ」


「!?」


 流石に予想外すぎたその言葉に、嬉しさより先に驚きに息を呑む六阿狐だった。


「もうすぐ五立楡(ごりゆ)がソフィ達を連れてここに来るだろう。その場に居る者達は例外なく決戦の場に入れよ。俺が許す」


「は、ははっ!! 仰せのままに!」


 六阿狐が跪きながら頭を下げて王琳に返事をすると、彼はそのまま六阿狐を一瞥した後に、洞窟の中へと入っていくのだった。


 その後ろ姿が見えなくなった後、六阿狐はその場で立ち上がると同時、頬を緩ませ始める。


「や、やった……! ()()……っ! や、やったぁ、やったぁ!!」


 誰も居なくなった洞窟の前、六阿狐は嬉しそうな声を上げたかと思えば、諸手を上げてその場でクルクルと回り始めるのだった。


 どうやら今頃になってようやく、主の言葉に実感が湧いてきたのだろう。


 山に生きる全ての妖狐達は当然の事、王琳の直属の眷属達であっても『側近』と名乗る事だけは許されないのだ。


 王琳の『側近』を名乗れた者は、この数百年、数千年間を省みても『七耶咫(なやた)』と『耶王美(やおうび)』の両名しか居ない。


 そんな妖狐の王である『()()』の『()()』になる日も近いと、直接本人から告げられたのだから、その感動も一入(ひとしお)というものだろう。


 嬉しさをこれでもかとその場で表現し続けながら六阿狐は、遂には満面の笑みのままでその場で一人、涙を流し始めるのだった。


 ……

 ……

 ……


 数百年ぶりとなる王琳の強制召集が行われてからの数日、妖魔山では上から下に至る全ての場所で大騒ぎだった。


 その騒ぎの原因はやはり、王琳の会合の場での発言であった。


 人間を襲う襲わないに拘らず、人里へ近づくだけで王琳の命で動く妖狐達を敵に回す事となり、それが続けば今度はその種族の長を王琳が直々に襲い掛かってくると明確に口にされたのである。


 何か対策はないかと考える山の妖魔達もそれなりに多く居たが、中腹を管理する『天狗族』は消滅し、山全体の管理を行う『妖魔神』の両名も行方知れず、更にはかつての『三大妖魔』が担っていた『役』を一部持つ『三目妖族』とその種族の長である『十戒』が、王琳の下についた事で妖狐に反旗を翻そうと考える一部の種族の者達の万策は尽きてしまった。


 つまり当面の間は『王琳』の命令に背くわけには行かず、万が一にも自分の種族が人里へ近づかないようにしなければと、この数日間は山中が大騒ぎになっていたというわけである。


 やはり自分達の命に直接影響を及ぼす可能性がある以上、天狗族や妖魔神が居なくなった事よりも騒ぎが大きくなってしまうのは、この山に生きる『命ある妖魔達』にとって必然な事であり、当然の事なのだろう。


 もちろん山全体がこんな状態になっていても、会合に参加出来る程の資格がない種族達の中には未だに『妖魔神』達を手に掛けたと信じて疑わない『黒羽』の存在に対して怨恨を持っている者も居るのだが、周りがこんな状況では活動を広げるわけにもいかず、結局は大多数の思惑に呑み込まれて、少数派の思想は儚く散ってしまう事となるのであった。

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