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1982/2213

1965.決戦の場に向かう者達

「分かった……。お主がそれで納得するというのであれば、我はお主をリーネの元に連れて行くと約束する。だからいつまでもそのような真似をせずに頭を上げてくれ、ヒノエ殿」


 ソフィの言葉にヒノエは真剣な表情のまま頭を上げると、ソフィの目を見ながら一言感謝の言葉を告げるのだった。


 そのヒノエの目に宿る決意の色を見たソフィは何を言うでもなく、じっとヒノエの感情に応えるかの如く、視線を交差させ続けるのだった。


 やがてソフィとヒノエは同時に視線を切ると、互いに笑みを浮かべ始めた。


「さて、それでは我はあやつの元へ向かうしよう。ヒナギク殿もそれで構わぬか?」


 他にも何かあるならば、この場で告げておいて欲しいと暗に伝えるソフィであった。


「い、いえ……。もう私からは何もありませんわ。この度は本当に申し訳ございませんでした」


「いや、お主がヒノエ殿を想い行動を起こしてくれた事で、我はヒノエ殿に伝えてねばならなかった事をこうして伝える事が出来た。まだヒノエ殿には続きがあるようだが、その事にも我は真摯に応えようと思う。だが、まずは王琳との決着を優先させて欲しい。あやつの事もずっと待たせてしまっているのでな」


「は、はい」


 ヒナギクはソフィに返事を行う直前にヒノエの方を見たが、彼女が頷いた事でヒナギクも首を縦に振ったのであった。


 そうしてヒナギクが返事をするのを見届けた後、その場に居る全員が部屋の外に出るのだった。


 部屋を出たそこには五立楡(ごりゆ)が、正座をしたまま目を閉じた状態で待ってくれていた。


 ソフィ達が出て来るのを見ると、その場から立ち上がった五立楡は口を開いた。


「ご用事は無事に済ませられましたか?」


「うむ。お主にはこんな廊下で待たせてしまい、本当にすまなかったな」


「いえ、主の命令ですので。それでは中央堂の間に戻りましょう。主がお待ちです」


 五立楡はそう言ってチラリとヒノエの方を一瞥すると、他者が気づかぬ程の微々たるものだが、僅かに眉を寄せて敵意とも呼べない本当に小さな負の感情を一瞬だけヒノエだけに見せると、何も言わずにその場から主の居る部屋へと歩を進め始めたのであった。


 ……

 ……

 ……


 ソフィが中央堂の間に戻って来ると、その場に居た全員が話を止めて入り口に視線を向けたのだった。


「戻って来たか。どうやらその様子だと無事に解決したようだな?」


 一番最初に口を開きソフィに声を掛けたのはやはり王琳だった。その落ち着いた様子の言葉とは裏腹に、彼はソフィがこの部屋に姿を見せるまでは、何度も入り口の方に視線を向けたりとソワソワした様子を見せていたのだった。


「ああ。ひとまずはお主との戦いに集中出来る状態は保つ事が出来そうだ」


「それは重畳(ちょうじょう)。こちらも戦う場所の準備は整え終えている。もうお前の準備が出来ているのなら、このまま案内しようと思うが構わぬか?」


「うむ。お主らもまたせてすまなかった」


 ソフィはそう言って王琳だけではなく、待たせていた全員に謝罪を行うのだった。


「一応伝えておくが、俺とソフィの戦闘の余波でこの場に居る誰かが死のうとも一切の責任は持たぬ。これから向かう場所へは死ぬ覚悟を持った奴だけ来る事だ」


 王琳はこの部屋に居る全員を視界に入れながらそう告げるのだった。


 彼がわざわざそう告げたのには、王琳にとってはソフィとの決戦は待ちに待った機会であり、その場に相応しくない者達に一緒に来られる事で、煩わしさを抱きなくないと考えたからだろう。


 それは予めこの場で断っておく事で、余計な者達をソフィと戦う場所へ連れて行きたくないという、王琳の意思表示であった。


「俺は先に向かうが、よく考えて死ぬ覚悟が定まった奴だけ改めて来るがいい。俺の眷属共が場所を知っている」


 そう言って王琳はその場所から一瞬の内に消え去った。彼が口にした通り、移動の際の道案内は、彼の眷属に任せるという事なのだろう。


 王琳が居なくなった後、今の話にイダラマの護衛達は、不安げに仲間内で話し始める。


「一応は我が蘇らせる事は可能だと思うが、出来れば自信のない者は向かわずに、この場に居てもらった方が良いだろうな」


 王琳だけではなく、その戦闘相手であるソフィにもそう言われた事で『イダラマ』の護衛達は、残る決意を固めたようであった。


「それでは妖魔退魔師からは私と総長が向かいます。申し訳ありませんがキョウカ組長達は、彼らを見張っていて下さい」


「仕方ないわね。まぁ、どうせ私達が行ってもどうしようもないだろうし、分かったわ」


「そうだね。ソフィ殿の勇姿を見られないのは残念だけど、副総長の言葉に従うとしますか」


「ソフィ殿、絶対負けないでくれよ!」


 ミスズの言葉にキョウカやスオウも納得した様子であり、ウガマ達を見張るという理由でこの場に残る事になったのであった。


「ではワシも残るとしよう。イダラマの護衛連中には妖魔召士というわけではないが、それなりに腕の立つ退魔士も居るようだしな?」


 ゲンロクはイダラマと共に居る退魔士達を一瞥しながら、そう口にするのだった。


 もちろん今更護衛であるウガマや退魔士達も暴れるつもりはなく、ゲンロクにそう言われても何とも思わずに受け入れている様子であった。


「当たり前のように行く気を見せているがよ、てめぇも残った方が良いんじゃねぇか? クソ雑魚」


「うるせぇよ、それはてめぇも同じじゃねぇのか?」


「馬鹿言ってんじゃねぇよ、てめぇも俺がソフィの魔法を打ち消したのを見ていただろうが、俺をてめぇみたいなクソ雑魚と一緒にすんじゃねぇ」


 それは煌阿(こうあ)に『力の魔神』と戦う幻覚を見せられていたソフィの『絶殲』をヌーの新たな新魔法によって、相殺して見せた時の事を言っているのだろう。


「ちっ……!」


 確かにイツキもあのヌーの『魔法』には驚かされた口である為、あれを引き合いに出されては何も言えなくなってしまったようである。


 結局それでもイツキも向かう事にしたようであり、妖魔退魔師組織からはシゲンとミスズ、妖魔召士組織からはエイジ。それにシギン、イダラマ、ヌー、テア、エヴィと、妖狐達を除けば九名の者達が共に、ソフィと王琳の戦う場所へと向かう事となるのであった。

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