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1959.ソフィの願望を叶えられる存在

 シギンとの話を終えて用意されている自室へ戻ってきたソフィは、再び現世に姿を現した後、ずっとモノを言わぬままついてきていた魔神に話し掛けるのだった。


「明日は遂にあやつと決着をつける日となるが、いったい王琳の奴は何処まで我の力を引き出してくれるだろうか……」


「――」(貴方が意識をしっかりと持った状態で戦う事を念頭に置けば、間違いなくここ数千年間で一番の激闘となるでしょうね……)


 魔神はそう口にすると溜息を吐くのだった。


 ソフィがこれまでより力を示すという事はつまり、魔神がかなり強固な『結界』を展開し続けなければならなくなるという事であり、これまで以上の負担がかかるのは間違いない為、彼女が溜息を吐きたくなる気持ちは十分に理解が出来ると言えるのだった。


「すまぬな、しかし我は王琳の奴との戦闘で、本気となった時の我自身の『力』というモノをある程度は把握出来る事となるだろう。つまり結果がどうであれ、我自身の願望に区切りをつけられるようになるというわけだ。これが最後なのだと思ってお主も協力をしてくれると嬉しい」


「――」(ソフィ……)


 裏を返せばソフィはもう、これ以上の相手が出て来る事を諦めているという意味にも取れる為、ソフィの気持ちを理解している魔神は素直に言葉通りに受け取る事が出来ないでいた。


「それにしても我はリラリオの世界に跳躍()ばされた時にも色々と驚いたものだが、この世界は更に驚く事が多い世界だったな。特に人間の強さの可能性を見る事が出来た。純粋に魔法使いという枠組みではシギン殿は類を見ない程の概念理解度を誇っておるし、物理で言えばシゲン殿にミスズ殿は、間違いなく現在の時点でもすでに素晴らしい完成度だと思える」


「――」(ええ……)


 しかしソフィのこの言葉は、そんなシゲンやミスズの完成度でさえ、自分が本気になるには程遠いものだと確信を抱いているのだと魔神は理解が出来てしまい、複雑な気分で肯定の意を示す魔神であった。


(世界の安寧や調停だけを考えれば、元執行者としての私は喜ぶべきなのでしょうけど、理解者としての私は、今の気持ちを吐露しているソフィに決して喜ぶ事は出来ない。もしあの『超越者』がソフィの最後の希望なのであれば、私もソフィには後悔のないように思う存分本気になって戦って欲しいと願うわ)


 普段であれば決してソフィが本気で戦う事に諸手を上げての賛成が出来ない魔神だが、今回ばかりは力の魔神も全力を出せる相手であって欲しいとまで願うのであった。


「――」(ソフィ、今回の戦闘だけど、この隔絶された空間に加えてこの私が居るのだから、何も遠慮せずに本気で戦って欲しい。何かあっても必ずこの私は最後まで貴方の味方だから遠慮しないでね?)


 真剣な表情でそう告げる魔神があまりにも新鮮だったようで、ソフィも呆けた表情で魔神を見つめるのだった。


「クックック……。お主がそんな風に言うとは思わなかったが、実際にお主に言われると、こうも頼もしく思えるのだな」


 満面の笑みを浮かべたソフィは、心の底から嬉しそうに大きく魔神に頷いて見せる。


「これでもう何の憂いもなくなった。あやつの……、王琳次第ではあるが、奴が我の想像を超える強さであった時、我は全力で戦うとお主に誓おう」


 そのソフィの言葉には一切の偽りが含まれていないのだろう。それが証拠に今ソフィの身体を覆う『青』のオーラには、これまで彼が宿した事のない『鉄紺(てつこん)』の色が宿っていた。


 ――それはつまり、彼が生を受けてこれまでの生涯で初めて『強さ』という概念に対して『挑戦』する意識を持ったという事だろう。


 確かに『王琳』程の強さを持った者が決して多く存在していない事は確かであるし、ソフィが大魔王レキや、リディアにラルフに期待を寄せた事も間違いではない。


 しかしレキは現状では代替身体の身であり、本来の強さを持つレキと戦えるのはまだまだ先の話になってしまうであろう。


 そしてリディアやラルフも潜在性はとてつもないモノを秘めてはいるし、今より遥かに強くなるとソフィも間違いなく感じている。


 だが、リディアもラルフも惜しむらくは、やはり『人間』の持つ寿命というところに帰趨してしまうのだ。


 当然彼らが寿命を迎えるまでに『シゲン』や『ミスズ』達のようにある程度『形』が完成する可能性もなくはないのだが、間に合わない可能性も必然的に残っている。


 つまり代替身体(だいたいしんたい)となっている『レキ』にしても、神が定めた人間の『寿命』に囚われてしまっている『リディア』や『ラルフ』にしても、王琳と戦うのを明日に備えた今のソフィと戦うには、まだまだ時間が足りていないのである。


 現状において今のソフィの願望に対して期待に応えられる可能性があるのが、必然的に『王琳』だけなのであった。

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