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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖狐の王編

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1974/2223

1957.今後の行く末

「次にエイジにゲンロクよ、お主らに集まってもらったのには、今後の妖魔召士組織について話をしておかねばならぬ事があったからだ」


 どうやらエイジやゲンロクがここに集められた理由は、ソフィ達の『転置宝玉』の話とは別であったらしい。


「「な、何でしょうか?」」


 いきなり真剣な表情をしたシギンに話し掛けられたエイジ達は、不安そうに返事をするのだった。


「私が組織の長の座を降りて直ぐ、例の『妖魔団の乱』が原因で妖魔召士組織と、妖魔退魔師組織の間に大きく亀裂が入り、互いに袂を分かつ事となったな?」


「は、はい。それでも長らくは政治的な面で互いに相容れぬ間柄であったぐらいでしたが、お恥ずかしながらワシが長を務めていた時代に、歴史上で初となる武力を伴った戦争状態にも突入させてしまいました……!」


「しかしシギン様、ゲンロク殿はその責任をしっかりと自分で取ってみせて、小生が長の座を継ぐ頃には改めて局面を休戦状態へと持っていき、現在は比較的良好な関係を保つ事が出来ております。その証拠に今回の妖魔山の調査では、我々と共に妖魔退魔師組織の総長と副総長の立場にあるシゲン殿とミスズ殿、それに主だった幹部である組長格の者達とも足並みをそろえて――」


「ああ、その事も勿論分かっている。少し落ち着けエイジよ、私は別にお主らが妖魔退魔師組織と袂を分かった事に対して、怒っているわけではないのだ」


 エイジは妖魔召士組織と妖魔退魔師の関係を悪化させたゲンロクに対し、シギンが苦言を呈するのだと勘違いした様子であり、慌てて弁明をしようとしたところをシギンに誤解だと告げられたのだった。


「これまでに起こってしまった事を今更悔いても仕方あるまい。そんなものより今後の両組織の在り様について少しだけ助言を行っておきたかっただけなのだ」


「そ、そうでしたか……!」


 ゲンロクが叱責させられるのだと早とちりをしそうになったエイジに、横で聞いていた張本人であるゲンロクは、そんなエイジの肩に手を置いて感謝するように首を縦に振るのだった。


「私もこの山で生活をするようになり、人里の事に対してはお主らに任せっきりになってしまったが、色々と里の情勢については調べてはいた。しかし実際に今回お主らやシゲン殿達と行動を共にした事で、両者の間に軋轢等といったモノもないように感じられた。特に妖魔退魔師組織の総長の座に居るシゲン殿に、副総長の立場のミスズ殿はしっかりと話をすれば、お前達と十分に分かり合える者達だと私は理解した」


 特に副総長ミスズに至っては、エイジが斗慧に乗り移られそうになった後の慌てように、無事だと分かった後の安堵する姿を見て、まるで同じ組織の『仲間』に対する接し方だとシギンには感じ取れていた。


 これがまだ両組織に不和が生じる状態が続きそうであれば、シギンもここで口出しをするつもりはなかったのだが、今きっちりと話をすれば、シギンが長を務めていた時代のように、両組織の関係を修復させる事が出来ると踏んだようでこの場にエイジやゲンロク達を集めたのであった。


「今回の出来事は妖魔召士組織、延いてはこの世界に生きる人間達にとっての重大な転換期を迎えている。ソフィ殿達のおかげもあって、妖魔山は当面の間は人里を襲ってこないだろう。新しく山の長の座に就いた『妖狐族』の『王琳』自身がそう決断した以上は間違いない。しかしそれはあくまでお前達の代までが精一杯と言える約定に過ぎぬ。だから良いかエイジよ、この与えられた猶予の間に妖魔退魔師組織と関係を取り戻しておくのだ。同盟という形でもいいが、出来れば私達の時代までの時のように、一つの組織として動ける事になるのが理想だ」


「そ、それは……、し、しかし……!」


 途中まではエイジもゲンロクもシギンの話に納得しかけていたが、最後の両組織を合併して一つの組織になれと言う話には素直に頷けなくなってしまうのだった。


 これがまだゲンロクの代に成り代わった時辺りまでに出る話であったのならば、まだ何とか出来たかもしれないが、妖魔団の乱の一件、加護の森での一件、そして武力を伴う戦争状態に突入させてしまった『ヒュウガ』が起こした乱の一件、数々の後戻りが出来ない事件が連なってしまった事により、シギンまでの時代の時のように、妖魔退魔師達を護衛にしていた時の妖魔召士組織に戻るのは、到底不可能だと感じてしまうのだった。


「し、シギン様……! 今更ワシらが妖魔退魔師達に妖魔召士組織の護衛に戻れと言っても、素直に奴らが戻るとは思えませぬ……」


 口籠ったエイジの代弁をするように、同じ気持ちを抱くゲンロクがそうシギンに告げるのだった。


「……」


 そこでシギンは無言でゲンロク達と視線を合わせる。やがてシギンは、儚く笑みを浮かべた後に、二人に頷いて見せるのだった。


「そうか、そうだな……。引退した身となった私が、今更現役の組織を束ねる立場に居るお主らに無理を通すわけにもいかぬな。だが、それでも今後は出来るだけ妖魔退魔師組織の者達とは、協力関係を結べる同盟だけは、続けられるように考えて欲しい。これは組織の事を考えるだけではなく、この世界に生きる人里に居る人間達の為なのだ。今後の行く末を考えれば、両組織の在り方は非常に重要になってくる。それだけは留めておいて欲しい」


 かつて妖魔召士組織を束ねた長のシギンは、当代と先代の妖魔召士組織の長たちに妖魔退魔師組織との同盟の確立を固く求めるのだった。


「「わ、分かりました……!」」


 エイジとゲンロクは、ここまで真剣な表情で口にするシギンの言葉を無碍にしないようにと考えて頷くのだった。


「それでは私からの話は以上だ、ここまで付き合ってもらって感謝する」


 シギンはそう告げると、一堂を解散させるのだった。


 一番最初に部屋を出て行ったヌーやテア達に続く形で、ソフィにエヴィと次々と自分の部屋へと戻って行く者達を見届けるシギンだが、彼だけは最後までその場を動かなかった。


 やがてシギンを除き、誰も居なくなった『中央堂の間』に一体の妖魔が入ってきた。


「全く君は心配性だね。いや、()()()()()って言った方が近いのかな?」


 その入ってきた妖魔の『神斗』はシギンの顔を見るなり溜息を吐いて、呆れるようにしながらそう告げてくるのだった。


 ……

 ……

 ……

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