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1954.大賢者ミラの魔の概念技法

 イダラマから当代の妖魔召士の長となったエイジに『転置宝玉』が渡されるのを見届けると、大魔王ヌーは興味深そうにそのマジックアイテムの名を口にするのだった。


「うむ。サイヨウから聞いた話だが、どうやら根源の玉は元々この世界にあったものらしく、本当の名は『転置宝玉』と言うらしい。お主らが目にしていた『転置宝玉』は、どうやら大賢者ミラか、煌聖の教団(こうせいきょうだん)の一派の者達がこの世界から奪って持ち帰ったモノのようだ」


 この世界に来る前、転置宝玉を渡す時にサイヨウから聞いた話をヌーに伝えるソフィであった。


「そうかよ……。ま、アイツは『煌聖の教団』を強固にしようとして色んな世界を周ってやがったからな。幹部を揃える為にこの世界にも来ていたのかもしれねぇな」


 どうやら大魔王ヌーは相当古くから大賢者ミラと『煌聖の教団』の事を知っていたようであり、幹部が揃う前の組織に詳しい様子であった。


「なるほど。サイヨウが我の持っていた『転置宝玉』を手に取った時に『リラリオ』の世界の刻印があった事で驚いておったが、あれはやはりこの世界から持ち出されたもので間違いがなかったようだな」


 当然ソフィも『転置宝玉』がこの世界のモノであるという認識を持っている為、誰かがこの世界から『アレルバレル』の世界に持ち運んだのだろうという事は理解していたが、どうやらヌーの口振りから省みて、この世界から『転置宝玉』を持ち帰ったのは、組織の総帥である大賢者ミラで間違いなさそうであった。


「私はその大賢者ミラという者が何者かは存ぜぬが、この世界から『転置宝玉』を持ち去ったという事であるのならば、当時の妖魔召士組織の長から手にした物で間違いないだろう。しかし『転置宝玉』は代々妖魔召士組織の長が独自に管理するものであり門外不出の代物なのだ。それを他者に、それも妖魔召士組織ですらない者に譲り渡す事など考えられぬ事だ。その大賢者殿がいつの時代の妖魔召士の長から手にしたのかは分からぬが、正規に手にしたモノであるとは考え難いのだが……」


 同じ妖魔召士の長であった『ゲンロク』もまた、シギンの言葉に同意だとばかりに頷いた。


「あの者であれば強引に奪った可能性が考えられるな。直接戦って奪ったのか、はたまた虚を衝く真似をして手にしたのかまでは分からぬが……」


「ああ。ミラの野郎は欲しいと思った物は確実に手にする奴だ。アイツは寿命の概念も死の概念も持たねぇからよ、その気になれば相手が如何に強かろうと、百年程度で寿命を迎える『人間』なら死を迎える時を待って時間で強引に解決も出来やがるしな」


 直接大賢者ミラとやり合ったソフィや、一度はそんなミラと同盟関係を結ぶにまで至った大魔王ヌーは、互いに頷き合いながら、間違いなく強引な手法で手にしたのだろうと口にするのだった。


「じゅ、寿命や死の概念がない……!? そ、その大賢者殿もお主らのように『魔族』だったのだろうか!?」


 シギンは大賢者ミラが強引に『転置宝玉』を妖魔召士の長から手に入れたという点ではなく、寿命の概念や死の概念がないと口にしたヌーの言葉に驚くのであった。


「いや、あの野郎は人間だ。いや、元人間って言った方が正しいだろうがな。他人の命を奪う事で自分の『死』を上書き出来る能力を持っていやがったんだよ。どういう能力なのかは俺も完全には知らねぇが、奪った命を何らかの『魔』の概念技法を用いる事で死を回避する事が出来ていた。それも『魔力枯渇』を引き起こしそうになれば、自らの命のストックを使いやがる事で『魔力』を回復させたりも出来ていやがったからな。俺が思うに奴のその能力は、リセットさせる状態ってのを予め用意しておいて、命のストックを用いた瞬間にその指定したリセットの肉体に戻す事が出来たんだろう。だから数千年と生きている俺より奴の方が年上だったが、いつまでも肉体年齢は出会った時から変わっていやがらなかった」


「うむ。我もあやつの事は『第一次魔界全土戦争』の頃から知っておるが、最近まであの時と変わらぬ姿のままであった事を記憶しておる。ただの人間がそれ程までに長く生きられるわけがないからな、ヌーの言う通りに奴は自分の能力を用いて寿命という概念を克服して見せておったのだろうな」


「じゅ、寿命を『魔』の概念で克服……」


 シギンは今の話を聞いてソフィ達に返事をするのではなく、自ずと思案の海に潜っていくのであった。


 彼はゲンロクが十代の頃に妖魔山に向かった時には、すでに三十代半ばを迎えていたのである。そこから決して短くない年月を迎えている為、見た目通りの初老程の年齢ではないのは間違いなく、寿命を『魔』の概念技法で克服する事が可能だと聞かされて関心を持たぬ筈がなかった。


「おい、シギンとか言ったか? てめぇの気持ちは分かるがよ、今は俺らを集めた理由をさっさと話やがれや」


「むっ、そうであったな。すまぬ……」


 未だに『ミラ』の用いていた『魔』の技法の事が頭から離れないシギンであったが、確かにここへ無理を言って彼らを集めているのだという事を思い出して、再び『転置宝玉』の話へと戻し始めるのであった。


 ……

 ……

 ……

※シギンは年齢に左右されない肉体を手にする事は出来ていたが、結局今まで寿命を克服する事は叶わなかった為、同じ人間の身でありながら、寿命を『魔』の概念で克服した大賢者に非常に興味を抱いたようです。


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