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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1960/2223

1943.別れの挨拶とキス

 妖魔達との会合が終わった後、最初にシゲンやミスズといった妖魔退魔師組織の人間が、王琳の眷属の妖狐達に案内されて人里へと戻って行った。


 どうやら総長のシゲンは妖魔神と直接戦い、自分がどれくらい強いのかを測った上で妖魔山からの危険を減らしたかったというのが本音だったようだが、それでも今回の調査の結果としては十分過ぎる程の功績であり、新たな妖魔神と呼べる地位についた妖狐族の王琳と直接約定を結ぶ事が出来た上に、シギンを通してではあるが、元妖魔神である『神斗(こうと)』からも人里へ妖魔達を襲わせないように協力してくれるという言質を取る事が出来た。


 しかし神斗の方はあくまで口約束のおまけ程度のものであり、当人もシギンが生きている間だけと口にしていた通り、そこまで信用しすぎるわけにはいかないだろう。


 あくまで本命の方は王琳頼りとなるが、こちらはソフィと戦う事が条件であった為に信用して問題はないだろう。


 もしソフィ達との戦いが終わった後、彼らが元の世界に戻った後から王琳が約束を反故にするような事があれば、人間達にとってはとんでもない事になり得るが、シゲンもミスズも王琳という妖魔と直に接してみてそんな真似をするような男ではないと判断した様子であった。


 ――そして実は副総長や組長格にも内緒にしている事ではあるが、総長のシゲンはないとは思いつつも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 表立ってはもちろんそんな素振りを見せてはいないシゲンだが、実は三日後の戦いを観戦したいと口にした事もこの事が関係していたのであった。


 王琳が約束を反故にしなければ万人が満足する結果となり、逆に反故にするような事になれば『シゲン』が満足する結果となるという事である。


 こんな結論を出しているからこそ、シゲンはすんなりと妖魔退魔師の仲間が待つ人里へと戻る事を良しとしたのであった。


 人々を守る筈の妖魔退魔師組織、それもこれまで多くの者達を守ってきた大きな実績をいくつも持つシゲンが『まさかそんな』と誰もが思う事だろうが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 当然こんな話をシゲンは誰にもしてはいないが、長い付き合いである副総長ミスズだけは、薄々とシゲンがこう考えているかもしれないと勘付いていた。しかし同時にそうなった場合でも何とかしてくれるだろうという信頼もあり、ミスズもまた表向きは何も気づいていない振りをして戻ったのである。


 元々、山の調査を行わなかったときの事を考えれば、王琳が約束を守ろうが反故にしようが、山の勢力というものを十分に把握出来た今回の調査は、妖魔退魔師達にとっては大いに収穫有りなのである。


 ――そしてまた別の話ではあるが、シゲン達が戻るにあたって少しだけ、ソフィにとってはある意味で頭を悩ませる事があったのだ。


 それはシゲン達が人里へ戻る事となり、ソフィが彼らを見送る為に『結界』の外の森に足を運んだ時の事であった。


「本当に世話になった。お主らのおかげで我はこうしてエヴィと再会が出来た」


「それはお互い様ですよ。我々もソフィ殿のおかげで王琳殿と約定を交わす事が出来たのです。ですからソフィ殿、我々は本当に感謝しています。いつでもサカダイに来てください。我々妖魔退魔師組織は、いつでも貴方を歓迎致しますので」


「本当に礼を言うぞ。三日後のあやつとの戦いを済ませた後、必ずまた礼をしにサカダイへ行くと約束しよう」


「ソフィ殿、先にミスズに言いたい事を言われてしまったが、本当にいつでも俺は貴方を待っている。これは世辞ではなく俺の本意だ、そこを忘れないでくれ」


 そのシゲンの言葉の本意に気づいたソフィは笑みを浮かべると、こう告げた。


「クックック、分かった。必ず覚えておこう」


「ふふ、待っているぞ」


 そうしてシゲン達の後に組長格の者達がソフィに声を掛けていた時であった――。


 先にソフィの事を気に入っているスオウが涙を浮かべながらソフィに礼を口にして、その後にキョウカと挨拶を交わし、最後にヒノエの番となった時に事件は起きた。


 ソフィがヒノエに空からの景色は満足が出来たのだろうかと、口にしようとしたその時だった。


 ――何とヒノエが小刻みに震える様子を見せた瞬間、ソフィの開きかけたその口を強引に彼女は唇で塞いでしまったのである。


「「!?」」


 その場に居た全員が声を失い、シゲンですら目を丸くして部下の行った行為に釘付けとなった。


 直接キスをされた張本人であるソフィも驚いていたが、目の前に居るヒノエの目から涙が流れていくところを見ると、ソフィは何も言わずにそのまま安心させるように優しくヒノエの背中に手を回して最後までヒノエのやりたいようにさせてあげるのだった。


 ……

 ……

 ……


 やがてソフィの唇から離れたヒノエは、言葉にならない程のか細い声で静かに『ありがとう』と言った。


 そして互いに僅かな間視線を交わし合った後、ヒノエの方から口を開いた。


「ソフィ殿! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()……っ!」


 そう言ってヒノエは頬を赤らめた後に踵を返すと、一番遠くからぽかんと眺めていたスオウの方へと走っていったかと思えば、そのまま何を見ていやがるんだとばかりに力いっぱい彼の頭をはたくのだった。


 どうやらそれは彼女なりの照れ隠しだったのだろう。遠くの方でスオウが何やら彼女に向けて非難めいた文句を大声で怒鳴っていたが、ソフィはそれを眺める事しか出来なかった。


 いつの間にか先に挨拶を終えて、シゲンと共に前を歩いて行った筈のミスズがソフィの隣に立っていた。


「ソフィ殿、どうやら彼女は本気で貴方を好いてしまったようです。貴方も忙しい身だという事は分かっていますが、全てが終わった後にどうか彼女に返事をして頂けないでしょうか? それがどのような結果であろうとも彼女は……、必ず受け止めるでしょうから。ですからどうかお願い致します」


 そう言って真剣な目をしたミスズは、深々とソフィに頭を下げた後にその場を去って行くのであった。


「まさかあの男勝りの暴力女組長が、乙女みたいな顔してアンタに接吻するたぁ思わなかった。おい、色男。どうすんだよ?」


 この場を見ていた他の者達が空気を読んで離れて行く中、空気の読めない人間(イツキ)が一人、ソフィの元に近づいてきてそんな事を口にする。


「我は既婚者なのだがな……」


「……あ、えっと。お、俺ちょっと()()があったの思い出した!」


 ニヤニヤと笑っていたイツキは、そのソフィの呟きにすんっと表情を戻したかと思うと、そんな事を口にして慌てて離れて行くのだった。


 その場に一人残されたソフィは去って行くイツキを眺めていたが、やがて木々の間から見える空を見上げて小さく息を吐くのだった。


 ……

 ……

 ……

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