1934.数多の世界の理と研鑽への効率性
「これでソフィ殿たちにも私がこの身体から感じていた『魔力』を感知出来るようになったのではないだろうか?」
神斗の身体に掛かっていた『魔』の技法による『隠蔽』をすべて取り除いたシギンは、ソフィの方を見ながらそう告げた。
「うむ、シギン殿。今は感じられておる。それにしても真に驚かされたぞ……。我達の世界では『魔力感知』を施せば、如何に『魔力コントロール』で持っている魔力を限りなく『0』にしても、感知を行う者の『魔力』がその対象よりも高ければ見つけられると思っていたが、シギン殿が『透過』を行わなければ、見つける事は叶わなかったであろう」
ソフィは感心したとばかりに少しだけ興奮気味にそう話すと、離れた場所で話を聞いていたヌーも腕を組んで複雑そうな表情を浮かべていた。
(ソフィの奴はシギンって野郎に『魔力』を感知出来る手筈があるなら使えと言われて、馬鹿正直に『魔力感知』だけを使っていやがったようだが、俺は確実に探れるように『漏出』を行っていた。しかし神斗って野郎の『魔力』の数値表記は最後まで表示されなかった。これはミラの奴が昔言ってやがった『時魔法』を用いた『時間術』による『効力の再現』って奴なのか? 術式を先に組み込んだその上に『魔』による偽装を行い、第三者からは見られなくしておいて暴かれそうになった瞬間に、その術式が発動するようにセットしておいたタイマーとなる『時間術』による『透過』を発動させて強引に効力を掻き消そうと発動させる。いや、手順だけ聞けば簡単そうに思えるが、こんな芸当を現実にはどういう風に行えば可能になるんだ? いつ行われるか分からないものに合わせてピンポイントに発動を合わせなければ『魔力枯渇』を引き起こすだろうが……。そもそも『魔力』の一部だけをその場所に存在させておく事だけでもどれだけ難解な『魔』の概念が用いられていやがる。前にエイジの奴にも同じ事を思ったが、この野郎もソフィとは違うベクトルで規格外の化け物だ。フルーフやミラに似た不気味さをこの人間からも感じやがるぜ……)
シギンはヌーからの視線を感じながらもあえて、そちらには意識を割かずにソフィの言葉に首を縦に振った。
「ソフィ殿たちの世界の『理』がどのようなものであるかは分からぬが、どうやら私の先祖が生み出した『理』は他の世界にも十分通じるようだな」
「先祖……?」
「神斗が使った『透過』にしても、その大元となる『魔』の基本術式は『卜部官兵衛』と名乗っていた私の先祖が編み出した『理』で間違いない。私自身も似た系統の『理』を独自に編み出したが、この『時間術』に傾倒しすぎている神斗の『透過』は、私ではなく、先祖の『理』からアイデアを得ている筈だ」
「なるほど……。どうやらこの世界には『理』がないと聞いていたが故に、こちらの世界の方が『魔法』に関しての技法は進んでいると見ていたが、独自性を省みればこちらの世界の『魔』の『理』も非常に侮れぬ程に優れていたというわけか」
ソフィは改めて『ノックス』の世界にある『理』に感心してみせるのだった。
「まぁ、神斗の奴がここまで『魔』の才があるとまでは見抜けなかったが。如何に『理』を理解していようとも現代で、私と煌阿以外にこの世界でこの領域にまで『魔』の概念理解度を示す者は居ないだろうからな」
その言葉にゲンロクとエイジが僅かに眉を寄せたが、口にしたのがシギンである以上は間違っていないだろうとばかりに少しだけ悔しそうな表情を浮かべるのだった。
「クックック、なるほど。どの分野においても研鑽は必要だが、闇雲に学んでいるだけでは到達出来ないという点においては同じだというわけだな」
「!」
今度はそのソフィの言葉にヌーが異常な程に関心を見せるのだった。
そのヌーの表情の変わりようを彼の前に立っているソフィは直接見る事は出来ていなかったが、自分の発言によって何かを感じ取って欲しいと考えたソフィであった。
「さて、それでは話を戻すがソフィ殿?」
「うむ。この身体に『魔力』を通じて上手く魂を残しておった以上、我の『魔法』で蘇らせる事は可能だろう。それではこの場で『救済』を行うとしようか」
ソフィはそう告げると、手に『魔力』を込め始めるのだった。
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