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1930.新たな山の管理者

 無言でソフィと王琳が視線を交わし始めたが、互いに戦闘を望んでいるという事は当人たちだけではなく、この場に居る者達にも伝わるのであった。


 やがて王琳はソフィから視線を切ると、再び部屋の中を見渡し始めながら口を開いた。


「さて、今回お前達を召集した事の内容は大方話し終えた。先程話をした通り、当面の間は人里へ近づくことを禁じる。その旨しっかりと同胞共に伝えておく事だ」


 その理由はもう言わなくていいだろうとばかりに王琳は、部屋に居る者達に鋭い眼光を向けるのだった。


 妖魔達はもう諦めた様子であり、誰も王琳に言葉を発する事はなかった。


 それを見た王琳は満足そうに軽く頷いた後、目を細めながら再びその口を開くのだった。


「よし、それでは次の話に入るが――」


「「!」」


 そう口火を切った王琳に、まだあるのかとばかりに部屋に居る妖魔達は、辟易(へきえき)するような表情を浮かべ始めるのだった。


「お前らも知っての通りここに居るソフィの手によって、この山の中腹までの管理を任されていた『帝楽智』殿を含めた『天狗族』は居なくなり、中腹付近の縄張りの境目も曖昧なものになっている状況だ。流石に山全域の管理を一から俺が決め直してやるのも面倒だ。そこで山の中腹までの管理を行う種族の選別を()()()()()()()()()()と考えている」


 その王琳の言葉にこの部屋に居る妖魔達は、それぞれ異なる表情を浮かべ始めるのだった。


 こういった山の役職を妖魔神から任される事は、本来であれば誉れだと考えるものであったが、今回は妖魔神であった『神斗』達ではなく、先程のような一方的に話を決めてしまうような『王琳』だからという事が、諸手を上げて喜べない要因だろう。


 しかしそれでも中には三目妖族や三大妖魔達のように、種族の地位を上げられる好機だと考えて、純粋に喜んでいる種族の長たちも居るようであった。


 こうして純粋に喜んでいる者と、新たに王琳の下で管理を行う事に懸念を覚える者がいる中で、更に違う考えを抱く種族の長たちも居た。


 その者達はかつての『三大妖魔』や、三目妖族程までには生きてはいないが、それなりにこの山での古参の妖魔達であり、彼らはこの場で新たに王琳によって山の管理を任される種族が決められてしまう事で、今後の自分達の種族の立ち位置が非常に難しくなる事に懸念を覚えるのであった。


 すでに三大妖魔であった天狗族が居なくなり、鬼人族も妖魔神の『悟獄丸(ごごくまる)』を失い、次いで長となった『殿鬼(でんき)』やその娘の『紅羽(くれは)』も姿を消してしまっていて、現在の長となっている『玉稿』などは飾りの長に過ぎぬ為にすでに脅威とは言えなくなっている。


 そして残されていた三大妖魔の妖狐族の長が、今後の妖魔神の代わりとなる以上は、確かに何も問題なく思えるが、実際にはすでに表舞台からは去っている三目妖族を含めた横の繋がりがある種族達の存在が非常に厄介だと彼らは考えているのであった。


 間違いなく王琳はこの山で最強の存在であり、眷属を含めて種族の数も申し分ない。確かに表向きは妖狐族の王琳に従ってさえいれば問題はないだろう。


 しかしそれでも新たな種族が山の管理を任される事となった時、その種族と三目妖族の意見が食い違うような事態が起こった時が、非常に面倒な事になると考えているのである。


 立場上は三目妖族も王琳に従わざるを得ない為、新たな中腹の管理を行う種族に黙って従うだろうが、十戒や三目妖族の立場を省みずに行動に移す事で恨みを買えば、三目妖族の息のかかった連中に何をされるか分からない。


 彼らはこれ以上この山で中途半端に他者を従わせる事の出来る地位が作られる事で、新たな火種が生まれる事を恐れており、どうやらこの山での古参の種族であればある程に、三目妖族というかつての三大妖魔に次ぐ種族に対して忖度の念を抱いているようであった。

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