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1923.避けては通れない問題

煌阿(こうあ)神斗(こうと)殿の身体を奪った事、そして悟獄丸殿の件の事も伝え終えた。しかしもう一つ大事な事をこの場に集ってもらったお前達に伝えておく」


 これまでの話を聞いて色々と疲れてしまい、もう勘弁してくれとばかりに辟易とした表情を浮かべ始めた妖魔達だったが、この上にまだ何かあるのかと更にうんざりとする。


「色々と考えたが、この山を束ねる指導者が居ない状況がこの先長く続くというのは考えものだろう? そこで次の妖魔神となる者が出て来るまでの間、この俺が山の管理を行ってみようと思うが、それについて異論のある者は居るか?」


 座椅子に胡坐(あぐら)をかきながらそう話す王琳に対して、妖魔山の現在の中心となるような種族の者達は、一様に押し黙ってしまうのだった。


 確かに驚くべき内容ではあるのだが、すでに『神斗』と『悟獄丸』、それに三大妖魔筆頭にして中腹までの管理を任されていた『天狗族』の存在もなくなり、後釜を任せられる者は、妖魔神と互角に渡り合う事が可能であり、この山で一番の強さを持つ『王琳』以外に居ないだろうという事はこの場に居る者達も理解していた為、先程までに告げられた言葉に比べれば、彼らも驚きは少なかったようである。


「異論はないか? 悟獄丸殿を殺った俺が気に入らないと思うのであれば、この場ではっきりと告げてもらって構わないぞ?」


「「……」」


 この場に王琳が現れる前とは異なる重苦しい空気が続いていたが、ここにきてその空気が最高潮に達するのだった。


(こいつは間違いなく()()()()()()()だな。もちろんそれに見合った強さを持ち合わせちゃいるし、その強さがあるからこそのあの自信なんだろうが、余裕の在り方が何というか……、()()()()()()()()()。タイプは違うがソフィとよく似てやがるぜ……)


 大魔王ヌーはこの空気を生み出した王琳の存在感に、支配者としての器というものをヒシヒシと実感し始めるのだった。


 しかしここでもまた三目妖族の『十戒(じっかい)』が、押し黙った者達に代わって口を開くのだった。


「確かに山の秩序や安寧を守る為には、誰もが認める指導者の存在が不可欠です。しかし貴方がその座に就く前に尋ねておきたい事があるのですが……」


「十戒殿、そのように畏まらなくとも聞きたい事があるなら自由に聞いてもらって結構だぞ? 会合を開いた主催者という立場ではあるが、俺はまだ十戒殿やこの中央堂の間に居る連中と同じ立場に居るつもりだからな」


 そんな言葉を王琳はこの場で口にしたが、その言葉通りに堂々と意見を言えるわけがないと、この場に居る妖魔達は誰もがそう考えるのだった。


 そして発言を許可された十戒でさえ、脂汗を額に浮かべながら恐る恐るといった様相で王琳に向けて口を開いた。


「こ、これから質問することは、ワシの一存というわけではなく、この山に生きる者達の多くの者が気になっている事ですが……!」


 そう前置きを行って本当に聞きたい事をこの場で口にしようとする十戒に、王琳は視線をしっかりと合わせて耳を傾ける。


「こ、この場に人間達を当たり前のように置いておられますが、王琳殿はこの山の指導者となった暁には、いったい人間共とどういう関係を結ぼうと考えておられるのか? どうも先程から王琳殿の様子を見ていると、そこの黒羽や人間共と親しそうにする姿が見受けられる。分かっているとは思いますが、この山には数多くの種族の妖魔達が、妖魔召士なる人間共に連れ去られて『式』とやらにされて好き勝手に扱われておる。話題に挙がった鵺ではないが、それこそ呪い殺してやりたいと思う程に恨みを抱いているものも多いのが現状だ。そ、その辺の事を王琳殿は、い、一体どう考えておられるか!?」


 その十戒の言葉には非常に強い思いが込められており、死んでも聞いておかねばならぬという覚悟さえ、王琳にも感じ取れる程であった。


 そしてこの場に居る十戒以外の妖魔達もまた、先程までの怯えが嘘のようにしっかりと王琳に視線を向け始めていく。


 この問題は確かに三目妖族の十戒だけではなく、山に生きる『式』にされた種族の同胞達には、避けては通れないモノで間違いないようであった。


 ……

 ……

 ……

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