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1920.妖狐族の長の到着

 あれだけ大勢居た鵺達が一瞬の内に首を落とされて絶命し、懸念を抱いていた『呪い(まじな)』をあっさりと無効化してみせた主に、()()()も人型に戻った後に苦笑いを浮かべるのだった。


 呆然とこの状況を眺めていた妖狐達も一斉に我に返ったかと思えば、その場で妖狐の長である王琳に跪くのだった。


 そして『神斗』の亡骸を大事そうに抱えながら、肆聖が同胞達の前を通って王琳の元へ辿り着くと、それを見た耶王美は、肆聖があの場に居た理由をようやく理解するのだった。


「耶王美、ソフィはもう中に居るか?」


「は、はい! ご命令通りにソフィ殿達を『結界』の内側へと案内致しました。鵺達の接近に気づいた為、後の事は出迎えた参姜に任せましたが、今頃は中央堂の間に居る筈です」


「そうか、ご苦労だったな。ここに襲撃にきた鵺共はどうやら煌阿とは無関係のようだ。お前もこのまま俺と共に中へ来い。詳しい話はそこで話す」


「はっ!」


 そう言って王琳が大木から『結界』を介して中へと入っていくと、耶王美は今も跪いたままの同胞達の方へ視線を向けた。


「よく来てくれたな。私はお前達を誇りに思うぞ」


 耶王美がそう告げると、同胞の妖狐達は皆一様に目を潤ませて頷くのだった。


「悪いが倒れている連中の処理はお前達に任せるぞ」


「「はっ!!」」


 この場に集った山に生息する全ての妖狐達は、一斉に八尾である耶王美の言葉に返事を行い、再び恭しく頭を下げるのだった。


 ……

 ……

 ……


 耶王美が『()()()()()』と口にしていたソフィ達の居る場所では、先程までの重苦しい空気とは、また少し異なった空気が流れていた。


 そんな空気が流れ始めた原因は、当然の事ながら『結界』の外側で王琳が鵺達に対して行った出来事が原因であり、主にこの場でそんな空気を出していたのは、妖魔山の中でも十戒といった古参の妖魔達であった。


 もちろんソフィ達を睨んでいた妖魔神側と言える種族であった妖魔達も、王琳という妖狐が決して逆らってはいけない妖魔なのだという事は存じてはいたが、三目妖族の十戒や、そんな十戒に次ぐ程の古参の種族達は、見て分かる程にどんよりとした表情を一様に浮かべている。


 外に襲撃に訪れていた『鵺』達と、同世代と呼べる程の山では比較的若い部類に入る年代の者達は、転生を繰り返して山に君臨し続けている大妖狐『王琳』の本当の恐ろしさを理解出来ていない。


 王琳がその気であれば、今頃は神斗や悟獄丸と並ぶ『妖魔神』としてこの山に君臨していてもおかしくはなかったのである。


 つまり今回の王琳による召集は、妖魔山に居るいち種族の召集ではなく、山の支配者からの召集と呼んでも差し支えないものであり、それをよく分かっていない若い者達は、先程の鵺族の全滅と、自分達の知る古参の妖魔達の焦燥する表情と空気感でようやく王琳という妖狐族の長が、如何に危険な存在なのかを理解した様子であった。


 先程ソフィを睨んでいた種族の妖魔も、この場で騒いではいけないのだとようやく空気を読めたようで、今は大人しくしているのであった。


 そしてそんな中央堂の間に、遂に件の妖狐が姿を見せるのだった。


 …………


 肆聖によって開け放たれた襖の向こう側、この場に姿を見せた大妖狐に、重苦しかった空気が更にもう一段階押し上げられたように感じられる。


 当然ながらそれは三目妖族の十戒や、それに次ぐ古参の種族の長達が齎した空気のせいであった。


 王琳はそんな怯えた様子の十戒達を無視して、ちらりとソフィの姿を一瞥すると満足そうに口角を上げた。


 そしてその後は集まった者達の前を堂々と歩いていき、この部屋の中央奥に用意されている自分の場所へと向かうのであった。


 その場所の隣に立っている七耶咫は、この部屋に王琳が現れてからはずっと頭を下げており、他の妖狐達も七耶咫と同様に頭を下げ続けていた。


 妖狐達にとっては王琳は種族の王であり、逆らう事は許されない神なのだ。


 用意されている場所まで辿り着いた王琳は、腰を下ろす前に傍に立つ七耶咫の肩を叩いた。


「よくこの場を持たせてくれたな。大儀であった」


「ははっ!」


 七耶咫の返事を聞いた王琳がその場に腰を下ろすと、ようやくそこで七耶咫は顔を上げる。


 同時にこの部屋に居る全ての妖狐も七耶咫に倣うように顔を上げたのだった。

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