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1919.大妖狐、王琳の一撃

 耶王美(やおうび)の金色に輝くオーラは一層その輝きを増していく。確かにこの場で一番『戦力値』を有しているのは、間違いなく彼女で相違ないだろう。


 しかしこの場に現れた鵺達の数が自分の想定以上だったことに加えて、同胞達の数も相応に大きくなってしまっている事に耶王美は懸念を覚えてしまっていた。


 だからこそ、普段の千里眼と見紛う程の先を見渡す瞳も曇り始めており、この場での戦局のみに絞った制圧力を展開しようとしてしまうのだった。


 そんな耶王美は、この場に居る鵺の中で誰が一番力を有している者かを見極めようと視線を周囲へと這わせ始める。


(当然ながらここに居る鵺達は煌阿に匹敵する者はおろか、本鵺の斗慧すら届いていないようね。どうやら本当に予定されていた襲撃を愚直に行ったといったところかしら……)


 この場の鵺達を一通り見渡した後、耶王美は静かに溜息を吐いた。


 圧倒的なリーダー格と呼べる強さを持った鵺が居なかった事は本来は喜ばしい事だが、今回のような場面では困ってしまうのだった。


 何故ならその場に居る種族の代表を真っ先に殺る事で、これだけの数が居る鵺達の気概を削ぐという重要な役割を担えなくなるからというのが理由であった。


(せめて相手がまだ『天狗族』であったのならば、注視する『呪い(まじな)』を絞れただろうが、相手が『鵺』というところが非常に厄介だ)


 これだけの数の鵺達が相手となれば、誰を狙ったところで仲間に向けられる『呪い』の犠牲を止められないだろう。


 せめてこの場に自分と同じ主の側近の『七耶咫』が居ればと考えてしまった耶王美は、自分が如何に弱気になっているかを自覚して舌打ちをするのだった。


(この襲撃を指示したのが『斗慧(とえ)』なのか『真鵺(しんぬえ)』なのかは分からないけれど、会合が行われるこのタイミングを狙ったのは間違いなくその両者ではないでしょうね。この中に指示を出した者が潜んでいるのか、はたまた元々の命令通りに動いているだけなのかは分からないけれど、厄介な事には変わりはないわ……!)


 思考がどんどんと進んでいく耶王美だが、その間にも鵺達は次々と『オーラ』を纏い始めていき、もういつ襲い掛かられてもおかしくない程までに『魔力』の高まりも其処彼処(そこかしこ)から感じられてくるのだった。


(こうなったら仕方ない……! せめてこの私が先陣をきっ――……!?)


「――え?」


 イチかバチか先手を取ろうとばかりに、四肢に力を入れ始めた耶王美だったが、飛び掛かる瞬間に思わず心の声が口から漏れ出てしまう程の驚きの出来事が起きるのだった。


 何と、耶王美が狙いを定めていた鵺の首が唐突に落ちたのだった。


 そしてその直後、耶王美の信頼する主の声が唐突に森に響いた。


「――お前達は一体、誰の眷属に戦意や殺意を向けているつもりだ?」


 そして次の瞬間――。


 耶王美が認識出来ない領域の速度で声の主は動き始めた。


 妖狐本来の姿をしている耶王美より一際大きな妖狐が、一瞬の内に鵺達の包囲網を抜けたかと思えば、そのまま耶王美の目の前に現れた後に人型に戻り始めた。


 呆けた目でそんな主を見上げた耶王美だが、その直後に背後にあれだけ居た鵺達の首が一斉に切断されたかと思えば、ばたばたと倒れていくのだった。


 そしてそんな主に声を掛けようと、耶王美が口を開きかけた瞬間――。


 絶命を果たして倒れ伏した『鵺』達から紫色の煙が噴出し始めた。そしてそのまま一斉に鵺達の亡骸からその煙が王琳の元に一直線に向かってくるのだった。


「お、王琳様――!」


 ――『透過』、魔力干渉領域。


 王琳は鵺達から背を向けたまま、右手を横凪ぎに振り切った。


 すると王琳に迫って来ていた鵺達の『魔』の概念技法である『呪い』が即座に消失するのだった。


「不敬な。一体誰に向けて放っているつもりだ」


 静かに振り返った後、鵺達を一瞥しながらそう告げる王琳であった。

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