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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1935/2217

1918.想定外の出来事に悩む七耶咫

 そして耶王美が妖狐本来の姿のまま、オーラを纏い始める。それを戦闘態勢に入ったのだと判断した、同胞達と敵である鵺達もまた戦う準備を始めるのだった。


 ……

 ……

 ……


「この『魔力』は八尾の耶王美殿か……?」


十戒(じっかい)殿、どうやらこの場に現れていない鵺達も居るようだ」


 結界の内側の屋敷の中、ソフィ達も居る会合の場で妖魔達が口々に騒ぎ始めていく。


 この結界にも内、外とある程度の意識阻害系統のある効力が施されてはいたが、シギンや煌阿程の練度の結界ではなかった為に、それなりに『魔力』を感知出来る程の『魔』の概念理解度を持つ者達であれば、直ぐに感知が行えた様子である。


 当然、ソフィやエヴィ達も十戒達と同様に『耶王美』の魔力に気づけていた。


「耶王美……!」


 ソフィの隣で耶王美の魔力を感じ取ったエヴィは、血相を変えながら大事な者の名を呼ぶと、隣に居たソフィが七耶咫の方に視線を送る。


 そのソフィの視線に気づいた七耶咫(なやた)は、改めて部屋の中を見渡した後、入り口の扉の前に待機していた『五立楡(ごりゆ)』と『六阿狐(むあこ)』に視線を送る。


 そしてそのまま『五立楡』と『六阿狐』が直ぐに部屋の外に出ていくのだった。


 それを確認した七耶咫はようやくその口を会合の場に居る者達に向けて開くのだった。


「少々予定にない出来事が生じた為、現在我々妖狐が確認を行っております。新たな報告が届き次第、直ぐにお伝え致しますので、今しばらくこの場でお待ち願います」


 本来であればこの場では自分ではなく、耶王美が進行を務めている筈であり、彼女達の長である『王琳』がすでに姿を見せている筈であった。


 しかし実際にはまだ主の姿はなく、ソフィ達にここまで案内を行った耶王美は『結界』の外へと出て行ってしまった挙句にこの『魔力』の高まりである。


 色々と想定外の事が起こってしまい、内心では少しだけ焦っている七耶咫ではあったが、自分が王琳や耶王美の名代を務めているのだという覚悟で何とか表面上は冷静さを保っていた。


(十戒殿の言う通り、耶王美様の元に現れているのは、本来はここに集う筈であった『鵺』達のようだ。まさか耶王美様はその事にいち早く気づいて警備の為に外へ向かわれていたという事だろうか? し、しかしそれであれば一言くらいは有った筈。つまり耶王美様も確信がない状況だったという事だろう。今からでも屋敷に居る妖狐達を耶王美様の元へ向かわせるか? し、しかし、それをしてしまえば今度は会合の場で何かが生じた際に抑えきれなくなるか。ソフィ殿たちに三目妖族の十戒殿、更にはあのシゲンという侮れぬ妖魔退魔師に、これまた厄介な妖魔召士達も居る。下手に中の数を減らすわけにもいかない。こ、困った事になった……!)


 これがまだ七耶咫の実力でどうにか出来る程度の妖魔達の会合であれば、もう少し冷静に場を回せるだろうという自信があったが、流石に煌阿を相手に信じられない出来事を起こしたソフィ達や、自分より長く生きる三目妖族の十戒達、そして人間達も一筋縄でいかない者達が集っている為、下手に自分勝手に命令を出すわけにもいかず、七耶咫は精神的に疲弊しながら何とか主が早く戻って来る事を願い、必死に場を取り繕うのであった。


 ……

 ……

 ……


 会合の場で七耶咫が困った様子を見せていた頃、結界の外の森では『妖狐族』と『鵺族』の間に一触即発の空気が流れていた。


 数の上では妖狐の方が多く、耶王美を取り囲むように現れていた鵺の更に、その周囲を妖狐が取り囲む構図となっている。


 しかし鵺族は『呪い(まじな)』という特異性を用いる種族であり、この場に多く集まっている鵺のその一体に至るまでが『魔』の概念の理解度が高い。


 妖狐も鬼人族や狼族といった物理に長けた種族と比べれば、当然に『魔』の概念に理解度がある方ではあるが、それでも『鵺族』や『天狗族』には及ばない。


 その『天狗族』達も戦闘面で相手を動けなくしたりと、戦闘を有利に持っていく面を持ってはいるが、この『鵺族』はそんな『天狗族』と比べても更に性質が悪い。


 何故なら『呪詛』を主要に用いる天狗族達とは違い、彼ら『鵺』の『呪い』は死んで尚、その効力が消える事なく相手に向けて襲い掛かるからである。


 つまりこの場に居る一体一体の鵺達は、その身を失おうとも『呪い』だけは現世に留まり続けて、殺した相手を恨み、強い怨念となって『怨恨(えんこん)』と呼べる『呪い』が対象に襲い掛かる。


 この鵺達の用いる死後の『呪い』にも種類は数多くあり、そしてそのどれもが自身の『死』の後に相手にかける『呪い』である為に、非常に強力で『耐魔力』に乏しい種族は、即座に命を刈り取られてしまう程である。


 たとえ少なからず『耐魔力』があったとしても、四肢から徐々に腐っていき、やがては『呪い』が内臓へと向かって『浸蝕道』を引き起こしながらいずれは腐り落として命を奪ったりと、色々な方法で『呪殺』を施してくる。


 このように『鵺族』という種族を敵に回せば非常に厄介である為、三大妖魔を始めとした山に生きる古参の妖魔達も『鵺』と本気で争う事は避けて通ってきた程である。


 つまり単純な話だが、鵺と戦うのであれば、その鵺の『呪い』に耐え得る程の『耐魔力』が必要不可欠なのである。


 しかしその単純明快な解答に反して、それを実際に行う事は非常に難しい。


 何故なら、最初に述べた通りに、鵺族達が『魔』の概念理解度が非常に高い為だからである。


『本鵺』や『真鵺』といった『魔』の概念理解度でこの妖魔山の最高位を誇る『鵺』はすでに居なくなってはいるが、それでもこの場に現れた、残された鵺族の者達も対立するように集まっている妖狐達の大半の『耐魔力』を上回る程の『魔力』を有している。


 もちろん八尾にして王琳の側近を務める『耶王美』程の『耐魔力』があれば、数体程の鵺の『呪い(まじな)』にも耐えられるだろうが、この場に集まっている鵺達は『王琳』を殺す為に、死に物狂いで襲い掛かってくる程の覚悟で集まってきている。


 そんな鵺達全員が相手となれば、この場に生じる妖狐の被害はそれなりに大きいものになってしまうだろう。


 耶王美は自分の咆哮で集めてしまった同胞達に申し訳なく思い、何とかして被害を最小限に抑えようと焦りを生じさせていくのだった。

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