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1917.妖狐族と鵺族

 妖魔山の『禁止区域』にある森の中、その数多く並んでいる木々の一本から『結界』を介して外に出て来る者が居た。


 ――それは王琳を主に持つ妖狐の耶王美(やおうび)であった。


 彼女は王琳の言いつけ通りにこの場所までソフィ達を案内し終えた後、気になる事があった為に単身でこうして再び森の中へと戻ってきたのだった。


 ここへ来る頃はまだ夕日が出ていたが、こうして彼女が再び外に出て来る時にはもう日が落ちて、森の中は暗くなり始めていた。


「やっぱり『魔』の概念で作られた『空間』内というのは慣れないものね。煌阿殿の『結界』の中に居た時も違和感が有り有りだったけど、今回もまた時間の流れに違和感が残っているもの」


 迎えてくれた参姜達に屋敷の案内を任せた後、一人森の中へ出てきた耶王美はそう独り言ちるのだった。


(それにしても……。やはり王琳様は居なかったわね。あの結界内で古参の妖魔達を集めて話をするつもりなのは間違いないのでしょうけど、他にも色々と考えてらっしゃるようね。あの洞穴付近に居た肆聖も王琳様の命令で張っていたみたいだわ。どうやら人間に乗り移っていた鵺の監視を命じられていたようね。私以外にもそんな命令をされていたという事は、本格的に『鵺』が行動を起こすのかもしれないわ)


 耶王美は『青』を纏い始めると、ゆっくりとその場から森の中を見渡し始める。


 どうやら彼女はその千里眼と呼べる眼を使って『鵺』達の動向や、集合場所に居なかった主の姿に肆聖の居場所を探り始めるつもりのようだった。


 しかし探り始めたばかりではあったが、彼女は直ぐに主の王琳の姿や、肆聖の居場所を探るのを断念してしまうのだった。


 ――ここに向かって凄い数の『鵺族』達が、勢いよく近づいてきているのを察知した為である。


「中に鵺達の姿がなかったから、流石におかしいと思っていたけど……。どうやら最初からここを狙う腹積もりのようだったみたいね」


 妖狐族の長である『王琳』の強制召集は、妖魔神達でさえ無視は許されない。


 王琳の召集を無視するとしたら、この山に於ける立ち位置を明確に示したという事に他ならず、その意味とは『妖狐族』を完全に敵に回すという意味となる。


「ふふ、やってくれるわね。私達妖狐を……、王琳様を敵に回す事が如何に馬鹿げた事かを今いちど教えてあげましょうか」


 そう言って耶王美は妖狐本来の姿に戻ると、森の中にある一本の大きな木の前で遠吠えを始めるのだった。


 その耶王美の遠吠えは、鵺の反乱に対して自身の並々ならぬ思いを声に込めて放たれたものであり、別にそれ以外に意味などを持たせたわけではなかった。


 しかしその耶王美の遠吠えにこの森に生息する妖狐達は直ぐに反応して、一斉にこの場に集い始めていく。


 気が付けば『結界』の張ってある一本の大きな木の前には、一帯を埋め尽くす程の妖狐達が勢揃いするのであった。


 ――耶王美は『()()』の妖狐である。


 九尾の王琳に次ぐ妖狐族の実力者にして、この妖魔山の最古の妖狐の一体でもある。


 この山に生きる妖狐達は、普段は決して行わない耶王美の遠吠えの意味を『ここに直ぐに来い』という意味なのだと捉えたようであった。


 そして大勢の妖狐達が姿を見せたその時を同じくして、会合に召集をかけた妖狐の王琳の命を狙っていた『鵺』達も一斉にこの場に姿を見せ始めるのだった。


 こちらも妖魔山に生息するほとんど全ての『鵺族』が集まっており、妖魔山の『妖狐族』と『鵺族』が対立する形の如く、この『結界』の張ってある一本の大きな木の前で相まみえる事となるのであった。


(まぁ、何が起きているかを同胞達に知らせるという意味でも、決して集まってもらったのは間違いではないわ。王琳様に後で何て言われるかは分からないけど……)


 当初、耶王美は自分だけでこの目の前に集った鵺達を相手どるつもりであったのだが、意図せずに自分を鼓舞する為に上げた遠吠えで、王琳の指示に従っている七耶咫達や屋敷の警備にあたっている同胞達を除いた全ての妖狐を集めてしまい、少しだけ想定外だったというような表情をこの場で浮かべたのだった。

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