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1903.魂を司る、死神貴族のテア

「だ、大丈夫ですか! エイジ殿!!」


 傍で白目を剥いて倒れている『エダ』と同様に、謎の精神体に憑依されかけていたエイジもまた地面に倒されていたが、そのエイジを下手に動かす事は出来ないと判断して、必死に声を掛けながら安否を確認するミスズであった。 


 しかしミスズの声に反応はなく、エイジはそのまま目を瞑ったままであった。


「エイジ殿!!」


「ひっ、ひっひっひっ……! 無駄だ、無駄だ! そいつはもう助からん。何の抵抗もせずに、俺に一度身体を乗っ取られたんだ。そいつもそこに転がっている人間と同様にもう身体に魂は残ってはいまい……。そいつはお前を守ろうとして代わりに死んだんだよ、馬鹿が!」


 力の魔神によって『結界』に閉じ込められている精神体は、ミスズのエイジに呼び掛ける声を聞いて、ざまぁみろとばかりにそう告げるのだった。


『魔』の概念技法を用いられて強引に身体を乗っ取られた者は、同様の『魔』の概念による対策や抵抗をしなければ、この謎の精神体の言葉にしたように、一つの身体に魂を二つ共有が出来ずに失われてしまうのである(※過去のシスの身体にエルシスという二つ目の魂が宿った時は、そのエルシスがシスの身体を慮り、自らを表に出さぬようにと、魂そのものを自ら深い深い闇の中に自ら封じた事で、何とかある一定の期間は共存が出来ていたが、今回のように強引にエイジの身体を奪おうとした精神体は、エイジの魂などどうでもいいとばかりに強引な手法を用いた為、その被害を受けたエイジの魂は、シスの時と同様には保つ事は出来なかった)。


 精神体の声も姿も見る事の出来ないミスズは、今も目を覚まさないエイジに向けて声を掛け続けていた。


 そしてそれを見ながら、満足そうに笑う精神体であった。


 精神体の声を聴く事の出来た『魔力』あるゲンロク達が、結界の内側に幽閉されている精神体を睨みつけていたが、そこに大魔王ヌーがゆっくりと精神体に近づいていく。


 そして魔神の『結界』の前に辿り着くと同時、大魔王ヌーが口角を上げた。


「馬鹿はてめぇだ、クソ野郎! ()()()()()()()()()!」


「――」(分かった、()()()()()()()()()()?)


 ヌーの言葉にこれまで無言で事の成り行きを見守っていたテアは、何もない空間から死神の鎌を取り出すと、その鎌に黒いオーラを纏わせ始めた。


 そのままテアがひゅっと鎌を一振りすると同時、何と何もなかった空間に突然青白い火の玉が出現するのだった。


「――」(()()()()?)


「ククッ……! ああ。テアよ、その馬鹿に現実を見せてやれや!」


「――」(あいよ)


 ――次の瞬間、自分の身代わりとなって、目を覚まさなくなってしまったエイジのその目が、唐突にパチリと目を開くのだった。


「「!?」」


 その場に居た大半の者達が、唐突に目覚めたエイジを前に驚愕して目を見開く。 


「なっ……!?」


「ひゃっはっはっは! ざまぁねぇのは、てめぇだったなぁ!」


 現在は煙状となっている精神体の為、実際にはどんな表情を浮かべているかは分からなかったが、その精神体の驚愕の声を聴いて、満足そうにヌーは高笑いを始めるのだった。


 何の抵抗も出来ずに一度は妖魔の精神体に身体を乗っ取られて、魂が消失した筈の人間が目を覚ました為、その精神体は信じられないとばかりにエイジとヌーを見るのだった。


「残念だったなぁ、こいつは魂を司る『()()』なんだよ。コイツが居る前では、てめぇ如きが魂をどうにかしようとしても無駄なんだよ!」


 今度はヌーが精神体に対して勝ち誇った表情を浮かべて、テアの頭に手を置いて優しく撫で始めるのだった。


「――」(()()()()()じゃなくて『()()()()』な? ヌー? そこ、()()()()()()だからな?)


 テアはヌーに頭を撫でられるのは嫌がらず、されるがままとはなっているが、そっと口では訂正をするのだった)


「――」(流石は私のテアね! 貴方がそこの人間の身体を乗っ取った時、目聡く魂を逃さぬように空間に留めるところを見ていたけど、咄嗟に出来ることではないわ! やっぱり、貴方は『()()()()』程度の器で収まらないわっ! 『()()()』になるべきよ!)


 流石は魂を司る『死神』だと、咄嗟に行ったテアの行動に自分の事のように喜ぶ『力の魔神』であった。


 まだよく分かっていない様子のミスズではあったが、自分の身代わりになってエイジが死ぬところだったのだという事だけは理解している彼女は、無事に目を覚ましてくれた恩人を強く胸に抱いて、胸の内に居るエイジにしか聞こえない程の小さな声で『良かった』と言葉を漏らすのだった。


「さて、それでは詳しく事情を聞かせてもらおうか……?」


 大事な仲間であるエイジを亡き者にされかけた事で、恐ろしい形相を浮かべている大魔王ソフィに睨みつけられて、この場からもうどう足掻いても逃れる事が出来ないと理解している『妖魔』は悔しそうに表情を歪めたのであった。

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