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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1919/2216

1902.大魔王ソフィからは逃れられない

「ヒノエ、スオウ! 今すぐにそいつから離れろ!」


 洞穴中にエダの笑い声が響き渡った瞬間、唐突にシゲンはヒノエ達に向けて注意喚起を促す声を上げるのだった。


 その声にヒノエとスオウは相手を取り押さえているという、絶好の好機をあっさり捨てたかと思えば、その場から一瞬で離れ始める。


 次の瞬間、笑っていたエダの身体から何か煙のようなものが出てきたかと思えば、そのままふわふわと揺蕩うように移動を行い、ゆっくりと近くに居たミスズの方へと近づいて行く。


 しかしミスズはその精神体となった妖魔の存在に気づかず、笑い声が止んで白目を剥いたまま倒れている『エダ』の方をまだ見続けていた。


 そしてそれはミスズだけではなく、ヒノエやスオウにキョウカ、他にもウガマ達と共に居るイダラマの護衛の退魔士達も気づいていない様子であった。


 どうやら『最上位』と呼べる妖魔召士程の『魔力値』が高い者でなければ存在そのものを認識出来ない様子であり、このままではミスズはこの『エダ』の身体から抜け出てきたモノに身体を乗っ取られてしまう事だろう。


「ミスズ殿!」


「っ、エイジ殿!?」


 倒れているエダを見ていたミスズは、突然自分に向かって突進してくるエイジに気付いて驚きの声を上げる。


 そしてその精神体となったモノがミスズの身体に狙いを定めて憑依しようと勢いを増した瞬間、何と鮮やかな『青』を纏ったエイジがミスズの元へ駆け寄っていったかと思えば、思いきりミスズの身体を突き飛ばしてその精神体からの乗っ取りを防いで見せるのだった。


 しかし今度はミスズの代わりに、エイジの『青』のオーラに煙化された精神体が重なり合うと、次の瞬間にはそのままエイジの『魔力』の一部へと交ざり合った後に、その精神体はエダからエイジの体内へと侵入を果たしてしまうのだった。


「エイジ!」


「どきやがれっ!」


 そのエイジの身体へと侵入する様子を視界に捉える事の出来たゲンロクがエイジに向けて叫ぶと同時、すでに『三色併用』を纏って戦闘態勢を保っていた大魔王ヌーが、エイジに向けて『魔力』を放った。


 ――『透過』、魔力干渉。


 憑依しようとする存在をエイジの身体から強引に引き離そうと、直接エイジの『魔力』から侵入を果たそうとした精神体の『魔力』そのものに干渉する『透過』を大魔王ヌーは放つのだった。


 ――『祓、穢れヲ宿す罪に報エ』。


「っ……、んだと!?」


 しかし、大魔王ヌーの『透過』の『魔』の概念に対して、煌阿が使っていた『真鵺』が編み出した『魔』の概念による技法によって、見事に相殺を果たされてしまうのだった。


 これには流石のヌーも誤算であったらしく、自身の最大魔力値の状態から放った『透過』を簡単に打ち消された事で驚きの声を上げた。


 このままでは『煌阿』に『神斗』の身体を奪われた時と同様に、エイジの身体も奪われてしまうだろうと思われたその時だった――。


「我の仲間に対する勝手は許さぬ――」


 ――『透過』、魔力干渉。


「!?」


 蟀谷に青筋を浮かべた大魔王ソフィがエイジの背後に立ったかと思えば、何と先程のヌーとは比べ物にならない程の膨大な『魔力』を用いられた『透過』が発動されるのだった。


 ――『祓、穢れヲ宿す罪に報エ』。


 しかし、再び『鵺』の技法による打ち消しの『魔』の概念によって、この洞穴に新たな『魔力』が満ち始める。


「あまり、我を舐めるなよ?」


 キィイインという甲高い音が周囲に響き渡ったかと思うと、大魔王ソフィの目が金色に光り輝いていく。


 ――魔瞳、『金色の目(ゴールド・アイ)』。


 何と精神体の存在が放った『魔力』により作られた『スタックポイント』が、大魔王ソフィの魔瞳の発動と同時にこの場から完全に消失していった。


 ――『透過』、魔力干渉。


 そのまま連続して放たれた大魔王ソフィの『透過』によって、今度は確実にエイジに乗り移ったその存在の『魔力』に干渉を果たして見せると、無理やりにエイジの身体から引き剥がされた精神体が再び煙状になって出て来るのだった。


「――バ、馬鹿ナ……!?」


 流石にその精神体も大魔王ソフィの馬鹿げた『魔力』と『魔』の概念技法は予想外だったのか、強引に奪った身体から放り出されたことで驚愕の声を上げるのだった。


 そんな精神体に対して大魔王ソフィが恐ろしい形相を浮かべたかと思うと、右腕をその存在に翳し始めた。


「チッ、――……!」


 精神体はこのままでは危険だと判断したのか、先程のフワフワとした動きではなく、恐ろしい速度で洞穴の入り口へと向かって逃げようとする。


 ――我から逃れられると思うなよ?


 大魔王ソフィがそう呟くと同時、洞穴の出口へと猛スピードで移動を行っていた生身のない精神体の状態である筈のソレは、再び大魔王ソフィの眼前へと戻されてしまうのであった。


「!?」


 それは大魔王領域に居る者達が好んで使う『逆転移』ではあったが、本来このように精神体となっている状態の存在に対しては有効ではない筈であり、現にソフィの行っている所業を目の当たりにした大魔王ヌーは、先程のソフィが『透過』を使った時以上に驚愕の表情に染まっていた。


 精神体であったソレもまた、再びソフィから何とかして離れようと移動を繰り返すが、その度にソフィの『逆転移』によって元の場所へと戻されてしまう。


「このまま消滅させてしまってもよいが、色々とお主からは聞かねばならぬな……。魔神よ、頼む」


「――」(ええ、任せて頂戴)


 ソフィが動くまでは全く我関(われかん)せずといった様子で『結界』の方を向いていた力の魔神だったが、そのソフィが精神体に対して『透過』を使い始めた辺りから『結界』を忘れたかのように、ソフィの方に視線を向けていた魔神は、そのソフィからの命令に即座にこの場に留める『結界』を展開して封じ込めて見せるのだった。


「こ、コの俺ニ、そんな『結界』ナド……ッ!?」


 再び精神体が『魔力』を用いて、強引に『力の魔神』の結界を解除しようとしたが、その瞬間に『金色』の目をしたソフィに『()()』を展開されてしまい、精神体は『魔力』の使用を禁じられたかの如く、元の状態へと巻き直されてしまうのだった。


 ――大魔王ソフィの『特異』は、対象となる存在に対しての『魔力』の使用を封じる事に特化しており、相手が『魔』の概念技法を用いようと『魔力』を展開した瞬間に、その『魔力』の使用の最初の状態に強引に戻されてしまう為、大魔王ソフィの前では『魔力』を使っての『魔』の技法の発動が出来なくなる。


 大魔王ソフィの『特異』を破る為には、この大魔王ソフィの『魔力値』を上回る程の膨大な魔力値と、大魔王ソフィの『特異』を上回る程の『魔』の概念技法が同時に必要となるのだが、残念ながらこの謎の精神体には、それらを上回る手立てが存在していないようであった。


 色々と逃れようと企てていた謎の精神体だが、それらの策の全てをたった一体の大魔王によって打ち砕かれてしまい、そのまま『力の魔神』の『結界』によって、精神体の状態のままで逃れられない『空間』に固定させられてしまうのだった。


 ――それは、奇しくも同じ洞穴の奥で封じられている『シギン』と全く同じ状況となるのであった。

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