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1899.灯りの神聖魔法

 ソフィ達は耶王美(やおうび)の案内でシギンが『結界』に囚われているという洞穴の中に辿り着いた。


 外からこの洞穴の中を覗き込んだ時は、それなりに中の様子を探れそうなくらいには明るく見えたが、当然進んでいけばその明かりも失われてしまい、とてもではないが普通の人間達の目では、手元を照らす蝋燭などがなければ、暗くて全く中が分からなくなってしまう程であった。


 魔族達であるソフィやヌーにエヴィは、何とか今の状態でも薄らぼんやりと道が見えてはいるが、後続達の大半は手探りの状態で全く見えてはいないだろう。


「何が潜んでいるか分からぬ状態で『魔法』を使うのは考えものではあるが、このままではどちらにせよ危険な事には変わりがない。少しこの場を照らそうと思うが、構わぬだろうか?」


 先頭に立って進んでいたソフィが立ち止まり、振り返りながらそう提案するのだった。


「いったい何をするつもりなんだ? まさかとは思うが、この洞穴ごと吹っ飛ばそうとかいうわけじゃないよな……?」


「馬鹿かお前は? ソフィも言っていた事だが、何が潜んでいるか分からねぇ場所で何も分からずに『極大魔法』や『殲滅魔法』なんざ使えるわけがねぇだろうが。その『魔法』を利用されて跳ね返されでもしたら面白くもねぇ事になるだろうが。それくらいの事も想像出来ねぇでよく組織の頭なんざやってやがったな? お粗末すぎんだろ」


「て、てめぇ……! んな事は言われなくても分かってんだよ! こんな場所だからと思って、ちょっとした冗句のつもりで言っただけだ! 何でお前はいちいち俺を目の敵にするんだよ!?」


「ああ? てめぇが先に洞穴の前でいちゃもんつけてきやがったからだろうが」


 そう言って再びヌーとイツキが言い争いを始めたのだが、ここに居る者達は確かにこの二人のやり取りのおかげで少しだけではあるが、緊張感がほぐれるのであった。


「ソフィ殿、確かにこのままでは足元もおぼつかぬ。何か照らす手立てがあるのならば是非頼みたい」


 再びヌー達の言い争いに待ったをかけるように、ゲンロクがそう口を開くのだった。


「うむ、分かった。少しの間は目が眩むだろうから、使用後の僅かな時間だけは目を閉じておいてくれ」


 ソフィの言葉に暗くてほとんど見えないが、多くの者達が同意するように首を縦に振った様子であった。


 ――神聖魔法、『消える事のない灯り(エテル・リヒターン)』。


 ソフィが放ったその魔法の効力により、強烈な程の閃光が洞窟内を駆け巡っていき、ほんの数秒で外に居るのと変わらない明るさになった。


「うぉっ!?」


「ちっ……! おい、てめぇ! 『消える事のない灯り(エテル・リヒターン)』を使うなら先にそう言いやがれや!」


 ソフィの忠告を無視したヌーとイツキが、ずっと言い争いを続けていたが、その魔法の光を直接目に浴びてしまい、イツキとヌーは同時に手で目を押さえて苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべるのだった。


「クックック、だから先に言ったであろうが。我の話を無視して口喧嘩をしておるからそうなるのだ。これに懲りたのならば、少しは足並みを揃えるがよいぞ?」


 ヌーはもう視力が回復してきている様子で片目を開け始めたが、まだイツキは目がチカチカしているようで、もうヌーとの口喧嘩をしている余裕もないらしく、嘆くような声を上げ続けていた。


 そんな様子のイツキ達を見てソフィがそう告げると、ヒノエやスオウ達も可笑しかったようで、ふふっと小さく声を出して笑みを零している様子だった。


「おい、ソフィ……!」


「クックック、どうやらようやく視力が回復してきたようだな?」


「その話はもういい、それより後ろを振り返ってみろ」


「む……?」


 何やら明らかにこれまでと声色が変わったヌーの言葉に、ソフィも浮かべていた笑みを戻して言われた通りに振り返ってみると、そこには視界には映ってはいないのだが、明らかに何かが居るという認識がようやくソフィにも出来た様子であった。


「何かいやがるな……! おい、テア!」


「――」(わ、いきなり何するんだよ!)


 大魔王ヌーはそう口にすると同時、自身の周囲に『三色併用』のオーラを纏わせながら『テア』の手を掴んで自分の胸の内に入れ始めるのだった。


「成程な……! どうやら俺の今の状態の『魔力値』でようやく感知が出来るってわけか……。それも認識阻害の札があると理解している状態でやっと意識が持てるって事かよ」


 テアは唐突にヌーに引っ張られた事で文句を口にしていたが、そんな言葉を無視したヌーは、自身の目に映った『結界』と『シギン』の姿に、ここまで力を示してようやく感知が出来るのかと、不満を露わにしたような表情を浮かべるのであった。

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