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1898.大魔王エヴィの大事な存在

「私が最後にシギンと呼ばれていた人間を見た場所はここだ」


 妖魔山の禁止区域にある森の中、辿り着いた洞穴の前で耶王美(やおうび)がそう告げた。


「まさか、ここまでとはな……!」


 耶王美の視線を追って洞穴の中に『魔力感知』を行ったヌーだが、これだけ至近距離であっても全く中に居るというシギンという人間の『魔力』を感じられない事に、驚愕の声を上げるのだった。


 現在ヌーとソフィが双方ともに『三色併用』を纏って『魔力感知』を試みたが、全くこの洞穴内部に張られている『結界』を打ち破れずに存在を認識が出来なかった。


 煌阿と戦っていた時に比べれば、微々たる『魔力値』に過ぎない今のソフィの状態ではあるが、それでも『三色併用』を纏った今の状態は、十分に『魔神級』には達している。


 この規模の『結界』を『時間術』を用いて、数百年と長きに渡り展開されていたのであれば、これまでこの山に調査を行いに来た人間達が、長きに渡って『結界』に囚われていた煌阿の存在に気付かなかったのも無理はないといえるだろう。


「おい、てめぇは遠くからこの場所にシギンって奴が居る事に気づいていたようだが、てめぇは今のこの状況でも中にいやがる野郎を感知出来やがるのか?」


 大魔王ヌーは耶王美に向けて抱いた疑問を投げかけるのだった。


「いや、この『結界』が張られてからは外からは全く中の様子が分からなくなったよ。あくまでこの『結界』が張られる前までの情報しか私も持っていない。だが、煌阿殿がここから出てきたところは見たが、最後までシギンという人間は出てこなかった。まだここに閉じ込められている筈だ」


「なるほどな……。まぁ、それじゃ入るとするか? もう中に居るって分かってんだから、認識を阻害されようがこっちは全く困らねぇわけだしな」


「ああ、それじゃ私はここで待っているから、後は自由にしてくれ」


 耶王美はもう案内係は終えたとばかりに、洞穴の外で待つ事にしたようである。


「それじゃソフィ様達が用事を済ませるまで僕もここで待つよ。どうせ君の主の元へソフィ様を連れて行かないといけないんだろう? 一緒に喋って暇を潰していようよ」


「ソフィ殿の傍に居なくていいのか? ようやく会えたというのに……」


「大丈夫。これからはずっとソフィ様と一緒だからね。だけど君は違う。せっかくこうして僕達は出会えたんだ。別れる事が分かっている以上は、僕は君と少しでも長く一緒にいたいんだ。駄目かな?」


「エヴィ……! いや、何も駄目じゃない。分かった、共にここで待っていよう」


「うん!」


 同類である耶王美から同意を得られた事が相当に嬉しかったようで、大魔王エヴィは満面の笑みを浮かべながら耶王美の手を握るのだった。


 …………


「おい、エヴィの野郎はマジでどうしちまったんだ? あんな()()()()の姿を俺は『アレルバレル』でも一度も見た事がねぇよ……」 


「クックック……! どうやらあやつもこの世界で大事な者を見つけたという事なのだろう。よいではないか、少しの間だけになってしまうが、ここは二人にしておいてやろう」


 ソフィはそう言って自分に視線を向けていたエヴィに軽く手を振ってやると、彼は気持ちを汲んでくれた主の様子に嬉しそうに笑って頭を下げるのだった。


 …………


「あの者が何か罠を仕掛けておるかもしれぬから、ここは我が先頭に立とう。ヌーやゲンロク殿達も『魔』での警戒を怠らぬように頼むぞ」


「ああ。まぁ、てめぇが気付けねぇ事を俺らが気付けるとは思えねぇがな」


「てめぇが気付けなくても他の者が気付ける可能性はあるがな」


「あ? ここまで黙ってやがったクソ雑魚がここにきていきなり存在感出してくるんじゃねぇよ。誰もてめぇなんざ頭数に入れちゃいねぇよ」


「何だとてめぇ! てめぇだってコイツに比べたら俺らと大差ねぇだろうが」


「あぁ、てめぇは本当にうるせぇな。そもそも比較の対象がおかしいだろうが。ソフィと比べられたらこの場に居る奴らは誰も大差ねぇよ、馬鹿が……」


「そ、それではワシとエイジが殿を受け持とう。後方は任せてくれ、ソフィ殿!」


 いきなり突っかかってきたイツキをヌーが面倒そうにいなしていると、慌ててゲンロクが話を戻すのだった。


「う、うむ。それでは行くとしようか」


 ゲンロクのおかげでスムーズに話を戻せたソフィがそう告げると、そのまま先頭に立ったソフィが洞穴の中へと入っていき、この場に居る者達は少しばかり緊張した面持ちでソフィの後に続くのであった。

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