1890.超越者としての力を行使する大魔王ソフィ
※修正を行いました。
大魔王ソフィは目の前の煌阿に、自分の大事な配下である『九大魔王』の『エヴィ』の身体を乗っ取られかけた事で激しく激昂し、有無を言わさずに現在の力の開放を果たしているままで、彼自身が使用する『魔法』の中で最大殲滅力を誇る『終焉』を放って見せた。
今の大魔王ソフィの『終焉』は、この妖魔山全域に向けて放った天狗族を消滅させた時の『終焉』よりも遥かに威力が高まっている。
同じ『三色併用』のオーラに形態変化に魔王形態ではあるが、そのソフィの強さの源の基本値となる『魔力』が桁違いに膨れ上がっているからである。
天魔である『帝楽智』や司令官であった『華親』、そして天狗の幹部達である『天従十二将』達を纏めて相手にしていた時でさえ、今の八割の力を開放しているソフィの半分に満たぬ程の力だった。
――つまり、今煌阿に放った『終焉』の魔法は、これまでのソフィが放ってきたモノで一番の効力を持つモノで間違いがない。
かつて大賢者ミラは、大魔王ソフィという化け物がその気になって『終焉』を放てば、星に生きる全生命体を死に至らしめると口にしていた。
今回ソフィが放ったものが歴史上で一番の強力な『終焉』である以上、あくまでミラのそれは推測に過ぎないものではあったが、それでも推測したのは『大賢者』を冠するミラなのである。
世界を牛耳ろうと暗躍する大組織の頂点に立つ程の器を持っていた大賢者が、間違いないのだと公言した以上は、発言に相当の自信を持っていた筈である。
そしてあくまで今回の『終焉』は十割ではなく、八割ではある。
しかし那由多を超える命のストックを持っていた大賢者ミラを相手に、僅か数秒で消滅させた時の大魔王ソフィの放つ『終焉』よりも、今回の煌阿に対して放った『終焉』の方が間違いなく桁違いに威力は上がっているのだ。
――その絶大なる力は推して然り。
先天性にして天からの贈り物と呼ばれる『金色の体現者』にして、鵺の一族の中でも特に選ばれた強さを持っていた煌阿は、その鵺の『呪い』を十全に扱い、更に『特異』でこれまで得てきた『魔』の概念と『魔』の技法をこの瞬間に身を守るために必死に行使をし続けた。
――『祓、穢れヲ宿す罪に報エ』。
――『透過』、時空干渉領域。
すでに大魔王ソフィの放った『終焉』は、世界に干渉する『時魔法』の領域に達している為、この必死に煌阿が放った『透過』でソフィの魔力に干渉するモノではなく、時空干渉を選んだのは正しかった。
大魔王ソフィの『終焉』は、正しく世界に干渉する『時魔法』に分類されてもおかしくないものとなっているからである。
そして『魔』の概念に於ける、絶大な魔法対策呪法と呼べる程の真鵺の『呪い』を同時に行使した事で、ソフィの『終焉』の魔法に対して、こちらも正しく干渉が行われた筈であった。
最強の妖魔召士であったシギンの『魔』の技法や、大魔王エヴィの『呪法』でさえ、確実に効力に制限を持たせて打ち消す事に成功したその大呪法が『透過』と共に煌阿から展開されたのである――。
いくら大魔王ソフィの『魔力』が膨大で目を背けたくなるモノであっても、その魔法を生み出した『理』に対して干渉を行う煌阿の『呪法』で、大魔王ソフィの『終焉』の反映が伴われる効力そのものが打ち消される筈であった。
だが、それでも大魔王ソフィは不可能を可能に変える超越者である。
――世界の特異点にして、奇跡と呼ばれる位置に存在し続けている生物なのである。
煌阿の生存しようと本能で放ったそれらの『魔』の概念は、残念ながら大魔王ソフィの『終焉』に更なる進化を遂げさせてしまう結果を生み出してしまうだけだった。
「――」(そ、ソフィ……!? あ、貴方、それは、ま、まさか……!?)
未だに大気圏近くの上空から、この世界全てを守るために『固有結界』を展開していた力の魔神は、今ソフィが放った『終焉』に、魔神としての力を感じて即座に反応をして見せるのだった。
――そう。
それこそは、かつて大賢者ミラが自らの『特異』を使い『魔神』の力を利用した挙句に、大魔王フルーフに羅列を読み解かせて『新魔法』として開発された『時魔法無効化』の効力が伴う結果を生み出した。
ソフィは最初から『終焉』を進化させる手立てがあったわけでもなく、また大賢者ミラや大魔王フルーフの新魔法から何らかの手掛かりを得たわけでもない。
これまで使い馴染んできた自身の最大殲滅魔法に対して、煌阿という相手が対策を講じてきた事によって、あくまで経験則を伴った大魔王ソフィの閃きに近い感覚で『終焉』の進化と呼べる技法を生み出す事に成功したのである。
つまりこの『終焉』という魔法が行き着いた事象の終着点とは、どういったモノなのか――。
それはこの『終焉』という最大殲滅魔法に対して、あらゆる世界に存在する、直接世界に干渉する『時魔法』と呼ばれる打ち消しの効力がある反魔法や、軽減や干渉を目的とした『魔』の概念、この鵺が使った『呪法』に『結界』、その他一切の効力を全てを無効化するという結果が付随されたのである。
この超越者である大魔王『ソフィ』により、この瞬間に誕生したばかりの『時魔法無効化』が付随された『終焉』によって、煌阿の『呪い』と『時空干渉』領域の『透過』は、その二つ纏めて同時に無効化されてしまい、元々の大魔王ソフィの最大殲滅魔法である『終焉』だけが正しく齎されて履行された。
全ての防衛手段を奪われてしまい、世界に対して干渉する『時魔法』の全てを無効化された煌阿は、大事な配下の身体を奪おうとされた事で激昂しているソフィによって、魂そのものを世界から消滅させられた。
続いて大魔王ソフィは手を緩めることなく、大空に向けて千を越えるスタックポイントを展開し、今の煌阿に放ったモノと同規模の『終焉』を放てるだけの『魔力』をその全てのスタックポイントに準備する。
これは万が一、ソフィすら与り知らない『魔』の概念を用いた煌阿が、何らかの手立てを使って現世に再び戻って来る事及び、他者の身体を利用して再生、蘇生、転生が行われる可能性を考慮した措置である。
今の大魔王ソフィは本来の力の八割程までを開放していることで、この『ノックス』の世界の全ての場所に生きる生命体の『魔力』を『時魔法』のような『力』とは無関係の外界へと切り離すような『結界』に守られた場所を除き、正しく理解が出来る状態にある。
つまり今大魔王ソフィが感知している全生命体の持つ『魔力』に対して、何か違うモノが交った瞬間に感知が行えるという事と同義である。
それは煌阿がその存在に寄生、及び転生した場合、即座にスタックポイントに展開した『終焉』を放つ事が可能な『魔力』によって、全世界の何処で転生されても、その瞬間に消滅させる事が可能になったという事である。
更に大賢者ミラが行ってみせたように、転生先が一つではなく、数多の身体をあらゆる場所に少しずつ転生させたとしても、千を越える数のスタックポイントにある『終焉』を放つ事の可能な『魔力』が、一斉に『終焉』の同時展開を行う事で、この『ノックス』の世界に生きる数百、数千、数万、数千万体程度であれば分散して再生されたとしても、一瞬の間にその再生を果たした存在を同時消滅する事が出来る。
最早、この八割の力を開放している大魔王ソフィであれば、魔神が行う執行より早く世界の敵となる存在を消滅させる事が可能といえるだろう。
そして大魔王ソフィの自身が出せるであろうと考える総魔力値の八割程を開放している今であれば、同時にこの規模の『終焉』を一斉展開しようと、全く『魔力枯渇』を引き起こす心配すらない。
天上界に存在する者達から超越者と認定されている、今の状態の大魔王ソフィにとっては、この程度の魔力消費など、心配するに値しない程の微々たるものだからである。
…………
そしてその後、一度目の大魔王ソフィが放った『終焉』から決して短くない時間が流れた。
その間、この場に居た者達は誰一人として喋る事をせずに、戦々恐々と大魔王ソフィに視線を送り続けた。
力の魔神もまた、自身の近くにまで展開されている大魔王ソフィの『魔力』のスタックポイントに意識を向けながらも『固有結界』を維持し続けて、ソフィの納得がいく瞬間を待ち続けた。
最早、この大魔王ソフィのやろうとしている事を妨げようとする者は、この世界の地上には誰一人として存在しない。
今の大魔王ソフィはハッキリといって、天上界に存在する『執行者』達と同じ存在と呼べるだろう。
――否、もはや彼は『執行者』以上の存在と言っても過言ではなかった。
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