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1888.契約の紋章により、大魔王ソフィの力を得た者

「――見事だ」


 大魔王ソフィは静かにそう一言だけ口にする。


 そして先程まで笑みを浮かべていたソフィの表情が消失したかと思えば、瞬く間に静寂が訪れた。


 まるで先程までの爆発が嘘であったかのように、不気味なほどまでに静かな空気が妖魔山を流れていく。


 しかしこのソフィに視線を向けた者達は、誰も何も言葉を発せられなくなり、そして誰もがその視線を逸らす事が出来なかった。


 それは真に恐ろしいモノを見た時に生じる、まさに『竦み』のようなものが全身を駆け巡っている最中であった。


 ――大魔王ソフィの『()』の()()()()()


 最早、先程ソフィが数多の『絶殲(アナイ・アレイト)』を放って見せた時とは、また更に比較にもならない『力』が、この場を支配していく。


 大魔王ヌーは逸らす事の出来ない視線の代わりに額から脂汗を流し始めて、テアは口をあんぐりと開けたまま固まり、シゲンは目を丸くさせながら呆然と見上げて、王琳は嬉しそうに顔を歪める。


 先程までミスズ達に対して勝ち誇った表情を浮かべていた煌阿でさえ、空の上から無表情で見下ろす大魔王ソフィの姿を見て、恐ろしさからガチガチと歯を鳴らし始めるのだった。


(も、もうこいつらの事はどうでもいい! こ、この場から早く離れなければ手遅れになってしまう!!)


 ――魔神域『時』魔法……。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」


 ――次の瞬間、詠唱を開始しようとしていた煌阿の胴体から唐突に首がぼとりと落ちた。


 ゴロゴロと転がっていく煌阿の首は、何が起きたか分からないといった表情のまま、必死に視線だけを這わせ続けていた。


 そして首だけとなった煌阿の視線が、とある大魔王の姿を視界に捉えた瞬間に意識が遮断されるのだった。


「「!?」」


 先程まで大魔王ソフィから目を離せずにいた者達は、この場に訪れた新たな衝撃にまたもや言葉を失う。


 力の魔神の展開する『固有結界』を外側から無理やりにぶち破り、そのまま強引に押し入ってきたその『存在』は、煌阿が乗っ取った神斗の首をぐちゃぐちゃになるまで踏み潰すと、そのまま空の上に居るソフィの姿を見て涙を流し始めるのだった。


 ……

 ……

 ……


「ん? 我はいったい……?」


 煌阿の『呪い(まじな)』によって幻覚に囚われていたソフィは、煌阿の首が潰された瞬間に、唐突に意識を戻されるのだった。


「ああ、ソフィ様……!」


 まるで神に祈りを捧げるかの如く、エヴィは空高くに居るソフィに向けて手を組んで祈り始める。


 意識を取り戻したソフィだが、まだ『力』を開放している状態にある為、この場に居る多くの者達はまだ自由に動く事が出来ぬまま、呆然とソフィとエヴィに視線を送っている状態にあった。


 そしてそんな風に、誰もが行動を起こせぬ最中をこれ幸いとばかりに動く者が居た。


 ――それは神斗の首を潰された瞬間に、直ぐに身体を放棄して精神体となった『煌阿』であった。


 彼は目を瞑り祈りを捧げて無防備といえる状態となったエヴィに、影を縫うかの如くにこっそりと移動を開始すると、背後から一気にエヴィに向けて襲い掛かった。


 神斗の身体を乗っ取った時のように、精神体となった煌阿は『魔力』で出来た膜のようなモノを自分に薄く張り付けながら、エヴィの身体に密着すると、その口から体内へと入り込もうとする。


「危ない、エヴィ!!」


 煌阿の異変をいち早く感じ取った耶王美は、エヴィに何とか危険を知らせようとして、その場に居る全員が振り返る程の大声で彼の名を呼ぶのだった――。


「!?」


 そしてエヴィが目を開いて背後を振り返り、耶王美の声に反応しようと口を開いた瞬間、これ幸いとばかりに煌阿は、精神体のまま『魔力』で作られた膜で自らを覆い、ずぞぞぞと異質な音を響かせながらエヴィの身体を這って移動していき、そのまま勢いよく口からエヴィの体内へと入り込んでいってしまうのだった。

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― 新着の感想 ―
これってどうなるんだろ? エヴィってかなり特殊な呪いの持ち主だけど、流石に乗っ取られる事はないと思うんだが。 しかも今って8割まで開放したソフィの加護発動状態なわけだし。 何より八大魔王としてのプライ…
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