1878.大魔王ソフィの潜在する力の開放
「ああ……。魔神よ、何と素晴らしい強さなのだ」
「――」(調子に乗るなよ、下界の存在風情が。こんなモノはまだまだ序の口に過ぎぬ。その程度の力量で私を相手にした事を後悔させてくれるっ!)
幻覚に囚われているソフィは、その幻覚の中の『力の魔神』と会話を交わす事で更に高揚感を増していくのだった。
「いくぞ――……!」
大魔王ソフィはこれまでより開放したその力を以て、思いきり『力の魔神』に向けて振り切った。
……
……
……
「いくぞ――……!」
幻覚に囚われているソフィが、これまで以上に開放した『力』を行使して振り切った瞬間、現実の世界の『次元の狭間』内では、まず彼を取り囲む『赤い真四角』の『結界』があっさりと砕け散った。
そしてそのままの勢いを持ったまま、次元の狭間に亀裂だけではなく、完全に外側の空間に穴を開けてしまうのだった。
ソフィ自身が考えていた自分の潜在する『力』の半分程、五割の開放を終えた後に放った、その『魔』の技法を何も使っていない拳だけで、妖魔神の悟獄丸の力を完全に上回ってしまった。
そしてこの瞬間に、煌阿の『隔絶空地入法』の『封印』の効力もソフィによって掻き消されてしまう。
だが、ソフィは別に『魔』の技法を用いたわけではない。
大魔王ソフィの本来の潜在する『力』の半分程の開放した今の『魔力』が、煌阿の八割程しかトレース出来なかった卜部官兵衛の『隔絶空地入法』で、抑えて封じられる制限幅を超えてしまったのである。
しかし煌阿にとっての悪夢は、まだまだ続いていく――。
――大魔王ソフィ自身が出せるだろうと考えていた力の六割までが開放されたのである。
ここから遂に制限のなくなった『魔』の概念と『魔』の技法が、無意識にソフィによって纏われていく。
――三色併用によって、これまでの凡そ二十倍の戦力値と魔力値の上昇。
そしてそんなソフィの本能に呼応したかの如く、周囲に『魔力吸収の地』が無意識に展開され始める。
最早、このソフィの『魔力』を上回らなければ、今度は煌阿が『魔』の概念と『魔』の技法の全てを封じられるだろう。
更に『魔』の技法を用いて使った分だけ全て、打ち消された挙句にソフィにその使用された『魔力』が奪われてしまい、ソフィが放つ『魔』の技法の全ての攻撃力が、これまで以上に跳ね上がっていく事だろう。
「クックック! 見事に耐えてみせるがよい。そしてその先、見事に我を超えてみせるのだ……」
ソフィが両手を前に出した後にその手を組み始めると、その瞬間に真っ白い光の束が『次元の狭間』内に次々と出現を始めていく。
それこそは、ソフィが発動出来る攻撃魔法では最高位に位置する『絶殲』であった。
――全てを無に帰す事が可能な『終焉』。
その唯一つを除けば、殺傷能力で大魔王ソフィの放つ事の出来る最大級の『魔法』である。
先程単に拳を振り切っただけで『赤い真四角』の『結界』や、空間そのものをぶち破ってみせたソフィが、そんな拳とは比べ物にならない『魔法』、先程より更に開放された力の上から『三色併用』を用いた『絶殲』を放った時、この空間がどうなるのかは最早自明の理といえるだろう。
……
……
……
「そこの神格持ちの女! 今すぐにそいつを連れて奴が作り出した穴から外へ出ろ!」
「――」(えっ、えっ!? ま、待って、何が何だか……――!)
テアが慌てた様子で何かを口にしているが、神格を持たない妖狐の王琳では『死神』である彼女の言葉が分からない。
「ちっ! 説明している時間はもう、なさそうだな……」
何度かソフィの方を振り返りながらも王琳は、そう口にした後にテアが抱き抱えているヌーごと、開いている穴の方へと思いきり蹴り飛ばすのだった。
「――」(わぁっ――!?)
必死にヌーを抱きしめながらもテアは、空間外へと放り出されるのだった。
……
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……
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